下界の通貨
ん、朝か。
何か体が重いと思ったらサチが俺の上で寝てるね。
あー何となく思い出してきた。
昨日頑張りすぎてお互い力尽きた状態で寝てしまったんだっけ。
起こすのも可哀想だからしばらくこのままでいるか。
しかしこっちの世界に来て感じることは神の体の驚異的な回復力だ。
それこそ一晩寝れば体力から体調まで良好な状態に戻っている。
それに傷の回復も早い。
この前包丁で指先を軽く切ってしまったのだが、ものの数秒で完治した。
一応サチに確認したのだが、特に神力を使ってるとか言う事は無いらしい。
「あ、おはようございます」
お、サチ、起きたか。
「おはよう」
「・・・ソウは朝から元気ですね」
すまん、それは生理現象だ。
「しょうがありませんね」
いや、別にいいのに。あ、でもこれはこれでいいな。
回復した体力が減ってしまった。
今日も下界観察。
ちょっと開始時間がいつもより遅いのは気にしてはいけない。
さて、今日は下界の通貨について注目してみる。
今のところ視野範囲での通貨は共通のようで、銅貨、銀貨、金貨が主に使われている。
銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚。
銀貨一枚でパンが一個買えるぐらいで、食事処だと大体銀貨五枚から十枚ぐらいが一般的だ。
ただ、この上の貨幣が若干複雑になっている。
金貨一万枚で交換できる貨幣があるのだが、赤、青、緑といった色の違う貨幣になる。
基本的に価値はほぼ同等なのだが、場所で両替する際の取り扱いの合否が変わってくるのだ。
例えば草原の街で緑の貨幣と交換したとして、オアシスの街で金貨に両替したくても赤の貨幣しか応じてもらえないのだ。
どうして複雑化したかと言うと元の原因に勇者が関係していたらしい。
ある街で大量に稼いだ勇者は金貨の上位の貨幣に交換して次の街に行く。
次の街でその上位貨幣を両替し、上位貨幣に満たない額の金貨を持ったまま更に次の街に行く。
このような事が同じ街で何度も発生すると金貨の過不足が発生する。
それをある程度防ぐためにこのようになったようだ。
また、換金レートを設けて両替所の貨幣の量も調節しているようだ。
「でもこれだとレートを意図的に調節すれば稼げてしまうんじゃないか?」
「そうなのですが、以前それを行おうとした富豪へ義賊が襲撃に入った話が吟遊詩人によって広まり、今ではそれで多くの富を稼ごうと思う人はまずいませんね」
「なあ、まさかその義賊って」
「勇者です」
「やっぱりか。問題を作る勇者もいれば解決する勇者もいたんだな」
「そうですね」
結局勇者とて人だからな。
何が正しくて何が間違いかなんて後から見ないとわからんからな。
元は人だった俺は神として果たして正しくやれているのだろうか。
うん、不安になったら信者の感謝の祈りを読もう。
うん、うんうん。よし、頑張ろう。




