魔族現る
今日の仕事は昨日の疲れも若干残ってるのでゆるめに、と考えていたのだが。
「ソウ大変です」
「どうした?」
「魔族が視野範囲内に現れました」
「なに!?」
ついに来たか、魔族。体に緊張が走る。
「場所はオアシスの街。詳細を出します」
サブウィンドウに魔族の姿が映し出される。
ふむ、頭に角を生やした姉妹か。
種族は淫魔、所謂サキュバスってやつか。何しに来たんだろう。
しばらく注目して追っていると、案内所に入って紹介を受けた後、裏通りの斡旋所に入っていった。
そして俺の見ている中、驚くべきことが起きた。
「魔族、視野範囲内から消滅しました」
サチが言うように見ていた魔族がコスプ族に変わったのだ。
「は?どういうこと?」
「どうやら彼女達ははぐれ魔族のようで、仕事と食事を求めてこの街に来たようですね」
「いや、だからってそんなあっさり魔族じゃなくなるの?」
「なるようですね。私も少々驚きました」
画面じゃ新たにコスプ族になった姉妹が早速先輩に付き添って貰い街の案内を受けている。
あの先輩も頭に角生やしてるな。あれか、前に言ってた元魔族か彼女。
ふーむ、こうもあっさり変わるものなのか。
何か拍子抜けだな。緊張した俺が馬鹿みたいじゃないか。
いや、警戒しておくに越したことはないか。あっさり変わったという事はあっさり戻る可能性もある。
と、思って注意して観察してたのだが。
「なぁ、サチ。魔族ってあんないい子なの?」
「わかりません。私も魔族自体見るのはかなり久しぶりなので」
「うーん」
一日通して観察していたが、人との応対は丁寧、先輩の言う事に素直に従う、しまいには与えられた食事に軽く涙するとか。
実は天使なんじゃないの?この子達。
あー、逆にこういう子だったからオアシスの街に来たのかもしれないのか。ふむふむ。
ともあれ最初ほど強く警戒する必要も無さそうだな。
今後も観察は続けるが、いい子だし多分大丈夫だろう。
いっそうちの信者になってくれないかな。




