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-移民補佐官-

どれぐらいぶりだろうか。


私が本来の仕事をするのは。


相方と共に指定の場所に向かう。


私達の方が先に着いたようで、連絡主である主神補佐官をいつでも迎える状態で待つ。


しばらくすると主神補佐官と移民者と思われる女性が転移してくる。


「ご無沙汰しております。この方が新たに移民してきた方です。詳細はこちらに」


「確かに受け取りました」


「それではよろしくお願いします」


そういうと主神補佐官は再び転移で戻っていった。


資料に目を通して頭に入れる。


「神竜、ですか」


「うむ。我は高貴なる神竜一族の姫ぞ」


「なるほど、よくわかりました。本日より移民の貴女がここに馴染めるよう手伝いをさせて頂きます。よろしくお願いします」


「うむ。よろしく頼むぞ」


これはなかなかやり応えのある仕事になりそうだ。


ふふふ、噂に聞く新しい神様に感謝しなければ。




素晴らしい、素晴らしいぞ。


「むぅー」


「むくれてないでちゃんと言ったとおりに続いてください」


この神竜の娘は私の長い仕事暦でも飛び抜けて厄介だ。


主神補佐官の資料にも記載してあったが、意思の疎通に非常に難がある。


原因の一つは話し方だ。


どうやら移民元ではこれで通じてたようだが、ここではそうはいかない。


もう一つは態度だ。


神竜という立場上何事も上から目線で行くというのが習慣付いてしまっている。


この二つは私達が徹底的に矯正しなければならない。


なんとやり甲斐があるのだろうか。


新しい神様、感謝します。




色々指導してきて一つ問題が出てきた。


「本来の力があれば!」


これだ。


なまじ力を持っていた事でそれに頼ってしまう発言が出て来てしまう。


実際力があったとしても使うつもりは無いのだろうが、それを知らない人からすれば恐怖になってしまう。


しかし、こういうものの矯正は同等かそれ以上の者でなければ納得してもらえない場合が多い。


「連れてきたよ」


「やっほー。お久しぶり」


「お久しぶりです。すみません、お忙しいのに」


「んーん。貴女と私の仲じゃない。気にしないで」


相方が連れて来た人物は私に柔和な笑みを浮かべる。


「それで、問題の子はその子?」


「はい」


神竜の娘は相方が連れて来た人を見るや否や震えた手で指を指す。


「な、なんでお主がここにおる!」


「なんでって言われても、私ここの住民だしー」


おぉ、さすがと言うべきか。


あの神竜の娘が激しく動揺している。


「わ、我をどうするつもりだ」


「どうもしないわよー。新しい人を紹介したいって言われて見に来ただけだもの」


「聞いてないぞ!」


「そうよー、今の神様も補佐官も知らないと思うわよ。内緒にして貰ってるから」


「何故そのような・・・」


「んー・・・。新しい気持ちでこの世界に馴染みたかったからかな。今の生活凄く好きだし」


「新しい気持ち・・・」


「そ。前は前、今は今。今の生活をくれた神様やこの二人、それにここの人達みんなに私は感謝してる」


「・・・」


「もし、貴女がここでちゃんと生活したいなら考え方を変えたほうが楽よ。これ私からの助言ね」


「・・・」


「あ、それともし何かしようものなら私が駆けつけるから、そのつもりでね」


「しししししない!絶対しない!」


「そう?それを聞いて安心したわ。今度何かお土産持ってくるから楽しみにしててねー」


話し終えるとこっちに来る。


「これでいい?」


「えぇ、助かりました。ありがとうございます」


「どういたしまして。今度うちに遊びに来てよー。色々変わったし」


「噂は私も聞いてます。こちらが落ち着いた頃に伺わせてもらいます」


「ふふ、待ってるわ」


そう言うと彼女は颯爽と帰っていった。




その後はあれこれ困難はあったが順調と言えば順調に仕事が進んだ。


口ごたえの回数が大幅に減ったからだ。


私としては若干面白みに欠けるが、相方の疲弊具合の方が心配だったのでこれでよかったと思う。


新しい神様にお目見えするのが楽しみだ。

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