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密閉容器の性能確認

「待て。この先は湧酒場だ」


「・・・」


立ちはだかる警備隊の二人に無言無表情で対応してみる。


「すみません、お願いですから無反応は勘弁してください」


俺とサチ相手でも規則を守って立ちはだかるのは偉いと思う。


だた、俺らを見つけた瞬間嬉々とした表情で立ちはだかったのはどういうことだろうか。


どうせ暇だったとかで俺を暇つぶしに利用しようとしたのが見て取れたので無反応で返してやった。


「ははは、冗談だ。ご苦労様」


「ありがとうございます。それで今日はどういったご用件ですか?」


「今日は前に言った通り酒を貰いに来た」


俺の答えに警備隊の二人は顔を見合わせた。




家に帰ったらアストから密閉容器が届いていた。


小さいものから大きいものまで結構な数の瓶が入っていた。


どの瓶にも口のところに栓がしてあり、なかなかの密閉精度を持っている。


補足文も付属してあり、試作段階なので出来を見て欲しいと書いてあった。


とりあえず家の池の水を入れて密閉度を確認したが、逆さにしても水漏れも無かった。


そうなれば後はどれだけ揮発に耐えられるかだけなので、この容器を作って貰った目的である酒を入れに湧酒場にやってきたのだ。


「まさか本当に酒を貰いにくるとは思いませんでした」


湧酒場に入って俺とサチの後に警備隊の子の片方がついて来た。


湧酒場の外であらかじめ出した密閉容器を持って運んでくれている。


「ちゃんと持ち出せるかはまだわからないけどな」


今現在この湧酒場内で空間収納の使用は禁止されている。


その昔ここの酒を空間収納に入れて持ち出した者が酔って暴れて警備隊が出動したという事があり、それ以来湧酒場での空間収納の使用が禁止されたらしい。


それ以降も何人か持ち出そうと試みた者はいたらしいが、全て失敗に終わり、ここ最近はそういう考えをする人も居なくなったそうな。


「ちなみにルミナテース様も持ち出しに失敗した一人です」


そうじゃないかと思ったよ。ルミナならやりかねん。


「到着っと。それじゃ入れてみるか」


「ソウ、私は実の方を収穫してきます」


サチはザルに入れてあった小さめの瓶を置いてさっさと仙桃の収穫に行ってしまった。


なんでザルなんか出してるのかと思ったらこのためだったのか。


あいつ仙桃好きだからなぁ。気持ちはわからなくもないが、少しは手伝って欲しかった。


「あの、お手伝いします」


俺の心中を察したのか、警備隊の子が手伝いを申し出てくれた。いい子だ。


「助かるよ。この中に酒を入れて、一杯になったらこっちに戻してくれるか?」


「了解です」


栓を抜いて警備隊の子に渡し、目一杯まで入れてもらったら再び栓をして置く。


これを全ての瓶にやってもらい、後は外に瓶を持って往復するだけ。


「そんな一気に持って重くないのか?」


俺は小さい瓶を、重い方は持って貰っている。


「大丈夫ですよ。いい運動になります」


あー・・・そういえば警備隊はこういう思考だったっけ。




数往復して全て運び出した後、外に置いてある一本手に取り栓を抜く。


「うっ・・・」


凄い酒臭いので早々に栓を閉める。


「どうですか?」


ザル一杯に仙桃を持ってきたサチがせっせと空間収納に入れながら聞いて来る。


「今のところは密閉出来てる。後はどれだけこの状態で持つかだな」


並べた瓶を眺めながら既に頭は酒を使った料理を考えていた。


ふふふ、楽しみだ。


ちなみに何故サチはこれを仙桃と一緒に入れないかというと警備隊に止められているからだ。


外で待っていた子が念のため上司に許諾の確認をしたらしく、今はそれの連絡待ちという状態。


「すみません、お待たせしてしまって」


「いいよ、それぐらい。急なことだし仕方ない」


「相変わらず今の警備隊は初動が遅いのですか」


仙桃を入れながら横目で申し訳なさそうにする警備隊の子に鋭い視線を送っている。


「一時より大分回復はしたのですが、まだまだ練度が低い状態でして」


「やはりルミナテースが抜けた穴が大きいですか」


「そうですね。一緒に抜けた人達もそれなりの階級を持っていた方が多かったので」


そうだったのか。


ルミナが警備隊隊長だったというのは聞いていたが、他の子も凄かったのか。


俺が農園に行っているときに会う子達だよな。とてもそうには見えなかったが。


「あ、あの!神様!」


少し離れたところで上司とやりとりしてた子が慌てた様子でこっちに来た。


「どうした?」


「その、副隊長がこちらに向かっているらしいです!」


「なんだって!?」


もう一人の警備隊の子がそれを聞いて驚いてる。


「え?わざわざ副隊長が出向いてくれてるの?」


なんか悪いな。手間取らせてしまったようで。


「はい、近い場所の警邏中だったらしく。いえ、そんな事より、副隊長は」


「貴様か!湧酒場で窃盗を働いたという輩は!」


話の途中だったがそれを遮るように上から大声が聞こえてきた。


視線を上げるとそこには一人の天使が滞空していた。

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