掘り出し者
手本をやったあと各班で実習開始。
俺はブラブラ各班を見てまわっている。家庭科の先生の気分。
今回使う果物は班の自由選択。ただし一種類のみ。
相性のいい果物を混ぜて作ったりしてもいいとは思うんだけど、試食した時味がわからなくなるので今回は禁止。
やるなら終わった後でやって欲しい。
ちなみにサチはルミナと同じ班に入って一緒にやっている。主に口出し担当。
「ちょっと、そんな力一杯やると果肉が飛び散ります!」
「あはは、ごめーん。力の加減が難しくって」
・・うん、結構楽しそうにやってるな。
黄色い声が飛び交ってて気分は完全に女子学校の先生だ。
ふむ、結構班によって差が出るな。
丁寧に絞った果汁のところ、逆に粗くて果肉も混じっているところ、綺麗に凍らせているところ、完全に凍ってしまって包丁で砕いているところ。
そんな中一箇所既に作り終えたところがあった。
「もう出来たの?」
「は、はい」
目が見えるか見えないかぐらいまで前髪が落ちている子が答えてくれる。
「ユキちゃん凄いんですよ、あっという間にぱぱっとやってしまって」
この子ユキっていうのか。
地味な見た目だが、何だろう、妙に気になる。
「ちょっと作ったもの見せてもらえる?」
「あ、はい」
溶けないように空間収納に仕舞っていたようで、出してくれる。
「頂いてもいいかな?」
「はい、もちろんです」
許可を貰って一口貰う。
ふむ、果物は桃か。
果汁を凍らせた粒もさらっとしててきめ細かいのも凄いが、何よりそれとは別に氷の粒が入っている。
「これ氷の粒が入ってるけど」
「ご、ごめんなさい。私その作物の担当なのですが、味が濃かったので後から氷を足してみたんです」
「ほら、やっぱりソウ様なら気付くって言ったじゃない」
俯くユキにほかの子が追い討ちをかけてるが、俺はそれに待ったをかける。
「いや、これは凄いよ」
「え?」
「味の濃さがいい感じに氷で薄まって果汁のくどさが抜けて美味しい」
「本当ですか?」
「うん。正直驚いた」
本当に驚いた。
まさかアレンジしてくる子がいるとは。
もしかするとこのユキという子は料理の才があるのかもしれない。
「ユキって言ったっけ」
「は、はい」
「今後も何か作ってて試したい事があったらどんどん試してみていいよ」
「え、いいのですか?」
「うん、本来料理ってそういうものだから。もし不安なら俺に聞きに来ていいから」
「はい、ありがとうございます」
怒られるとでも思ってたのかな、意外な顔した後に嬉しそうにに微笑んでる。
「えっと、ソウ様。それってユキちゃんが凄いんですか?」
「ん?うん。少なくとも今のみんなより少なくとも頭一つ抜き出てるかな」
おぉ、と周りの子達から感嘆の声が上がる。
「そんな、買いかぶりすぎです」
「買いかぶりすぎかどうかは今後のユキの研鑽次第かな」
「あぅ。頑張って、みます」
俺一人じゃ教えることに限界があるから出来れば将来教える側に来てもらいたいものだ。




