20.名前
今回は少し短めになっています。
ローズさんに部屋まで案内してもらい、俺達は冒険者ギルドの3階にある一部屋を借りることになった。ローズさんは案内した後に「何かあったら声をかけてちょうだいね」とだけ言って、下へと戻っていった。部屋には俺と子ども達の3人だけ。
さて、どうしようか。色々とやらなければならないことがある。
ローズさんに聞いたらギルド内にはお風呂もキッチンも完備されているらしく、使いたい時は自由に使ってもらって構わないと言われた。外出する時も表から出たら目立つだろうから特別に職員が利用する裏口から出入りしても良いと言ってもらった。
だから、まずはこの子達を綺麗にしてあげたい。でも、残念ながら自分用のはあるけど子ども用の服は持っていない。魔法で綺麗にしてあげても良いんだけど、体に傷等がないかも確認したいからできれば温かいお湯で洗ってあげたい。
そうなると、服等の必要な物を買い出しに行かなくてはならない。もう少しで夕方になる。早めに行かないと店が閉まってしまう。モタモタしている暇はない。
でも、その前に。一番大切なことがある。それは⋯⋯
「2人に大切な話があるんだけど良いかな?」
「「⋯⋯⋯?」」
2人の前にしゃがんで2人と目線を合わせる。
「あのね、これから俺達は一緒に暮らす。家族になるんだ。それでね、君達の名前だけど俺に付けさせてくれないかな?」
尋ねると2人は驚いた顔をした後に大きく何回も頷いてくれた。
「ふふ、ありがとう。実はね、もう決めてあるんだ。⋯⋯気になる?」
2人は縦に大きく頷いて、顔には早く教えて!と書いてある。それが子どもらしくて、少し笑ってしまった。
「まずは、兎獣人の君。君の名前はノワール。ノワールっていうのは、黒や夜って意味なんだ。夜になると太陽が沈んで真っ暗になる。普通の人はそれが怖いと思うのかもしれないけど、俺は静かに優しく包み込んでくれる黒が好きなんだ。それに、夜はたくさんの人が穏やかに眠りについて癒しを得る時間でもある。そう考えてノワールが良いなと思ったんだけど、どうかな?」
「うん!にょ、にょわりゅ⋯?にょわ⋯⋯」
「ノワール」
「のわーりゅ!」
まだ発音が難しいみたいだけど、瞳はとてもキラキラしている。どうやら、喜んでくれたみたいだ。何回も自分の名前を連呼して、嬉しそうだ。よかった。
「そして、猫獣人の君。君の名前はルーチェ」
「りゅーちぇ⋯?」
「うん。ルーチェ。光とか星を表すんだ。光を見ると人は安心する。夜の空にはたくさんの星がキラキラ輝いているでしょう?それに、ルーチェの右目は月の様な綺麗な金色をしている。夜の空に輝く月や星のように輝く子になって欲しい。そういう意味を込めて、ルーチェ。どうかな?」
「りゅーちぇ、りゅー⋯⋯るーちぇ⋯⋯ん。いい」
「そっか、よかった」
ルーチェも口元を緩めて小さく笑っている。
よかった。嬉しそうだ。
「2人の名前は今日からノワールとルーチェだよ。これからよろしくね」
「うん!」
「ん」




