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異世界で子育てはじめます。  作者: 夜涙時雨
34/43

34.ゆづるみたいに… sideルーチェ

間が開いてしまい申し訳ありません…。

前回に引き続きルーチェ視点になります。

きづいたらぼくはばしゃのなかにいた。

ばしゃのなかにはたくさんのひとがいた。みんなおなじようなよごれたふくをきていて、まっくらなめをしてじっとしているみたいだった。

たぶん、どれいだ。

さっきおじさんとおとうさんがそんなことをいっていたきがするから。

ぼくもどれいになるんだ。

かなしいはずなのに、なんでかなみだはもうでなかった。




どれいのなかにはぼくとおなじこどもがひとりいた。くろうさぎのじゅうじんらしい。

うまれたときからずっとここにいるとおしえてくれた。

そして、どれいしょうにんのおじさんにはていこうしないほうがいいこともおしえてくれた。いうことをきかないとなぐられたりけられたりするらしい。

でも、だいじょうぶ。

なんかもうどうでもいいんだ。なにもやるきがでない。なにもしたくないから。

だから、ばしゃにいるときはずっとすみでしずかにしていたし、なにかいわれたときにはていこうせずいわれたとおりにした。

そのおかげか、あまりなぐられたりすることはなかったけど、どれいしょうにんのおじさんのきげんがわるいときはときどきたたかれたりけられたりした。

ぼくがなにもはんのうしないからか、ながくたたいたりけられたりすることはなかった。

ぼくもふしぎといたみはかんじなかったからだいじょうぶだった。

どれいとしてうられてからは、まっくらなまいにちがつづいた。

おなじこどもだから、うさぎのじゅうじんのこといっしょにいることがおおかったけど、とくべつなかよくしていたわけではなかった。ときどきはなすだけ。

なかよくなったところで、すぐしぬかうられるかしていなくなっちゃうだろうから。じぶんからなかよくしようとはおもわなかった。

かわらないまっくらなまいにち。

でも、そのおわりはとつぜんやってきた。

ばしゃにのっているとちゅうで、ぞくにおそわれた。

ぼくはうさぎのじゅうじんのことふたりで、こわくてすみにおいてあったはこのなかにかくれてふるえてた。

きづいたときにはたくさんきこえていたさけびごえはなくなって、こわいくらいしずかになっていた。

はこのそとにでると、ぼくたちのちかくにはたくさんちをながしてたおれてるひとがいた。ぐちゃぐちゃになってるひともいて、すごくいやなにおいがした。

たぶん、しんでいたんだとおもう。

そとはいつのまにかあかるくなっていた。

いきているのはぼくたちふたりだけ。これからどうしたらいいんだろう。

こわいはずなのに、ふるえているのに、なみだはでない。

ただふたりでじっとしていると、とおくからなにかがちかづいてくるおとがきこえてきた。

ぞくがもどってきたのか、まものがきたのかわからないけど、ここにいたらあぶないとおもってふたりでちかくのしげみにかくれた。

おとはだんだんとちかづいて、ぼくたちのそばでとまった。

ちかづいてきたのはぞくでもまものでもなかった。ただこのみちをとおろうとしたひとたちみたいだ。

それでもぼくたちはかくれたままでいた。

そのひとたちはすこしはなしたあと、すぐにどこかへいった。

でも、またべつのひとたちがきた。

さっきのひとたちとはちがって、ぶきをもっていた。

ぶきをもったひとたちのなかのひとりがぼくたちにちかづいてくる。

にげなきゃいけないのにからだはうごかなかった。

からだをつかまれて、ていこうしたけど、きづいたらねむっていた。

めがさめると、みたことのないへやにいた。


ここはどこだろ……。


へやのなかをキョロキョロとみまわしてみるけど、みおぼえのないへやだ。

ぼくたちはベッドのうえにねていたみたいだった。

なんでこんなところにいるのか。そんなことをかんがえてたら、へやのドアがひらいてしらないおとながさんにんはいってきた。

うさぎじゅうじんのことくっついて、はいってきたおとなをにらむ。

おとなはなにをしてくるかわからない。

ぼくたちにちかづいて、てをのばしてきたからぼくたちはへやのなかをにげまわった。

つかまったらきっとひどいことをされるから。

そんなぼくたちをみたおとなは、ぼくたちをむりやりつかまえようとせずにへやをでていった。

それからなんかいかおとなたちがへやにきたけど、ぼくたちはずっとへやのすみにかくれて、こえをかけられてもなにもいわなかった。

ふたりでへやのすみでじっとしていると、また、へやにおとなたちがはいってきた。

おんなのひとがぼくたちのちかくまできて、てをのばしてきたけどそれをつかむことはない。

そのてはぼくたちにとってこわいものでしかなかった。

だから、ぼくたちはにげた。

このへやにひとつしかないドアにむかって、ひっしにはしった。

もうすこしでここからでられる!そうおもったとき、ドン!となにかにぶつかって、うしろにたおれてしまった。

たおれてしまったけど、すぐにおきあがってうさぎじゅうじんのことくっついたままぶつかったなにかからはなれる。

おそるおそるかおをあげてみると、めのまえにいたのはみたことのないかみのながいおとこのひとだった。

おとこのひとはぼくたちをみたあと、ぼくたちにちかづいてきたおんなのひととすこしだけはなして、おんなのひとともうひとりいたべつのおとこのひとはでていった。

かみのながいおとこのひとは、ゆづるっていうなまえみたい。

ゆづるはぼくたちにちかづこうとしてこなくて、すわっていろいろなはなしをしてくれた。それから、どれいのあかしであるくびわをはずしてくれたり、あたまをなでてくれたりしてくれた。

こわかったけど、あたまをなでられたのははじめてで、なんだかすこしむねがぎゅってなった。







「君のお名前はなんていうのかな?」


うさぎじゅうじんにきいたあと、ゆづるはぼくにもそうきいてきた。

だけど、ぼくにはなまえなんてない。いちどもよばれたことがない。

だから、くびをふって「……ない」ってこたえた。


「そっか。パパとママは?」

「⋯⋯きもちわるいってうった」

「⋯パパとママが言ったの?」

「⋯ぅん⋯⋯ぼくのめ、きもちわるい」


ぼくはめがほかのひととちがうから、きもちわるいといわれてきらわれていた。ぼくのめはみぎはきんいろ、ひだりはあおいろをしている。みんなはふたつともおなじいろなのにぼくだけはちがった。

だから、めをかくすためにかみはながくのばしたまま。


「目が気持ち悪いって言われたの?」

「⋯⋯うん」

「怖いかもしれないけど、俺に目を見せてもらえないかな?」


ゆづるにいわれてこわくて、ビクッとからだがふるえた。

でも、ゆづるならだいじょうぶかもしれない。そうおもって、こわかったけど「うん」とうなずいた。

ゆづるは「触るね」といってから、ぼくのかおにてをちかづけてめがみえるくらいにまえがみをうえにあげた。

ゆづるはだまってじっとぼくのめをみつめてた。ずっとみられることがこわくて、とちゅうでめをとじてしまった。

だけど、ゆづるはおこったりしないで、「ありがとう。あまりにも綺麗で、見つめちゃってごめんね」と、ぼくのかおからてをはなした。


「⋯⋯きもちわるくないの?」


おかあさんとおとうさんはぼくのめがきもちわるいといった。だから、ゆづるもそういうんだとおもってた。それなのに、ゆづるはきもちわるいとはいわなかった。


「ん?そうだね。金色の目は暗い夜を明るく照らしてくれる月みたいで、青色の目は皆を元気にしてくれる澄んだ青い空と同じでとても綺麗だよ。気持ち悪いなんて思わないよ」

「⋯⋯⋯ぉに⋯?」

「ん?」

「ほんとうに⋯?うそじゃ、ない?」

「本当に。君達に嘘はつかないよ」


まさか、そんなふうにいってもらえるなんておもってなかった。

どれいとしてうられてからないたことなんてなかったのに、きづいたらめからいっぱいなみだがながれてた。

そんなぼくにつられて、となりにいたうさぎじゅうじんのこもないてた。

ぼくたちがないているのをみて、ゆづるは「辛かったね。怖かったね。⋯もう、大丈夫だよ」といって、やさしくあたまをなでてくれた。

そのてがすごくあったかくて、なみだがとまらなかった。







それから、ゆづるとはなして、さんにんでいっしょにくらすことになった。かぞくになろうっていってくれた。

まだ、めをだれかにみせたり、しらないひととはなすのはこわいけど、ゆづるのちかくにいるとだいじょうぶだとおもうようになった。

ゆづるはきもちわるいっていわないし、てをつないだり、だっこもしてくれる。うまれてからいちどもされたことがなかったからうれしい。

おいしいものもたくさんたべさせてくれる。

こわいことはたくさんあるけど、ゆづるといっしょならだいじょうぶ。

ぼくは、ゆづるがつけてくれたルーチェっていうなまえがすき。よるのそらにかがやくつきやほしみたいにかがやくこになってほしいっていみのなまえ。

いまはまだむずかしいけど、たくさんべんきょうして、ルーチェっていうなまえのとおりに、かがやくこになって、ゆづるみたいにつよくなりたいな。

ルーチェ視点は終了になります。

次はユヅル視点に戻ります。

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