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ソーマジック・サーガ ~異世界と地球を紡ぐ物語~  作者: 渡邊渡
第三章:エヌという星
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第57話 流星群


「どうしたシーナ?」


「マサノリさん、この石を見て」


「ん?


これは、ただの石ではないな。魔力の残滓を感じる。


もしかしたら、これは隕石の欠片か?


確かにこれはちょっとまずいな…


ただ、正確なところは専門的に調べないとわからないか…


とりあえず戻ろう」



 グランドキャニオンにて、初めて地球でデュベリスと邂逅したシーナ。それはデュベリスとの戦いがエヌではなく、地球にその場を移しての戦いとなることを本格的に示すものであった。しかしシーナもマサノリの表情は、それ以上に晴れない。


 マサノリは静寂に包まれた荒涼とした大地を見渡しながら、小さく「転移」と呟いた。




 本部に戻ったマサノリとシーナを待っていたのは、ほぼフルメンバーであった。エヌで待機しているスカーレット王女ことハルは不在だが、それでも大木と花村夫妻、そしてソーマジック・サーガのオペレーションチームが神妙な顔つきで二人を待ち構えていた。


 その様子を見てマサノリは苦笑している。



「ピリピリしているな。それにしても大木、お前フル装備だな」



 一人異様な雰囲気を醸し出しているのが、マサノリと同じ召喚者の一人でバーサーカーの大木だ。全身がプラチナのような金属の鎧に包まれており、アニメにでも出てきそうな雰囲気を醸し出している。


「そりゃそうだろう。もしアイツが来ていたんなら、こんなんでも足りないぐらいだからな。ただ今回はそこまでじゃなかったっていうことだろうな」


 大木はマサノリの落ち着きを見て少し緊張がほぐれたようだ。しかしシーナの毒舌が大木を襲う。


「相変わらずコスプレみたいな装備ね。お台場のイベントに行けば撮影のお願いで引く手あまたでしょうね。私は絶対に嫌だけど」


「まぁシーナ、そう煽るな。あいつも危機感を持っているということだ。とりあえず先に報告をしておこう」


 そしてマサノリは今回の件でわかったこと、そして感じたことを推測を交えながらみんなに説明した。



 今回、シーナがグランドキャニオンで見つけたデュベリスは、隕石に刻まれた魔法陣を使って地球に送られてきたとマサノリは考えている。実際に隕石の欠片には魔力の残滓が残っており、その感覚は惑星エヌでマサノリが何度も戦ったデュベリスのものと同じであった。そしてマサノリの仮説はこうだ。


「どんな方法か見当は付かないが、やつらは宇宙中に転移魔法陣を込めた隕石を片っ端から飛ばしている。そして隕石が落下した星に下級のデュベリスを送り込み、生存可能な星か、そこに生物がいるか、どんな脅威があるかを調べてから、本体が乗り込んでくると考えられる。これまで地球上で感じた魔力の残りっカスは、そんな隕石が粉々に砕けたやつだと思う。恐らくあまり細かく砕けすぎると、魔法陣も破壊されて転移できないのだろう。ただこれまでデュベリスの反応がなかったのは不可解な部分もあり、これは細かく調べる必要があるかもしれない」


 マサノリの説明に誰もが驚きを隠せない。隕石を利用して他の星に侵略するなど、誰が想像できるだろうか。全員が静まり返る中、サポートスタッフのリーダーが手を挙げる。


「マサノリさんの説明は理解しました。差し当ってすべきことは、やはりこれまで地球に落下してきた隕石の調査でしょうか」


「そうだな。まずは過去5年で地球に落下した隕石と特定できるものを調べよう。JAXAとNASAには後で連絡するので、データを取り寄せてくれ。それともう一つ大事なことがある。これから地球にやってくる隕石だ」


「確かにその通りですが、よほど大きなものでない限り、地球に降る隕石を事前に察知するのは困難かと」


「それも理解している。ただ、どうしても気になるイベントがあるんだ」


「イベント?イベントとは何でしょうか?」


「流星群だ」



「流星群って、あのふたご座流星群とかペルセウス座流星群みたいなやつ?なるほどねぇ」


 花村夫人も何かを感じたようだ。しかし他のメンバーはきょとんとしている。そこでマサノリが話を続ける。


「宇宙を飛び回っている既存の流星群に転移魔法陣を仕込むことは不可能だろう。だがそこに奴らが作った隕石を紛れ込ませるように飛ばすことができれば、こっちは警戒心が薄れるし、魔法陣が仕込まれた隕石か普通の隕石かを、事前に把握する手段はない。もし奴らにそれなりの知性とそれができるならば、このタイミングを活かす可能性は低くないと思う」


「するってぇと、次の流星群はいつなんだ?」


 話を聞いていてオペレーターのひとりがインターネットでリサーチを始めた。


「流星群を紹介するサイトを見た感じでは、こと座流星群が4月の中旬ごろにあります。正式名称は4月こと座流星群と呼ぶらしいのですが」


「何だか知らんが、非常に嫌な予感がするぜ」


 誰もが感じていたその不安を口にしたのは大木だけだが、他のメンバーは口にしたくてもできなかったのだ。それが現実となることを恐れて。



「今後の対策ではっきりしていることは、4月のこと座流星群を追うこと。そして過去の流星群のデータと、これまで俺とシーナが世界各地で見つけた魔力の残滓があった場所が、合致するかどうかを調べることだな。


そしてもう一つ、やっかいなこともあった」


「なんだい、やっかいなことって」


「シーナがデュベリスを捕獲しようと試みた際、奴等は自爆した。これが意味することも大きい。例の件もあるし、俺たちの戦い方を知っているやつが相手にいる、または情報を共有している可能性が高いからだ。それを踏まえた上で、また作戦を練り直したいと思う」


「確かにそれはやっかいだな。石橋を叩くにこしたことはねぇから、そこは徹底的にやろう」



 今までの会議にない緊張感が漂っている。部屋の空気もいつになく空気も重い。しかしこれは戦いの前哨戦のさらに前振りでしかないのだ。



「揃った転移者たち」へつづく


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