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勇者の末裔

下界の視野範囲に拡張の気配がある。


一人の若い男が馬車で草原の道を進んでいる。


以前街で注目していた商人とは知り合いで、その商人から勧められて信者になったようだ。


勿論この若い男からも願いが来ている。


知り合いの商人のように羽振りを良くして欲しいという内容だった。


そもそも俺はあの商人に何かした事はない。


全てあの商人の商才の賜物だ。


他の純粋な願いを叶えた結果、あの商人に利益をもたらした可能性はあるかもしれないが、それはもう偶然と呼べる類のものだと思う。


ただ、その偶然をありがたく感じ、信仰心に繋がってくれるのであれば、それはそれで嬉しい。


若者が草原の端、砂漠との境目辺りで馬車から降りて敵対生物と戦っている。


この男、戦えるのである。


人の集まる周囲では敵対生物も少なく、駆け出しの冒険者などが狩猟を行っているが、街間移動となるとそれなりに強い敵も出る。


普通移動や運搬の場合護衛の冒険者や傭兵を雇うのだが、この男は単身で街道を進んでいた。


一応お共がいるが、戦闘中にも関わらず樽の中で休養中のお掃除スライムなので戦力にはならないだろう。


気にして観察しているとサチが驚きの声をあげる。


「ソウ、この者勇者の武器を使っています」


「え?なにそれ」


「過去下界に降りた勇者が先の神様より賜った武器の事です」


あれか、あの爺さんが用意したチート武器か。


「しかしおかしいですね、勇者の武器はそう簡単に扱えるはずはないのですが」


「そうなの?」


「はい。基本的に神様より賜った者だけが扱うことが出来るようになっています。例外があるとするなら血縁者でしょうか」


となるとあの若い男は勇者の末裔という事になるな。


「それでも大半の勇者の武器は本人の手から離れ、ゴミになっているはずなのですが」


おいおい、仮にも神からの賜り物をゴミとか言うなよ。


「じゃああいつは珍しい例か」


「そうですね。代々受け継いだのか偶然手にしたのかはわかりませんが、勇者の武器の能力の一部を引き出しています」


「一部か。貰った本人じゃなければそうなるか」


男が敵対生物を蹴散らして汗をぬぐっている。


恐らく勇者本人であれば一瞬で勝負がついているんだろうな。


「はい。今後更に引き出される事は無いでしょう。彼からすれば扱い易いちょっといい武器ぐらいの認識だと思います」


「なるほどね。じゃあそこまで気にする必要もないか」


「そうですね。今後もこのような事があると思いますので気に留めておいてください」


「わかった」


勇者の武器か。


若者が使っているアレ、どう見ても木剣なんだけどなぁ。

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