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砂の島

下界を見ていると災害が発生するところを目撃する事もある。


例えば人的要因による火災や自然発生による落雷、竜巻、洪水など。


ただ、そのような災害が発生しても助けを求める願いは余り来なかった。


大体の災害は魔法で対応できていたからだ。


仮に魔法使いが近くにいない状態でも、冒険者や自警団、場合によっては住民達が協力して対処していた。


「毎度ながら思うが、下界の人達は災害に強いよなぁ」


「そうですね。普段から魔法が飛び交っている世界ですから、ちょっとやそっとじゃ動じないと思います」


そういうもんか。人の慣れってのは凄いものだ。


では何故願いも少ない災害に目を向けているかというと、災害が発生するとで若干数ではあるが信者数が増えるからだ。


さすがに分かりやすい人的災害は別として、解明されていないような自然災害の場合、特に被害が少ない場合に増える傾向が分かってきた。


下界の人達が逃げずに何かしら対策や対応をしたから被害が抑えられているだけなのだが、人の心理というのは面白いもので、こういう時に神というものを感じる。


だからといって災害の規模に対して俺が何かする事はない。


確かに人に対して害であるし、信者が増えるのは良いことだが、災害は人以外にも影響があるので迂闊に手は出さないようにしている。


人々が怪我したりする様子を見るのは辛いが、ぐっと我慢して様子を見守っている。


俺も今の世界の生活に少しずつ慣れてきてはいるが、下界の様子を見ても慣れて何も感じないようにはなりたくない。


こういうところが神の仕事の大変で難しいところだと思う。




仕事が終わり、サチが片付け中に何かぼんやり考えるのはいつもの事。


最近妙に精霊と触れ合う機会が増えている気がする。


地の精、水の精、風の精と立て続けに出会ったし。


そういえば光の精は毎日家を明るくしてくれてるんだっけ。ありがたいことだ。


あと確認されているのが火の精、氷の精、雷の精、闇の精。


あ、闇の精はよくわかってないんだっけ。


火と氷はそれぞれ暑い所、寒い所に居そうだが、雷の精は何処に居るのか見当が付かない。


「なぁ、サチ。今日の予定が無いなら暑い島か寒い島に行ってみたい」


「また突然ですね」


「精霊に会えるかなーって思って」


「あぁ、そういう事ですか」


そう言いながら片付ける手は止めずにいる。


「案内してもいいですが、精霊に会えるとは限りませんよ?そもそも最近連続して遭遇した事の方が稀な事なのですから」


「うん。わかってる」


「では暑い方でいいですか?最近視察に行ってなかったので」


「あいよ。じゃあ案内よろしく」


暑い島か。どんなところか楽しみだな。




「見るからに暑そうな島だな」


「えぇ。ですので精霊石を拾いに来る人以外は滅多に来ません」


転移で飛んだ先から更に少し抱えられた飛んだ先にこの島はあった。


明らかに今まで見てきた島とは違い、まるで砂漠のような島だ。


暑い場所でも湿気の有無で景観が変わるが、この島は乾燥している方だな。


島に近付くだけでチリチリとした熱を感じてじんわり汗が出てくる。


島に降りると暑さで全身から汗が吹き出てきた。


「あっついな」


「そうですね」


サチを見ると特に汗をかいている様子は見られない。


「・・・サチは平気そうだな」


「えぇ、念である程度遮断していますので」


「え、ずるくない?」


「ソウがここに来たいと言ったのですから、堪能してもらおうと思いまして」


また悪い笑みを浮かべてるな。


よーし、そういう事ならこの暑さに慣れてやろうじゃないか!




サチが砂に落とした石が瞬く間に砂の中に沈んでいく。


「このようにこの岩の道から外れると砂の中に吸い込まれるので気をつけてくださいね」


「お、おう」


歩きながらこの島の特徴を説明を聞いてるが、思った以上この島は危険な気がする。


この島は大部分が砂や乾燥した土で形成されており、今歩いている岩の道以外に足をつけると見せてくれた石のようにずぶずぶと沈んでしまうので気をつけなくてはいけない。


そして火の精はそうやって沈んできた中の気に入った石を精霊石にするらしい。


つまりこの島の内部には火の精霊石が多くあり、それが稀に地表に現れるのを採取して使っているという事か。


現在俺とサチは島の中央に向かって進んでいる。


この島は中央が窪んだ大きなすり鉢状の形をしており、緩やかな下り坂を歩いているので歩く分には苦労はしていない。


ただ、とにかく暑い。


心なしか中央に近付いていくにつれて次第に暑さが増していっている気がする。


「ふぅ・・・ふぅ・・・」


「大丈夫ですか?結構暑いと思うのですが」


「なんのこれしき」


サチに頼めば俺も念で暑さを軽減できるのだが、まだ頼んでいない。


別にさっきのサチの顔見て負けん気が起きたとか、前に子供達にしもべとか言われたのが気になってるからとかで意地張ってるわけではない。


これは俺なりの修行だ、うん。決して気にしてるわけではない。ないはず。実は少し気にしてる。


なんであれ神という体がどれだけ暑さに耐えられるかというのが気になっていたのもある。


サチから水も貰っているし、体内のバランスが崩れて具合が悪くなるという感じは今のところしない。


問題は暑さで体力の消耗が早く、吸い込む空気が熱いのもあってか精神的に地味にしんどくなってきている。


頑張って耐えながら更に進むと島の中央らしき窪みの底が見えてきた。


良く見ると赤い石がキラキラ光って見える。


ん?・・・赤い光がゆらゆらと揺れて・・・。


「ちょっとソウ!」


一瞬景色がぐにゃっと歪んだところでサチが慌てた様子で俺を掴んだ。


「頑張りすぎです!」


何か良く分からないが叱られてる。


ん、暑さを感じなくなった。念を使ったのか。


「これ飲んでください」


水筒を無理やり口に押し込まれ水を流し込まれる。


体に水が流れ込んでいくと次第にぼんやりした意識が覚醒してくる。


「大丈夫ですか?」


「あぁ、大丈夫だ」


「私の顔分かりますか?」


「うん、サチだろ」


「・・・大丈夫そうですね。はー・・・まったく、倒れるギリギリまで頑張るなんて無茶しすぎです」


「面目ない」


「少し休んでから行きましょう。何か冷たいもの出します」


「頼む」


アイスを出してくれたが、心配させてしまった罪悪感で味がよくわからなかった。

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