追加発注
次第に見えてくる風呂の形。
木の浴槽も魅力的だったが俺が選んだのは岩の浴槽。
造島師のところに行ったときに見た小島の中のサンプルに岩で作った池があったので、それを参考にさせてもらった。
色々な物が配置されていくにつれて全体像が見えてくる。
左右に池に通じる道を新たに作り、その間に風呂場を建築。
風呂の中央に池から水を引いてくる場所を作り、浴槽も中央に設置。
こうやって出来てくると新たに気になる事が出てくるのでヨルハネキシに聞く。
「左右の道の両方から入れるようになっているが、意味はあるのか?」
「特にありませんな。この島の対称条件を満たすためだけです」
ふむ、それじゃちょっと勿体無い気もする。
「左右の入り口をそれぞれ男女別にして、中央の浴槽を仕切れるようにしたら来客の時に入ってもらえるようにならないかな」
落ちてる枝を拾って地面にガリガリと簡易図を書いて説明する。
俺とサチだけで入るなら仕切りとか要らないんだけどな。
出来れば風呂の良さを他の人にも知ってもらいたいので余裕があれば付けてもらいたい。
「なるほど、来客の事まで考えてなさるとはさすがですな」
思いつきなんだがヨルハネキシは興味ありげに食いついてくれる。
「仕切りは蛇腹の板で作ったらいいんじゃないかな。浴槽は特に間仕切りなしでいいか」
普通なら反対側が気になって覗こうとする不埒な輩がいそうだが、さすがに俺の管轄下でやる奴はいないだろう。
「ふむふむ、ソウ様はなかなか面白い技術をご存知ですな」
そうかな。前に居た世界だと割と古風な技術なんだが。
地面に書きながら説明すると直ぐに理解してくれた。
「なるほど、これなら収納空間が少なくて良いですな」
前の世界じゃ濡れても大丈夫なカーテンとかあったけど、ここは木で十分だと思う。多分そんな高い頻度で使わないと思うし。
他にも池との堰に距離があったので、堰と風呂場までの間に棒をつけて風呂場で棒を下げると堰が上がるという案も出した。
無精者の考え方ではあるが、ヨルハネキシは楽しそうに聞いてくれた。
「この二点だが頼めるか?」
「お任せくだされ。お話を聞いてうずうずしてきましたわ」
意気揚々と現場に戻って行き、早速皆を集めて指示を出している。
こういう強い職人気質なところは若い連中と変わらない気がする。頼もしい限りだ。
どうやら俺が頼んだものはヨルハネキシ直々に作ってくれるようだ。
その作業たるや初めての物にも関わらず作業に迷いが全く無く、次々と形が出来ていく。
「よし、小休止だ。各自排熱にあたってくれ」
「了解」
作業に見とれてるとレオニーナの掛け声で天機人達が小休止するためにこっちに来た。
「お疲れ様」
「ありがとうございます」
パワーグローブから湯気のような熱気が漏れていて背後の風景が歪んで見える。
「天機人の換装の話は聞いてたが凄いんだな」
「そうですか?私からするとジ・・・ヨルハネキシ達職人の方がすごいと思いますが」
一瞬ジジイって言いそうになったな。
一応俺の前だと口調を丁寧な方にしてくれるようだ。
「俺からすればどっちも凄いよ。感謝してる」
「ありがとうございます。なんか照れます、へへ」
何となくサチがレオニーナを弄りたくなる気持ちが少しわかった。
とても素直な子なんだな。照れてる様子が愛嬌を感じさせる。
視線を作業中の職人達に戻すと既にヨルハネキシが仕切りの形を作り上げて稼動試験をしている。
「おーい、レオニーナ。ちと手伝っとくれ」
「あいよ!それじゃソウ様、行ってきます」
「あぁ、頑張ってくれ」




