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洞穴探検

「着きました」


到着したところは浮遊島の端。


「崖しかないけど?」


辺りを見回しても洞穴のような場所は見当たらない。


俺が辺りを見回しているとサチが後ろに回ってがっちりと抱きついてきた。


おいおい、こんなところで大胆な、あ、はい、飛ぶのね。


少し体が浮いたと思ったらそのまま崖を急降下する。


「さ、サチ、もう少しゆっくり降りて」


「あ、はい、すみません」


あー怖いわ。心臓がぎゅってなる。


紐付けずに他人に掴まれた状態でバンジーするみたいな感覚だ。


バンジーやったことないけどきっと気分的にはそんな感じだろう。


いくら下に乗れる雲があっても怖いものは怖い。


上着のせいでサチの柔らか感触もイマイチだし。


「これぐらいでいいですか?」


「あぁ、うん、これぐらいなら大丈夫。ありがとう」


かなり降下速度を落としてくれたので助かる。


心にも余裕が出来てきたので浮遊島の側面も観察できていい。岩肌しかないけど。


しばらく降りると浮遊島の側面から小さな滝のようなものが見えてくる。


「あれか?」


「はい、あそこが目的地です」


近くに行くと人一人半ほどの高さの横穴から水が滝になって落ちているのが分かる。


「滑るので気をつけてください」


洞穴入り口にゆっくり着地する。おおう、あぶねぇ、確かに滑る。


洞穴の奥から侵食された溝を通って小川が外に流れてきている。


「では行きましょう」


「灯りは点けないのか?」


「えぇ、しばらく進めば目が慣れると思うので最初のうちは我慢してください」


「ん、わかった」


何か理由があるのかな。わからないから言われたとおりにしよう。


小川に沿って少し進むと奥からひんやりした空気が流れてくる。


目も少しずつ慣れてきて岩肌とか見えるようになってきた。


基本的には外と同じ岩肌をしているが、所々に水晶のような結晶が埋まっているのがわかる。


じっくり観察したいところだがサチを見失うと困るので我慢。


あー、こういう移り気なところが衝動的とか言われる部分なのかな。


俺をそう評価するサチは少し前を歩いている。


「ここくぼんでいるので気をつけてください」


「あいよー」


こんな感じで転びそうなところを教えてくれる。


背中の羽も完全には収納せずに小さい状態で出してくれていて、目印になってて非常に助かる。


洞穴は基本的に人が歩ける大きさのは一本道なので迷わないが、壁面のあちこちに穴が空いていて、そこから水が流れてきていて気をつけないと滑る。


実際何度か滑って転びそうになったのをサチにばっちり見られて笑われた。不覚。


そこそこな距離を進んだところでサチの足が止まる。


「ソウ、羽を仕舞いますよ」


「うん?どうした?」


「この辺りになると天井からも水滴が落ちてくるので。フードも被ってください」


「了解」


ここに来る間もところどころ水滴が落ちていたが、この先は目に見えて落ちてくる量が増えている。


洞穴の大きさも立って歩くには若干狭く感じる程度まで小さくなってきていて、前の世界で見た映像の洞窟探索のようになってきた。


「もう少しです」


「ほい」


しかしここに入ってからというものサチの口数は少ない。


あーそうか。この頭に当たる水滴が雨みたいだから辛いのか。


むぅ、無理させてしまったかな。


いや、それならわざわざ俺に勧めないよな。この先に何かあるのかな。


更に進むと壁面の水晶の量が増えてきた。


壁や天井の至る所から生えているように水晶が飛び出ていてこれだけでも結構見応えがある。


ん?先に人一人ギリギリ通れるぐらいの穴が見えてきた。


「ソウ、あそこを潜れば目的地です」


おぉ。はてさてどんなところか楽しみだ。




穴を潜った先は広いドーム状の空間が広がっており、あちこちに大きい水晶が生えている。


そして中央に最も大きい水晶がある。


「でかい水晶だな」


「そうですね。恐らくこの浮遊島の中で一番大きいと思います」


「サチが見せたかったのはこれか?」


「えぇ、これもその一つですね」


「ん?それ以外何かあるの?」


「ではそれをお見せするので、ここで待っていてください」


何かを含んだ笑みを浮かべながらサチは中央の水晶に向かっていく。


水晶の前で何か念じてる。光の玉を出して、それを水晶の中に埋め込んだ。


埋め込んだらすぐさま小走りでこっちに戻ってきた。


「よく見ていてくださいね」


サチも若干興奮気味で一緒に水晶の方を見る。


水晶に埋め込んだ光の玉は次第に水晶に馴染み水晶そのものが輝き始める。


「始まりますよ」


サチの声に応じるかのように光った水晶の先端から光の線が伸びる。


伸びた光は他の水晶に当たり、その水晶から別方向に光の線が出て行く。


そうやって光の連鎖反応でドーム内があっという間に光の線で包まれた。


「おぉ・・・これはすごい・・・」


水晶自体に赤や青といった色があるため光の線もその元の水晶の色に染まっており、色々な色の線が入り乱れていてとても綺麗だ。


「よい・・・しょっと」


俺が光の幻想風景に見入っているととサチが俺の上着の中に強引に下から入って襟元から首を出してきた。


「どうした?」


「歩いていないと寒いので温めてもらおうかと」


よく言うよ、自分でどうにかできる癖に。


そう思ったが真意はそこじゃないので何も言わずに上着の腕だけ中に入れて抱きしめてやる。


正直俺よりサチのほうが温かいんだけど、気にしないでおこう。


「どうですか?」


「凄いな、頑張って見に来るだけの価値はある」


「そう言ってもらえると案内した甲斐があります」


「これってどれぐらい持つんだ?」


まだ光の線は残っている。


少しずつぼやけてきてはいるが、洞穴内の水気に反射してこれはこれで綺麗だ。


「もう少しですね。消えるときもなかなかいいですよ」


「ほほう、それは楽しみだ」


サチの体のあちこちを撫で回しながら待っていると、光の線が急激に弱まり溶ける様に崩れ落ちた。


「お、おぉ・・・」


「あー終わってしまいましたね」


「うん」


何か花火を見た後のような儚い気持ちになった。


これが逆にまた今度来ようという気持ちにさせるんだろうな。


「これで目的は終了です」


「あぁ、ありがとな。いい場所を知れたよ」


「喜んで貰えたようでなによりです」


「うんうん」


感謝を体で表現してみる。


「・・・あの、ソウ。そろそろ離してください。帰れませんよ」


「どうしようかなー勝手に入ってきたからなー」


「ごめんなさい、帰ったら続きしてもいいので」


「よし、じゃあ帰るか!」


「まったく、現金な人ですね」


呆れながらもまんざらでもない顔してる。


来るのはちょっと大変だったがその分の価値のある場所だった。また来よう。

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