矛盾
しょうもない...........しょうもない...........
ある商人が店先で客に呼びかける
「この貫けないものは存在しない最強の矛を買いませんか?」
隣の商人も負けじと
「いやいや、このどんな矛も通さぬ最強の盾をお買いになられては?」
それを見ていた旅人は皮肉げに言った
「それをぶつけあったらどうなってしまうんです?」
ここで互いの商人もその結果が気になってたまらなくなってしまった。
同意の上で、盾を低姿勢で構えた商人にもう一人の商人が力の限り矛を突き刺しにかかる。
矛と盾が少し触れるやいなや
落ちる水滴、賑わう商業の街。全てが動くことをやめた。
絶対に貫く矛と絶対に貫かれない盾、互いの絶対性に耐え切れないがために。この世界は活動を終え、次のルートへ分岐した。
この商人たちが出会うことのなかった世界線が今もどこかで続いている。
いわゆるパラレルワールドとはこういった理由から生じるのだ、無論この1つの世界が動き始めることはもうないが。
私の生きるこの世界はあらゆる矛盾の回避のルートの先なのかもしれない。
しょうもない...........しょうもない...........