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異世界で子育てはじめます。  作者: 夜涙時雨
21/43

21.はじめての買い物

2人に名前を喜んでもらえて安心したところで、そろそろ買い物に出かけなくてはならない。


「ノワール、ルーチェ。これから2人のご飯とか服を買ってこようと思うんだけど、2人も一緒に行く?それともここでお留守番してる?」

「いく!」

「ん、いっしょ」

「わかった。じゃあ、3人で行こうか!」

「うん!」

「ん」


外は人が多いから心配だけど、2人の行きたい気持ちを尊重する。外に出て無理そうならお留守番してて貰うしかないかな⋯。

徐々に慣れていって貰えればいいからね。

異空間からただの布を2枚出して、それぞれ1枚ずつ2人に被せて、布の端と端を結んでマントのようにする。

2人はボロボロの汚れたワンピース1枚しか着ていなかったため、ワンピースが隠れるように今できる応急処置として布をマントのようにした。

何かに使えるかなと思って取っておいてよかった。長さも地面につかない位でちょうどいい。

ただ、服は隠せても足は無理だ。2人とも靴を履いておらず裸足だけど、さすがに子どもが履けるサイズの靴は持っていない。でも、裸足のまま歩かせる訳にはいかない。となると、俺が2人を抱っこして行くしかないか。


「2人ともごめんね。靴は持ってないから靴を買うまでは2人のことを俺が抱っこしていってもいい?」

「だっこ?」


ノワールが首を傾げたので実際にノワールを抱き上げてみせる。


「抱っこっていうのは、こういうことだよ」

「だっこ!」


ルーチェのことも同じように片手で抱き上げた。

抱き上げた瞬間は驚いているようだったけど、俺の首に両腕を回して抱き着く姿勢になったら落ち着いたみたいだ。

ノワールは抱っこが何なのか分かっていないようだったけど、実際に抱き上げると想像していなかったからか、または思ったよりも高かったからか、「わぁ⋯!」と言いながら周りをキョロキョロしている。

2人とも抱っこした反応は違うけど、どっちもかわいらしい反応だ。嫌がる素振りもないし、2人を抱っこすると両腕が塞がってしまうけど手を繋ぐだけと違って人肌をより近くに感じるから安心してくれるだろう。

それに、この位近い位置に2人がいた方が色々と対応しやすい。ドアは魔法を使えば開けれるし、両腕が塞がっていても問題はない。


「それじゃ、外に行こっか」


2人に声をかけて、冒険者ギルドの外へと向かった。



冒険者ギルドの裏口から出て、表通りの方へ出てくる。

2人はギルドから外に出た時は大丈夫だったが、表通りに出たら俺にギュッと抱きついて肩に顔を埋めてしまった。

さすがにギルドの正面入口の方へ来ると人通りが多いから怖くなってしまったのだろう。2人を抱える腕に力を込めて、こまめに2人に声をかけながら早めに買い物を終わらせるため急ぎ足で商店街の方へと向かった。

まだ開いている店が多いが、所々店じまいをしようとしている店もある。それを見て更に歩みを早める。

暫く歩くと服を扱っている店を見つけたので、ドアを開けて中へと入った。


「すみません」


店内で声をかけるとレジ奥の方から女の人が1人出てきた。


「はーい!⋯⋯いらっしゃいませ!本日はどうされましたか?」

「この子達の服を数着と靴やローブがあればそれも欲しいのですがありますか?」

「子ども用の服ですね!当店には靴やローブなどもございますよ。何点かお持ちしますね。具体的にどのようなものが良いか決まっておりますか?」

「2人とも獣人なので獣人用の普段着と寝間着を何着かお願いします。靴は動きやすいもので、ローブは体全体が隠れるくらいのものでフード付きのものを1着ずつお願いしたいです」

「かしこまりました。お2人に合うようなものをお持ちしますので、その間よろしければ店内をご覧になってお待ち下さいませ」


店員さんは一礼した後、レジ裏の方へと行ってしまったので、とりあえず言われた通り店内を見て歩くことにする。

店内にはたくさんの服が置いてあり、数は少ないがリボンやカラフルな紐で作られたアクセサリー等も置いてあった。

外にいた時には俺に抱きついて顔を埋めていた2人だったけど、店に入って店員さんがいなくなると気になるのか顔を上げて店内を珍しそうにキョロキョロ見回している。


「色々な物があるみたいだから、2人とも見てみる?」


2人ともコクンと頷いたので、子ども用の服が置かれている場所に移動する。子ども用の服が置いてある場所に来ると、店内の床はカーペットが敷かれているため大丈夫だろうと思い、2人を床へ下ろした。


「気になるものがあったら自由に見ていいよ。欲しいものがあったら買ってあげるから持っておいで」


2人はじっと俺の顔を見た後、またコクリと頷いてゆっくりと服の前に移動した。

子ども用の服は子ども達が見やすいように低めの位置に置かれている。吊るされているものもあれば、棚に畳んで置いてあるものもある。

2人は初めて来たから、色々なところに目移りしてるみたいだ。

まあ、初めてだし、こんなにいっぱいあったら何にするか迷うよね。日本にいた時はスーパーのお菓子コーナーで欲しいのにお母さんに買って貰えなくて泣いてる子とか見かけてたな~。お菓子コーナーには玩具も置いてあったりしたから買って貰いたくて必死に親に「これすごいんだよ!」って説明してた子とかもいたな。

そんなことを思い出しながら2人の様子を後ろで見守る。

すると、ルーチェがある場所で足を止めて、じっと何かを見つめている。

ん?何か気になるものがあったのかな?

ルーチェは頭を少し上に上げたままじっと目の前にある物を見つめている。前髪で隠れているため目は見えないが、何となく子どもが何かを見つけた時のあのキラキラとした表情に近い気がする。

まだ出会ってそんなに経っていないけれど、ルーチェは感情がすぐ顔に出るノワールと違って口数が少なく、表情もあまり大きく変化することがない。元々の性格もあるんだろうけど、だからこそ、あんな表情をしているのは珍しい。

ノワールの方はまだキョロキョロと色んな所を見ているようだったのでルーチェの方へ近づいてみる。

ルーチェは俺が近づいたのも分からないくらいに見ているものに集中しているみたいだ。

ルーチェの視線を辿ってみると、そこにあったのは服を着た子どものマネキンだった。マネキンは白いシャツに黒いハーフパンツを履いており、白いシャツは首元や袖口にフリルレース、後ろの腰あたりには大きめなリボンが1つ付いていて、可愛らしい服になっていた。

ルーチェはそのマネキンから視線を外さない。

この服が気に入ったのかな?


「ルーチェ?これがいいの?」


俺が声をかけたことでようやく俺がそばにいたことに気づいたのか、一瞬ビクッと跳ねた後こっちを見た。


「あ……ううん、なんでもない」


ルーチェはそれだけ言うと別の服が飾ってある所へと行ってしまった。

マネキンを見てたあの表情を見る限りなんでもないことはないと思うんだけどなぁ…。でも、声をかけた後は何か怯えたようにも見えた。

ルーチェが何に怯えたか分からず、無理に問い質すこともできないので、とりあえずその場ではルーチェに何かを言うことはしなかった。

それから暫くして、さっきの店員さんがたくさんの服を両手に持ってきた。レジ近くのテーブルにそれらを置いてくれたので、どんな物かを一通り手にとって見てみる。

生地は悪くなさそうだし、動きやすそうだ。

良さようだと思ったものをノワールとルーチェに聞きながら一通り選び、ローブは黒と白とベージュっぽいものの3種類あったが2人ともベージュっぽいやつが良いと言うのでベージュカラーのローブを2つ、それと靴を1人2足ずつ購入した。

そして、2人がローブを選んでいる間に、こっそり店員さんに耳打ちしてある物も一緒に購入させてもらった。

買ったものは異空間に収納したため、たくさん買って手が塞がるということはない。

2人はまだ靴を履いていなかったので、買ったばかりの靴を履いて貰って、今度は抱っこじゃなく手を繋いで店を出た。

服を買ったら次は食べ物だ。今日の夕食と明日の朝の分を買わないといけない。2人にはいっぱい食べて欲しいがまずは消化にいいものから食べてもらわないと…。今までまともに食べられていなかった分、いきなりお肉や油っこいものとかを食べさせてしまえばきっとお腹に負担がかかってしまう。だから、スープ等のお腹に負担が軽いものから食べるようにしないと。

俺は料理も一通りできるので、食材だけ買って冒険者ギルドのキッチンを借りて料理を作ろうと思う。

あまり歩くと2人の体にも負担になるので、近くの店で必要な食材を買ったらそのまま冒険者ギルドへと戻った。

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