26.違います…。
いつも読んでいただきありがとうございます!
26話でアルファポリスでの更新に追いつきました。
今まで毎日更新していましたが、26話以降は更新が遅くなります。続きができ次第更新していくようになりますので、ご了承ください。
「もう住む家は決まってるの?」
ちょうど相談したいと思っていたことをアルさんの方から聞いてきた。
「まだです。3人で住む家を買いたいなと思っているんですが、何処かいい場所ありませんか?」
「ずっと宿暮らしは大変だもんね。うーん…どこか良いところあるかな……?」
この街の冒険者ギルドのギルド長であるアルさんは顔が広いし、色々な情報を持っている。そのため、俺達が住むのにちょうどいい家を知ってないかと思い、元々アルさんに相談するつもりでいた。
アルさんが「うーん…」と悩んでいる様子でいると、アルさんの斜め後ろに立っていたジェイドさんが口を開いた。
「ルーン通りの所はどうでしょうか?」
「ルーン通り…ですか?」
「はい。確かひと月前辺りに元々住んでいた老夫婦が引っ越して今は空き家になっている家があったはずです」
「ああ、そういえばアイツが言ってたっけ。いつも美味しいお菓子をくれる奥さんがいなくなるって」
「はい。それです。1週間くらいずっとそれでいじけてましたから」
「全く……もういい大人なのにいつまでも子どもの気分でいるんだか…」
アルさんとジェイドさんは呆れたような表情をしている。
アイツって誰だろ?この2人と仲が良くてお菓子好きな人はなんとなく心当たりはあるけど……。
赤髪の人懐っこい笑顔を浮かべたとある人物を思い浮かべる。
そういえば、俺がこの街に帰ってきてから一度も会ってないな。元気にしてるかな?
「ユヅルが戻ってきたことは知らないだろうから、もし知ったらまた面倒なことになりそうだ」
「……そうですね。あの人、ユヅルさんのこと大好きですから」
2人とも疲労を漂わせる雰囲気だ。
なんとなく、2人が話す人物は俺が思い浮かべた人であっている気がする。
「はぁ……と、すまないね。話が脱線してしまった。家についてだけど、ユヅルさえ良ければルーン通りにある家はどうだろう?最近まで人が暮らしていたから状態は良いだろうし、ここからも近いからちょうどいいんじゃないかな」
「そうですね……」
アルさんからの提案に悩んでいるとジェイドさんが「実際に見てからお決めになってはどうでしょう?」と言ってきた。
「良いんですか?」
「はい。ユヅルさんさえ良ければこの後ご案内しますよ」
とてもありがたい提案だ。これから住む家ならば実際に見てから決めたい。
「ノワール、ルーチェこれから家を見に行こうと思うんだけどどうかな?疲れてる?」
俺はこのまま案内して貰っても大丈夫だけど、2人はまだ子どもで慣れない環境で長距離を移動してきたばかりだ。無理をさせる訳にはいかない。
2人はお互いに顔を見合わせたあと俺の方を見上げた。
「ぼくはだいじょーぶだよ」
「ん。ぼくもへいき」
2人の顔色からも疲れてる様子はなかったので、大丈夫だと判断してジェイドさんに家までの案内を頼んだ。
「ジェイドさん、よろしくお願いします」
「おねがしますっ」
「...します」
俺がジェイドさんに頭を下げると2人も俺の真似をしてぺこりとお辞儀をした。そんな姿を微笑ましく思う。
ジェイドさんはひとつ頷くとアルさんの方へ体を向けた。
「では、私達は失礼します。私はユヅルさん達を案内したら戻ってきますが、ギルド長はきちんと仕事しててくださいね」
「僕は一緒じゃだめ?」
「ダメです。ギルド長は仕事をして下さい。机の上に書類がありますよ?」
「ジェイドは厳しいね。今回は諦めるよ。…ユヅルくん、またいつでも遊びに来てね。子どもたちも一緒に、ね」
ニコニコ笑顔を浮かべながら手を振るアルさんに曖昧に頷きながら、ジェイドさんに付いて執務室を後にした。
冒険者ギルドを出て、ルーン通りの方へ向かって歩く。ノワールとルーチェとははぐれないように俺と手を繋いでいる。まだ少し怖がる素振りはあるけれど、誰かに触られたりしなければ街を歩いたりするのは大丈夫そうだ。
ただ、目的地まで歩いている途中、結構な視線を感じていた。多分原因は俺たちではなくジェイドさんだと思う。
エルフというのもあるだろうけど、冒険者ギルドの制服を着ているし、見た目もとても綺麗だ。ジェイドさんが外にいることはなかなか珍しい。そんな理由があって色々な人からの視線を感じる。本人は全然気にしていないみたいだけど。
冒険者ギルドから近いと言われていた通り、目的地にはそんなに歩かずに着いた。大体15分から20分くらいだろうか。
ジェイドさんがここですと示した先にあったのは、二階建ての煉瓦でできた家だった。家の周りは柵で囲まれていて、そこまで大きくはないけれど庭もついていた。
前に住んでいた老夫婦はガーデニングが趣味だったのか庭には花がいくつか咲いていた。
外観から見て、おしゃれで可愛らしい雰囲気の家だ。
ジェイドさんは玄関の鍵を開けて中に入っていったのでそれについて行く。
中は落ち着いた雰囲気で、リビングにはキッチンが併設されていて、一階には部屋が4つ、2階には部屋が3つあった。3人で住むには広すぎるくらいだ。
老夫婦が引っ越してから誰も立ち入ってないからか、少し埃はあるけど掃除すれば問題ないし、本棚やベッド、テーブル等大きい家具類はそのままになっていたが問題なく使えるだろう。これなら掃除すれば今すぐにでも住めそうだ。
「どうでしょうか?ここは治安も良い方ですし、子ども達と過ごすには調度良いのではないでしょうか?」
「そうですね。雰囲気も良いし、住みやすそうです。ぜひここにさせて下さい」
「かしこまりました。いつからお住いになりますか?」
なるべく早くからが良いけど、流石に今日からだと何も準備していないし、酔い潰れた龍の宿にも一度報告がてら顔を出したい。
「明日からでも大丈夫ですか?」
「問題ございませんよ。私の方で話はしておきます。家の鍵は明日取りに来られますか?」
「ありがとうございます。そうですね……支払いとかも明日しようと思うのでその時にお願いします」
「では、そのように伝えておきます」
ジェイドさんとはそんなやりとりをした後、家の前で別れた。ジェイドさんを見送り、俺達は今日泊まる予定でいる酔い潰れた龍の宿に向かった。
宿に着き、ドアを開けて中へと入る。
「いらっしゃいませー………え?」
「あ、レイラさん。こんにちは。今日だけ宿泊したいんですが、部屋空いてますか?」
レイラさんがトレーを片手に近づいてきたので軽く挨拶し、今日1泊したいことを伝えた。いつもなら明るい声ですぐに返答が返ってくるが、レイラさんは笑顔のまま固まっている。
何度か名前を呼ぶが何の返答もない。
どうしたんだ?と思っていると、見かねたアイラさんが近づいてきた。
「ちょっと、レイラ何やってるの。早くユヅルさんを案内しなさいよ」
アイラさんがレイラさんの肩を叩きながらそういうとやっとレイラさんが動いた。レイラさんは首をギギギッと音がなりそうな程ゆっくりと横にいるアイラさんに向けた。
「だ、だって……ゆ、ユヅル…さん、に……か、隠し子…が……」
「はぁ?何言ってるの。そんな訳ないで…しょ……」
アイラさんは眉をひそめながらレイラさんが指した俺の足元に目をやると固まってしまった。少しの沈黙の後、アイラさんが口を開いた。
「えぇ!?ユヅルさん隠し子したの!!?」
「違います…」
またか……。何で会う人は皆俺の隠し子って言うんだ?
アイラさんが結構大きめな声で驚いた声を出したから周りにいた人が何人かこちらに注目してしまっていた。ここに入ってきた時は大丈夫だったのにノワールとルーチェは俺の後ろに隠れてしまった。
「え、違うの…?」
「違いますよ…。逆に何でそう思ったのか聞きたいくらいです」
「あはは…ごめんね。つい……」
レイラさんが苦笑しながら言った。
「でも、その子達はどうしたの?ユヅルさんの子どもじゃないなら誰の子なの?」
アイラさんの問いかけにどう答えるか悩んだ。2人のことは信用してるし、事情を話しても大丈夫そうではあるけど人がたくさんいるここで話すことはできない。それに、ノワールとルーチェが元々は奴隷だったなんて話は、子ども達の為にもあまり広めたくはない。
なので、ノワールとルーチェについては簡潔に伝えた。
「2人は俺の隠し子ではないですが、最近家族になったんです。俺の子どもという言い方は間違いではないので、誰の子どもと言われたら俺の子どもになりますね。今日からこの子達と3人で暮らしていくことになりました」
「そうだったの…。隠し子なんて言ってしまってごめんなさいね。そっか。ユヅルさんの家族なの。……ふふ、賑やかになるわね!」
「はい。それで、この子達が大きくなるまではこの街に腰を据えようと思って家を購入したんです。ただ、引越しは明日なので今日だけ泊めていただいてもいいですか?」
「もちろん。ユヅルさんならいつでも大歓迎よ!ね、レイラ?」
「うん!ずっと居てくれても良いくらい!……それにしてもユヅルさんの子かぁ…獣人なんだね。かわいい!エリンと同じくらいかな?」
レイラさんがノワールとルーチェの目線に合わせるようにしてしゃがみこんだ。
エリンというのはアイラさんの子どもだ。確か今は5歳くらいだったかな?
アイラさんは20歳の時に結婚していて、家庭を持っている。結婚してからは旦那さんと娘と一緒に3人で暮らしている。旦那さんは雑貨屋の店主で、旦那さんの店は手が足りているということで日中はここの宿に手伝いに来ている。その間、娘のエリンちゃんは旦那さんの両親に預かってもらっているみたいだ。
雑貨屋の方には何度か行ったことがあるので、アイラさんの旦那さんとは顔見知りだし、エリンちゃんも何度か宿に遊びに来ることがあったのでその時に会ったことがある。エリンちゃんは可愛らしい女の子だ。
年齢はノワールとルーチェは6歳なので年上ではあるけど、そこまで離れてはいない。1歳差だ。
「2人とも6歳なので近いと思いますよ」
「そっか~。エリンよりも少しお兄ちゃんなんだ!今いないのが残念だね。…そうだ!よかったら2人の名前を教えてくれないかな?」
レイラさんがノワールとルーチェにそう尋ねた。
さっき俺達に注目した視線は今はなく、俺とアイラさんやレイラさんが話していたのを見て大丈夫だと判断したのか、2人はそろっと俺の後ろから少しだけ横に出てきた。
「の、のわーりゅ…」
「……るーちぇ」
2人は名前だけ言うとまた俺の後ろに隠れてしまった。それでも、自分から名前を言えたので最初と比べたら大進歩だ。
2人が自分の名前を自ら言えたことがすごく嬉しい。
ただ、まだ言葉が辿々しい所があるので、俺の方から2人を詳しく紹介する。
「黒髪の子がノワールで、フードを被ってる白髪の子がルーチェで2人とも獣人の男の子です。まだ人が多いところに慣れてないので、今はちょっと隠れてしまいましたが、よろしくお願いします」
「そうなんですね!全然大丈夫ですよ!2人とも可愛らしいですね~。私はレイラって言うの。よろしくね!」
「初々しくて可愛らしいわね。私はレイラのお姉ちゃんでアイラっていうの。私にも君たち位の娘がいるから、よかったら今度会った時にでも一緒に遊んでね」
アイラさんとレイラさんは優しく笑顔を浮かべてノワールとルーチェに挨拶をしてくれた。
ノワールは少し俺の後ろから出てきて2人に「うん!」と言い、ルーチェは後ろに隠れたまま小さく頷いた。
まだ2人は同じ年代の子達と一緒に遊んだりしたことがないから、いつかエリンちゃんのような年齢が近い子と仲良くしてくれたらいいな。
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