スライムバロメータ
今日も下界を眺める。
視野が広がった事で街の周辺も見えるようになった。
集落の周辺は森が多かったのに対し、街の周囲は草原が多いようだ。
そしてその草原を冒険者らしき人とそれに付き添うようにゲル状の生き物がいる。
「スライムとかいるのか」
「スライム種ですか?ええ、下界の広範囲に分布して各環境に適応した進化を遂げていますよ」
「スライムについてもう少し詳しく教えてもらっても良いか?」
「?ええ、わかりました」
サチが一瞬なんで?という顔をしてくる。
スライムは大体の世界に存在する。
俺の前居た世界ではあんなぽよんぽよんしたのは居なかったが、アメーバとかのウィルスとかが生態的に似ていると思う。
つまりスライムはある意味その世界の基準としてみることができると俺は思っている。
「スライム種の一覧を出します」
先日のようにずらっと一覧が並ぶが文字の色が様々になっている。
「この色の違いは?」
「はい。人間種との友好度別にしてみました。赤は敵対、黄色は警戒、緑は友好、青は共存、白は不明になります」
「見易くていいな」
「ありがとうございます。そちらのパネルで選ぶと詳細が出ます」
大半は黄色か白、カースドスライムとかブラッディスライムとか物騒な名前のスライムは赤だな。
お掃除スライムって変な名前のもいるな。青文字だ。
試しにお掃除スライムの詳細を出してみる。
え?家のゴミとか埃を食べるの?共存ってそういうことか。
「現在人間種との友好度表示ですが、悪魔種との友好度表示に切り替えるとこのようになります」
おおう、さっき赤文字だったスライムが緑文字になってる。
あ、お掃除スライムは青文字のままなのね。
色々な種族に切り替えると傾向が見えてくる。
友好、敵対するスライムは好き嫌いで考えているようで多少知能があるように見える。
縄張りを持っているタイプや希少種は総じて警戒のままが多い。
青も種族に応じて変化するが、余り争いを好まないようで文字色が変わっても緑や黄色。
お掃除スライムは青で固定色化しててちょっと面白かった。
ある意味分け隔てなくあらゆる種族と共存関係を結べるというのは凄いと思う。
ただ知能が低くて好き嫌いがないだけかもしれないけど。
スライム種を見てわかった事はこの世界の生き物は環境に応じてある程度敵味方の変化があるという事。
当然と言えば当然の事ではあるが、これはいい収穫だったと思う。
何も人だけが神を信仰するわけじゃないからな。
出来るだけ柔軟な頭でいきたいところだ。




