第1話! リアルガチ僧侶が異世界転移!?
よろしくお願いします。
俺の名前は龍樹。26歳。寺の息子に生まれて、お寺によく遊びに来る近所のおばちゃんたちにめちゃくちゃ可愛がられながら何不自由なく育ち、なんとなく跡を継ぐんだろうなぁって大学で仏教を専攻して、総本山のある山で修行して、生まれた寺に戻ってきて2年がたった。
名前は昔の偉いお坊さん『ナーガルジュナ』にあやかってるらしい。正直な話、寺の息子であってもこれはキラキラネームだと思う。一緒に修行した仲間たちはもっとお坊さんらしくも普通のいい名前だった。
時はお盆。
寺の仕事にも慣れてきたなぁって思っていた時だった。
お盆の棚経。これは坊さんの数ある仕事の中でも体力的に過酷な行事だ。
精神的にはお葬式の方が色々きついが、棚経の体力勝負具合はやばい!!
8月の暑い最中、檀家さんのお宅を回ってお経を唱えまくるんだ。
うちは田舎だからクーラーが無い家もまだ普通にある。
改良服って衣で回るんだけど、あれめちゃくちゃ暑いんだぜ?生地は透けてるけど、下に白衣と襦袢と肌着、夏に4枚も重ね着とかありえないでしょ。
そして檀家のおばあちゃんたちはお坊さんには温かいお茶を出すのが礼儀だと思ってる。いや、おいしいよ?俺はお茶大好きだよ?でもねおばあちゃん、今日40度近くある!!そしてお茶の利尿作用やべぇ!!!!
俺はまだまだ若い坊主。こんなだけど根は真面目だったんだ。休憩するって概念がなかった。
そう。
俺はなんと間抜けなことに、
『お盆に坊さんが熱中症で死ぬ』
というなんともお粗末なニュースを世間に発信してしまった。
「修行しながらたくさん死後の事は考えてたけど、まさかこんなに早く三途の川を渡るとはなぁ。」
俺はなんとも綺麗なお花畑をなんだかふわふわした感じで三途の川を探しながら歩いてる。
「親父、困るだろうなぁ。お盆で忙しいのに更に忙しくなって。悲しみより大変さの方が勝っちゃうだろうなぁ。しかも高い金を本山に払って息子修行させたのにな、金銭的にもきついんかなぁ?でも保険とかあるかな?とにかく迷惑かけちったなぁ。」
そんなことをブツブツ言いながら歩いてたら綺麗な羽衣を纏った美人さんがいた。
「ありゃ?賽の河原の奪衣婆さんはよぼよぼの婆さんって聞いてたけど美人さんだねぇ!テンション上がるわ!!さぁ服を脱ぐから俺の罪でもなんでも計ってくれ!!」
「何してるの変態!!!!!!!」
「あぼっっ!!!!」
俺は奪衣婆らしき美人から右ストレートをくらった。めちゃ痛い。
「奪衣婆には服をはぎ取られて罪を計られるんじゃないのかい?」
俺は奪衣婆らしき美人さんに訊ねた。
「私はあんなお婆さんじゃありません!私はこの見た目の通り天女です。若くして亡くなったあなたを想い、悲しむ人が沢山いるようです。どんだけ立派な人物なんだろうと思ったらまったく…。まぁそれはいいわ。閻魔様より伝言よ。」
『お前はまだこっちに来るの早いからもうちょっと別の場所で修行してきなさい。可哀想だから今度は間抜けな死に方しないように天女から特典貰ってねー。』
「だそうよ。」
「閻魔さんってやっぱりいるんだな。他の十王様にも会いたかったわー。そしてやっぱりお盆の棚経中に死ぬのは閻魔さん的にも間抜けだったんかぁ。落ち込むわ。」
「あなた独り言が長いのよ。いい?そういうわけであなたにジョブとスキルを与えてあげるから、別の世界で頑張りなさい!」
「え?それってもしかして今流行りの異世界転生!?まじで!?」
「はぁ、これだから仏教界は世間から20年遅れてるって言われるのよ。異世界転生はもう『今流行り』ではなくて『大分前から今なお流行ってる』よ。そしてあなたは転生ではなく転移ね。今の体のまま行ってもらうわ。まぁでもあなたのイメージは大体間違ってないわ。」
「なんかディスってきますね天女さん。」
「最初に美しい天女を奪衣婆ってディスった人に言われたくない。そしてディスるも今はそんな使われてないわ。本当に坊さんは話が多いというかなんというか。はぁ。。。」
うわぁ。呆れられてしまったよ。美人からの冷たい目は痛いよ。
「なんかすみません。」
とりあえず謝っておいた。
「なんで謝っているのかわからないけどとりあえずジョブを決めるわよ。どうするの?」
うおーう。
天女さんとのフラグは立ちそうにありません。
そしてジョブってなんじゃ?よくあるRPGゲームのあれでいいのか?
「そうよ。よくあるRPGのそれよ。」
「え!?天女さん、まさか、、、」
「えぇ、矮小な人間の心くらいよめるわ。私、天女ですもの。」
うわぁ。。。
俺が脳内で天女さんの裸体を想像してたのバレてたぁ。
胸ばっかり見てたのも筒抜けぇ!
「そうね。だから早くあなたを転生させて帰りたいの。」
のぉー。汚物を見るような眼はやめてくれ。。。
「とりあえずジョブと聞いてあなたが思い浮かべた召喚士でいきましょう。」
――――――
ジョブ・召喚士を取得しました。
――――――
むーわ!ジョブ決まっちゃったよ!召喚士かっこいいからいいけど!!
そしてこれがよくある脳内メッセージか!響くな。
「あなたはこんなでもやっぱり僧侶ね。召喚士と決まってから沢山の仏様を召喚する姿を思い浮かべたわね?スキルはそれ方面でいきましょ。」
――――――
スキル・『神仏召喚』<阿弥陀如来><観世音菩薩><大勢至菩薩>を獲得しました。
――――――
――――――
スキル・『高速詠唱』<お経>を獲得しました。
――――――
――――――
スキル・『MP無限』を獲得しました。
――――――
おうおうおうおう。
勝手に話が進んで勝手にスキルが獲得されていくぞー!!!
しかも、うちのお寺の御本尊さん『阿弥陀三尊様』が召喚出来るのかぁ。すげー楽しみだ。強いんかな?
そしてお経の高速詠唱。昔エターナルフォースブリザードを発現させるために般若心経を高速で唱えてなぁ。懐かしいなぁ。
――――――
スキル・『エターナルフォースブリザード』を獲得しました。
――――――
え!?まじか!!!笑笑
天女さん仕事が出来過ぎる!!!
そして何より『MP無限』。
異世界転生といえばだいたい魔法でなんやらかんやらなんでMPはめっちゃ助かる!
というか無限てすごくない?
魔導の神髄にせまれちゃうんじゃないのか?
「はいはい、よかったわね。ではこんなところで私の仕事はおわりわ。あとは向こうで探り探り死なないように頑張りなさい。天上界も働き方改革が必要だわ。はい、では、よき異世界ライフを。」
「え、あ、ちょっ!」
そうして俺は綺麗なお花畑から光に包まれて異世界に飛ばされた。
「うーん・・・。テンプレだー!!!」
そこは見知らぬ草原。
そして俺は死んだときの改良服ではなく、もっと僧侶っぽい黒衣に白袈裟だ。
そしてこれもやはりテンプレ。ステータスウィンドウが出る。
――――――
名前 リュージュ
ジョブ 召喚士
Level 1
HP 10
MP ∞
攻撃 10
防御 10
特攻 10
特防 10
俊敏 10
スキル
・神仏召喚<阿弥陀如来><観世音菩薩><大勢至菩薩>
・高速詠唱<お経>
・MP無限
・エターナルフォースブリザード
――――――
なるほど。こりゃすごい。
本当に異世界来たんだなぁとこれだけでも実感する。
ぼーっとステータスを眺めていたら前の方からなんか向かってくる。
ん?
あれは犬か?
そんなことを思っている間にそれはどんどん近づいていた。
体調1m強。頭には立派な角が生えている。
「おぉ!異世界!!犬魔物だぁ!!!」
「ここは一丁レベル上げといきますかぁ!」
【オンアミリタテイセイカラウン!】
俺は阿弥陀如来さんの御真言を唱える。たぶんこれで召喚出来るだろう。高速詠唱<お経>のおかげでめちゃくちゃ速く言えた!
キラキラキラキラという音とともに目の前に一体の仏様、阿弥陀如来さんが現れた!
これは感動だ!!
修行しても修行しても会えなかった存在が御真言1遍で現れるんだから!
そして阿弥陀如来さんからまたすごい光が放たれた!
「ビームか!?ビームなのか!?」
そしてその光はモンスターではなく俺に向かって・・・。
「え!?」
キラキラキラー☆彡
――――――
リュージュのHPは満タンです。
――――――
「ん?」
これはあれか?
光が俺にあたってHPが満タンですって言われるということは、阿弥陀如来さんは回復ってことなのか?
なるほど。さすが衆生を無条件で救う仏様だ。
阿弥陀如来さんは回復。
覚えておこう。
よし、次は観世音菩薩さんだ!
【オンアロリキャソワカ!】
キラキラキラキラという音ともに今度は観世音菩薩さんが現れる。そして先程と同じように観世音菩薩さんからビームが放たれ・・・
俺にあたる。
――――――
リュージュの防御がアップしました。
――――――
ばふ。
おー、バフですか。
いや、信じたくない。
でも、
これはまさか
【オンサンザンザンサクソワカ!】
キラキラキラキラと大勢至菩薩さんが現れてからの~・・・
――――――
リュージュの特攻があがりました。
――――――
おう。
やっぱりか。
やっぱりバフか!
どうしようか。この状況。
仏様達の登場にびっくりしていた犬魔物。
しかしこちらが何もしてこないとわかるや突進してきた。もちろん俺はかわせない。
ドン!!!
という音とともに俺は吹っ飛ぶ。
いてぇ。
これはまさかの二度目の死か?
そう思ったが草原の上に打ち付けられただけで無傷だった。
もしや?と思いステータスを確認する。
――――――
Level 1
HP 10
MP ∞
攻撃 10
防御 100000
特攻 100000
特防 10
俊敏 10
――――――
いやいやいやいや、バフ強すぎるでしょ!!!
防御と特攻が10万て!!!!
おかげで死なずに済んだけどどうやってこの犬魔物倒してくれようか?
「あ!」
もうこれはあれをやるしかないじゃん。
俺の黒歴史的厨二病時代の遺物!
そう、それは世界最強の魔法。
発動前の枕詞が長ければ長いほど威力は上がる。
普通ならば詠唱に時間が掛かれば敵に攻撃されてやられてしまうが、今の防御10万且高速詠唱<お経>持ちの俺に死角はない。
「仏説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意無色声香味触法無限界乃至無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無所得故菩提薩タ依般若波羅蜜多故心無ケイ礙無ケイ礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多呪即説呪日掲帝掲帝波羅掲帝波羅僧掲帝菩提娑婆訶般若心経」
準備は整った。
大勢至菩薩さんのバフにより特攻10万、そして高速詠唱による超長い枕詞。
くらえ、世界最強の氷魔法。
「エターナルフォースブリザード!!!!!!!!!!!!!!」
――――――
リュージュのレベルが1あがりました。
スキル・神仏召喚<不動明王>を獲得しました。
――――――
――――――
名前 リュージュ
ジョブ 召喚士
Level 2
HP 20
MP ∞
攻撃 12
防御 12
特攻 12
特防 12
俊敏 12
スキル
・神仏召喚<阿弥陀如来><観世音菩薩><大勢至菩薩><不動明王>
・高速詠唱<お経>
・MP無限
・エターナルフォースブリザード
――――――
そしてそこには半径50メートル程の大きな氷の世界が作られていた。
全てが凍っている。
全ての時が止まっているようだ。
≪静止の世界≫
それが頭をよぎる。
「うん。これは世界壊しちゃうわ。封印しよう。封印ってなんかかっこいいし。」
そうしてレベルが1上がった俺はとりあえず街を探して歩くことにした。
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