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通貨について情報館へ

「そういえばこっちには通貨ってあるの?」


最近片付け中に浮かんだ疑問を聞くことが増えた気がする。


仕事が終わって一段落して暇になるから頭の整理でも行われてるんかな?


「ありませんよ」


「ないのか。よくそれで生活できるな」


「んーそうですね。それについて情報館で話しましょうか」


「お?なんでまた?」


別にここで話しても大丈夫だと思うんだが。


「丁度情報館からの招待が来ていまして。何でも見せたいものがあるから来て欲しいと」


「ふむ。じゃあ折角だしそうしようか」


見せたいものってなんだろう?




「お帰りなさいませ!」


情報館に入ると一斉にメイドが挨拶してくれる。


何か前より人数が多いんだが。


それより驚いたことがある。


「お待ちしてました、主様」


「あぁ、うん。アリス、でいいんだよな?」


「はい。主様」


メイドたちの先頭に立って迎えてくれたのは総館長のアリス。


見た目が変わってて驚いてしまった。


濃紺服のメイド服なのは変わらないが、肩ほどまでだった髪が背中の辺りまで伸びている。


後ろに控えているメイド達も髪の色から服の丈、顔や目の色も変わっているのもいる。


「これが見せたかったもの?」


「はい。いかがでしょうか」


お、おぉ・・・表情も以前より豊かになってる。笑顔が綺麗だ。


サチがすかさず俺の尻を指先でメイド達には見えないようにつついてくる。鋭い。


「あぁ、見違えたよ。みんなの個性が出てていいんじゃないかな」


俺の感想にみんなの顔が喜びに変わる。


前は動作でなければそれが分からなかったのが分かるようになっているのは凄い変化だと思う。


うんうん、みんな個性的でいいね。


それでサチは何対抗してパネルの中からメイド服を選ぼうとしてるのかな?


あ、それはやめよ、色々見えちゃうから。


着るならスタンダードなのにしなさい。うん、それ、アリスのと似てていいと思うぞ。




「お久しぶりです、旦那様」


「こんにちは!ご主人様!」


俺がまた勉強会を頼んだところシンディとユーミがまたきてくれた。


二人が来る前にまた軽い名付け会が行われて大変だったが、覚悟してたので大丈夫。


「シンディとユーミか。また思い切ったね」


シンディは元々水色基調の服だったが、更に髪色も水色になり腰の辺りまでのロングヘアーになっている。


そして何より胸がルミナ並まで大きくなっており、それを主張出来るような服のカスタムもしていて全体的に妖艶さが増している。


ユーミは濃紫色の服だったのが、髪色が同じように濃紫色、髪の長さは余り変化してなくて肩上ぐらいのミドルショート。


何より特徴的なのがスカートがロングから膝上ぐらいのショートになっており、生足が露出してる。


ただ、全体的な雰囲気のせいなのか魅力というより機動力が上がったという感じがする。胸も少し小さくなってるし。


そう考えるとアリスは割とデフォルトに近い気がする。


ちなみにサチも今はメイド服になっている。


うん、ちゃんとヘッドドレスも付けてていいぞ。


際どい方は今度二人の時に着てもらおう。


「それで質問内容なんだけど、天界には通貨が無いって聞いたんだけど」


「はい。御座いません」


「なんで?」


「結論から申し上げますと、必要が無いからです」


「ふむ、詳しく」


「はい。図を交えて説明します」


大きなパネルが用意されて、必要そうな画像が表示される。


こういうのを瞬時に用意できるんだよな、凄い。


「この粒はご存知と思います」


指先のビームポインタで指されたのはいつも食べてる完全食の粒。


「うん、毎日食べてる」


「はい。主にこれが通貨を必要としない最たる要因です」


「どういうこと?」


「我々天機人を含め生き物は必ずエネルギー摂取が必要です。そしてそのエネルギー摂取、生きるためにする事があります」


「農耕や狩猟の事か?」


「はい。そしてそれを直接的に行う人、道具等を作って間接的に助ける人、更にその人を助ける人が出てくると物々交換では曖昧になってしまいます」


「そこで出てくるのが通貨か」


「通貨は曖昧だった物々交換を等価交換へ近づける事が出来るようになります」


昔に通貨が出来る経緯みたいのを前の世界で習ったが、何となくそれを思い出すな。


「しかし、天界にはこの粒があります。これは天界に住む人へ無償で配布されます」


「つまりこれがあれば生きるためにする事が省略可能って事だから、結果的に通貨も不要になるわけか」


「はい。理解が早くて素晴らしいです」


褒められた。お世辞でも言われると嬉しいな。


しかし、そうか、うーん。


「ソウ、悩むのもいいですが折角答えられる人が多いのですから口に出してみてはどうですか?」


む、それもそうか。


どうも一人で思案してしまう癖があってダメだな。


「いやさ、そうなってくると今アリス達を含めて天界にいる人達のやってることって善意って事になるのかなって」


ぼんやりと頭に浮かんだ疑問を言ってみる。


「主様、そのお考え詳しく伺ってもいいですか?」


アリスが興味ありげに食いついてきた。他の三人も興味ありそうな顔してる。


「食に困らないって事はその気になれば怠惰に過ごしてもいいわけだろ。でも天界の人達を見てるとそういう感じには見えない」


俺だったら多分自堕落な生活を送ると思う。


「みんな何かしらやっていて、それが他の人のためになっているから善意なのかなって」


「なるほど、そういう考え方をされるのですね」


「うん、変かな?」


「いえ、大変素晴らしいと思います。後ほど館内の皆さんにも伝えます」


「え、あ、うん」


思いのほか高評価を得てしまった。


「えっと、ご主人様!私達含め天界の人達はみんなご主人様のために何かしようって気持ちがあるんです!」


「ちょっとユーミさん」


「いいよシンディ。ユーミ続けて」


「はい、ありがとうございます!この世界はご主人様がいないと存在しませんので、みんな直接でなくともご主人様の助けになればと思っているんです!」


「そうなのか?」


「はい!」


そっか、みんな何かしらやってるのは最終的には俺のためを思ってくれているわけか。


なんだろう、それこそ善意ではなかろうか。


あーいかん、いかんな。涙腺が緩む。


「ちょっとソウ?どうしました?」


「いや、すまん。嬉しくてさ」


あーダメだ。涙が止まるまでちょっと待っててもらおう。

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