謝罪する
「君には、迷惑をかけたわね」
「?」
ルティは首を傾げた。何も説明しないまま謝罪だけされても、わからないのは当然だろう。
「君を少し警戒していたの。名乗らなくてごめんなさい。私は詩鶴」
「シヅルさん……あっ!」
ルティが目を見開いた。
「母様がよく話してくれた。〝詩鶴〟と書くんだよね」
「そう。お母様は、夜叉姫ね?」
「うん。知ってたの?」
「君が夜叉姫の子というのは、さっき知ったの」
「ボク、言ったかな?」
「いいえ。君が私に怯えた理由を知りたくて、その部分だけ見せてもらったの。その映像に夜叉姫がいたから。……勝手なことをして、ごめんなさい」
「あ……そう、……」
ルティが赤くなる。恥ずかしそうなのは、母と詩鶴の似ている箇所を考えていたことを詩鶴本人に知られたからだろう。
「不愉快な行為とは重々承知しているから。君は私に怒る権利があるわ」
「……ううん……ボクが、話のできない状態だったから、やむを得ず……でしょ?」
「そうね。できることなら、使いたくない術だわ」
「なら、ボクは詩鶴さんに感謝しなきゃ」
「え……?」
「今こうして話せているのは、『あなたが状況を把握しようと努めてくれた』おかげだから」
ルティの言葉に、詩鶴は呆気にとられた。
お読みいただきありがとうございます。