朧月
ネギま馬はバイトをしているわけですよ。コンビニバイト。
それもねー観光地にとても近いわけです!!
中国人のマナーが悪いとか言われているけど俺には関係ない!
だって、中国人の幼女に「謝謝」って言われたんだぞ!!思わず目覚めかけたわ!!
あ、本編どうぞ
同刻、アーラット村にて
「今宵は月が綺麗でございますね」
女性は目の前にいる老父に話しかける。その姿は妖艶という言葉がよく似合う。黒い艶のある長髪は腰まで流し、整いすぎた顔面は微かに恐怖を感じるほどに世の男を虜にする魅力を放っている。女性特有の丸みを帯びた体はどの女性にも劣っていなかった。
ただ状況が異常なだけに老父はその女性の魅力に溺れる余裕がなかった。なぜなら老父は椅子に縛り付けられ、動けないように強制されているのだ。そんな状態で女に見惚れられる方が異常である。
「縛り付けちゃってごめんなさい。でもこれはあの子達のためだから」
「あんたの目的は何だ。俺をこんな状態にしたところで金は出てこないぞ」
「私の目的はお金じゃないわ。私はあなたの体が欲しいの」
目の前にいる美女の大胆な告白に老父は瞠目する。俺の体が欲しいとは何事だ。まさかそういう意味で言っているのではなかろう。
「どういう意味だ」
何か体を張る頼みごとという可能性も捨てきれないがそれなら体を縛り付ける意味がない。
「それはね」
老父に向かって女性が一歩ずつ歩みを進める。近づくたびに女性の甘い香りが老父の衰弱し切った体を誘惑するように鼻腔をくすぐる。それだけで理性が吹き飛びそうになる。それをこらえながら近づいてくる女性を見つめる。い
や、見つめるのではない、老父は彼女から目を離せないのだ。彼女の魅力がそうさせているのだろう。老父は何かに取り憑かれたかのように女性を見つめていた。彼女が近づいてくるたびに甘い香りが強さを増していき失神しそうになる。やがて老父との距離が目と鼻の先まで近づくと老父と目線を合わす。そして右手を老父の頬に這わせ、
「こういうことよ」
次の瞬間には彼女の纏っていた男を誘惑する甘い香りが老父を死に貶める死の香りへと変貌を遂げていた。体の内側から何かが壊れていくのがはっきりとわかる。体の変質が進んでいくたびに体を激痛が走る。
「……うっっぅ……あぁ」
老父は声にならない悲鳴をあげた。骨が強制的に変形させられて骨の軋む音が身体中に響き渡る。やがて痛みに耐えかねて失神してしまうと老父は直感。視界が霞み、絶対に切れてはならないと彼も思っていたのだろう。意識の糸がほつれ始めた時、あの妖艶な声が鼓膜を響かせた。
「こんな痛い思いをさせてごめんなさい。でもこの役目はあなたにしか頼めないの」
「あの子達の為に犠牲になってね」
その言葉を聞いた瞬間に老父は意識の糸が完全に断ち切れるのを感じた。
老父の意識が完全に失われたことを確認すると今まで彼を縛っていた縄を解く。この瞬間彼は人ならざるものへと生まれ変わったのだ。新たな生命の誕生に少しだけ心を震わせて、すぐに彼が「あの子達」の犠牲になることを思い出し、少し罪悪感を感じる。しかし自分の思い描く物語にはこの名も無き老父の犠牲が必要なのだ。「あの子達」のことを思うと胸が苦しくなる。
「エル、アル」
「あの子達」の名前を不意に口ずさんでしまう。もうここまで言ってしまったのだ。せっかくだから最後まで言い切ろう。何度も願ったあの言葉を、
「早く迎えにきて」
「そして」
一呼吸置く。彼女の思い描く最後を表すに最もふさわしい言葉を口にできることに心が感激に震える。
「私を殺して」
確かに今日この瞬間、彼女は物語の一ページをページの中の最初の一行を書くことができたのだ。その偉業を達成した感動が深く心に染み込み、なんとも心地のいい気分に浸っていた。
老父の住んでいた教会の窓から月の光が漏れ出す。それに気づいた彼女は窓に近づき月を眺める。吸い込まれそうなほど暗い夜空に月が懸命に光を灯そうとする。そんななんでもない、いつもの夜空が彼女には今まで見たどんな夜空よりも綺麗に映った。
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