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山住まいの技師

「今日はどうしますか?」


仕事を終えてサチがメガネを外しながら聞いて来る。


どうも仕事の時はメガネをするらしい。


何でか聞いたら前の神様がそうしろと。


ふむ、爺さんいいこと言った。


今度家でしてもらおう。


それはさておき、やっぱり食の充実をはかりたい。


「うーん、調理道具が欲しいんだが」


「調理道具ですか・・・」


「うん、道具作りとか得意な人とかいないか?」


下界にも調理道具は存在するのでサチも物は知っている。


だが実際作れる人がいるかとなると話が少し変わってくる。


どうも天使は念じることで色々やれてしまうので作るという能力が低下しているように感じる。


「うーん、居ることは居ますが・・・」


ルミナの時のように歯切れが悪い。


「何か問題でも?」


「いえ、あー・・・何とかなるでしょう。わかりました、行きましょう」


若干不安になる反応だが任せるしかないな。




降り立った先は山のある浮遊島。


山も木々が少なく岩肌が露出してて足場が悪そうだ。


「登山かー・・・」


「いえ、飛びますけど」


そうだった、飛べるんだった。


何言ってるんですか?みたいな顔をされてしまった。恥ずかしい。


サチに抱えられて山に沿って飛ぶ。


本当は俺も飛べるようになった方がいいんだろうが、今みたいな密着状態はこれはこれでいいものだ。


見た目的にはシュールかもしれないが。


山の外周を三分の一ほど回った中腹辺りに家屋が二件見えてくる。


どうやらそこに降りるようだ。


「ここは?」


戻ってきた地面の感触に安心しながら聞く。


「ここは精錬技師の家です。天界でも指折りの職人が住んでいるところですよ」


「ほうほう」


説明しながら家に近づき扉を叩く。


程なくすると扉が開かれ小柄な娘が顔を覗かせる。


「なんでしょう?」


「突然すみません。アストレウスさんはいらっしゃいますか?」


「えっとお名前伺っても?」


「主神補佐のサチナリアです」


「!?しょ、少々お待ちください!」


慌てて娘さんが中に入っていく。


家の中のドタドタと慌しい音が聞こえてくる。


しばらくしてその音が止まったと思ったら。


「あんだどー!?」


先ほどの娘さんとは違う男の声が響き渡る。


そして再びドタドタと慌しい音がして、勢い良く扉が開かれる。


「た、大変お待たせしました」


娘さんが息を切らして出てくる。


そしてその後に出てくる男性。


娘さんの倍近い身長と細長ながら見事な筋肉が見え隠れする体つき。


そして煤けた黒髪に似合わない端正な顔つき。


うーん、イケメンだ。


「それで今日は主人にどういったご用件でしょうか?」


娘さんが不安そうに、ん?今なんつった?


「お、奥様ですか?」


サチも驚いて聞き返してる。


「はい。申し送れました、私こちらのアストレウスの妻、ミリクリエと申します」


自己紹介と共に奥さんが旦那さんの手をきゅっと掴んで微笑む。


お、さっきまでこっちを睨んでた旦那さんの表情が照れて和らぐ。


「これはご丁寧に。改めまして私、主神補佐のサチナリアです。こちらは私が仕えている神様です」


「神様!?」


目の前の二人が驚く。


うん、大分慣れた。


「お、おおぉぉ!」


旦那さんが驚いた顔のまま口を開く。


「ようごぞ神様!ごんなむざっぐるすい場所までわざわざ来でぐださっでな!」


凄い速さで距離を詰められたと思ったら手を取られ両手で握手された。


「ちょ、ちょっとおまえさん、失礼だよ」


ミリクリエが慌ててアストレウスの服を引っ張ってる。


「いやー主神補佐官様がおいでなすったどおもっだら、まざが神様までおいでになるとんば!」


奥さんの制止も気にせず満面の笑みで俺の手をブンブンと振ってくる。


というか凄いなまりなんだけど。


これか?サチが渋ってた理由って。


「ちょ、ちょっと落ち着いてください」


サチまで止めに入る。


「おっどーごれは失礼したがー。ハハハハハ」


二人に気付いて手を離してくれる。


見た目に反して豪放磊落な人のようだ。


「まったく、折角黙っててって言ったのに台無しじゃないか」


ミリクリエが太もも辺りをバシバシ叩いてるが嬉しそうに笑ってて全く効いてない。


二人とも最初見た印象と全く違うな。


でも、仲良さそうなのはわかる。いい夫婦だ。


「ぞんでご用件ばなんでんす?」


「はい、実は」


「まあまあ立ち話もなんですから中へお入りくださいな」


サチが説明しようとしたところを遮りミリクリエが中に招いてくれる。


サチが困って泣きそうな表情を一瞬こちらに見せたが、俺は微笑んで中に入るよう促した。

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