表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

第四回なろうラジオ大賞用

ホッと息つく缶コーヒー

作者: 城河 ゆう

「あ゛ぁ~、落ち着くぅ」


 バイト先の休憩所――の、裏手にあるスペースで、自分で持ち込んだパイプ椅子にぐたぁっと座りながら、缶コーヒーを一口。


 うん、美味し――


「あれ? 先輩?」


 突然聞こえた声に、垂れていた身体を瞬時にシャキッとさせて振り向くと、少し前からバイトを始めた後輩が呆然と立っていた。


 見られた!


 私は普段“頼れる先輩”を演じる事で、割りとだらしない自分の本性を周りに隠し続けて来たが、実際とギャップがありすぎて結構ストレスが溜まる。


 だから、仕事の合間は、誰も来ないこの場所に一人で居るのが唯一の癒し時間だったのに!


「そんなにお疲れなんですか?」

「え、いや、その――」


 えぇ!

 お疲れです!

 見栄を張るのも楽じゃないの!


「俺、まだまだカバーして貰ってばっかで、先輩に負担ばっかり――」


 いや、こうやって余所行きモードでいる事に疲れてるの!

 お願いだから、私を一人にしてぇ!


 こころをやすませてぇぇ!


「あ゛ぁぁ、もぉ、ほっといてぇ? 一人で心置き無くぐだぐだしたいのぉ! ずっと気を張ってると疲れるのぉ!」




 ――はっ!?


 私は今何を――




「えっと……先輩?」

「お、お願い……今見た事は内緒にして。 いい事教えてあげるから」


 何とか秘密を守りきるためにも、最近知ったばかりの知識を披露する事にした。


「いい事、ですか?」

「コーヒー飲むとリラックスできると思わない? 実はね――安定剤が入ってたのよ」


 どおりで落ち着けると――


「先輩、それ本気で言ってます?」

「へ?」

「コーヒーのリラックス効果は、香りとカフェインによるものです」



 ――安定剤って、“増粘安定剤”ですよ?



「……もぅやだ……いっそ殺して……」

「いや、そんな落ち込まなくても」

「ダメな所ばっか見られて……もぅむり……責任取って……」








「……わかりました」











「あ゛ぁぁぁ~疲れたぁ!」

「先輩……はしたないです」


 “いつもの”場所で、くたぁっと腰掛けた私の隣で、声がする。


「別にいいじゃん、私達しか居ないんだし」

「まぁ、先輩外面良いですからね。 ……まさか中身がこんな人だとは、皆夢にも思ってないでしょうね」

「惚れ直した?」

「……普通は『幻滅した?』って聞きませんか?」


 結局、あれから付き合う事になった私達。


「だって“コレ”知って告白コクって来るような変わり者じゃん」

「……否定はしません。 ほら、手の掛かる子の方が可愛いと言うか、しつけ甲斐が――」

「あたしゃ犬か!」


 意外と、上手くやっていけそうだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] コーヒーには安定剤が入っていたのですね( *´艸`) 二人ともなんだかんだ仲良くてニマニマしちゃいました♡
2022/12/04 07:08 退会済み
管理
[一言] 安定剤wwwww 確かにはいってますよね(^-^; なんだかんだ言って仲良しな二人にほっこりしました(∩´∀`)∩
[良い点] 責任とってカップルになったー♪ こういうの好きです(*´▽`*)/ 珈琲の安定剤勘違い可愛かったです♡ ホッとひといきつける寛ぎのお話、読ませていただき有難うございました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ