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水の精

「それは本当ですか!?」


「うん、でかい青い石があった。家にある水の精霊石を大きくした感じだから間違いないと思う」


サチに水気を飛ばしてもらいながら見てきたことを話す。


「そんなことが・・・」


驚くルシエナとフラネンティーヌ。


「珍しい事なのか?」


「え、えぇ。こんな短期間であの大きさの精霊石が作られたという話は聞いたことがありません」


二人ほどじゃないがサチにも若干の動揺が見て取れる。


「そうなのか。んー・・・これだけ水があるなら水の精とかいないのか?」


地の精とは意思疎通が出来たみたいだから水の精に聞くってのはどうだろうか。


「どうでしょうか。試しにやってみましょう」


地の精の時と同じように万能食の粒を岸辺に置く。


すると山のあちこちから水色の小さい生き物が出てきてこっちに来る。ちょっと怖い。


「ち、ちいさ、してー」


「してー」


粒の前に出てきた小さい生き物が集まる。


「これが水の精?」


「そうです。まだ子供ですね」


一体が指の大きさぐらいの小さい体、人魚のように足が魚みたいなヒレになってて、上半身の背中からは小さな羽が生えている。


下界のスライムの中に人型になれるのがいるが、それにちょっと似てる。


ルシエナが粒を取って手の中で握ると粉々に砕け、それを水の精の前に差し出すと各々小さい手で取って山の方に戻っていく。


「あがとー」


「とー」


こっちに手を振りながら帰っていく姿は可愛い。


「この子達があの精霊石を作ったのか?」


「いえ、恐らくですが」


そういうとサチは今度は多めに粒を取り出して再び岸辺に置く。


しばらくすると島全体が揺れ始めた。


「ちょ、大丈夫なのか?」


「大丈夫です」


念のためにルシエナとフラネンティーヌが前に出てくれる。頼もしい。


揺れが次第に大きくなっていくにつれて山に付いてる土や石がボロボロと崩れ落ちて青い精霊石が見えてくる。


全体の半分ほど見えたところで精霊石から巨大な魚影が飛び出して来た。


それは水に落ちるとこっちに向かって来た。やっぱりちょっと怖い。


そして粒の置いてある前でピタリと止まると勢い良く水面から飛び出て空中で静止する。


「これもらってもいいー?」


「どうぞ。ちょっと聞きたいことがあるのですがいいですか?」


「いーよー」


早速粒を手にとって口に頬張るそれは先ほどの水の精を大きくしたものだった。


体も女性を伺わせる風貌をしており、造詣も子供の精と比較にならないほど精巧なつくりをしている。


ただ粒を頬張ってもぐもぐしている様子は子供のように見える。不思議な雰囲気持ってるな。


「あの石は貴女のおうちですか?」


「そだよー」


「どうしてあそこに?」


「えっとね、きてっていわれた、なんとなく」


「あの小さい水の精は貴女の子ですか?」


「そー」


「なるほど。あの水柱を止めることはできますか?」


「むりー。あれたのしー」


「うーん。では飛んでる人に向けない事はできますか?」


「それならいいよー」


「そうですか。ありがとうございます」


「もういってもいい?」


「はい、残りも持っていってください」


「おー。ありありー。またねー」


サチと会話を終えた水の精は粒を持って精霊石に帰っていった。


「ふう、色々教えてもらえました」


「お疲れ様。水の精は普通に会話できるんだな」


「えぇ、難しい言語は理解できないようですが、可能です」


「へー」


「あの、サチナリア様、あれはもしかして水の精の母ですか?」


「えぇ、そのようです。私も内心驚きました」


「精霊にも母親がいるのか」


確か光の精は分裂して増えるとかだった気がするけど。精霊の種類によって違うのかな。


「厳密には違うのですが、私達も詳しい事は良く分かっていないのです」


「へー」


「今回の事は精霊の新たな発見なんですよ、ソウ」


「え、そうなの?」


「はい。今先ほどの会話の情報をまとめていますので少し待ってください」


「うん」


少し興奮気味のサチが情報整理している間も露出した精霊石から水柱が上がっていた。




頻繁に精霊石から水柱が上がるので、俺達は近くの浮遊島に戻ってきた。


「では水の精について分かった事など含めて説明します」


「うん、よろしく」


「お願いします」


適当な岩に座って青空教室のような感じでサチの話を聞く。


水の精はどうやら新たに島ができた時に直感でやってきてあの山を精霊石にしたようだ。


あの大きさの精霊は滅多に見ることは出来ず、大変貴重な存在らしい。


そして今回新たに分かった事は、水の精は精霊石の中で増えるという事。


今までどうやって精霊が増えていたのか不明だった部分が少し解明されたようだ。


「しかしどうしてあの島を選んだのでしょうか。特に目立った特長は無いはずですが」


フラネンティーヌが質問を投げかける。


「いつもと違う事といえば初めてソウに設定してもらったぐらいですか」


「ソウ様直々の島なのですか!?」


「あぁうん、一応設定したのは俺だけど」


「それなら精霊が気に入ってもおかしくないですね!」


ルシエナがまた勝手に自己完結してる。


でも違う事と言えばそのぐらいだしなぁ。


何か変な設定入れたっけ?そんなはずは・・・。


「あ・・・」


「どうしました?」


「なぁ、承認するとき何か思いながら承認するとそれが反映されたりする?」


「どうでしょうか。ちなみに何を思って承認したのですか?」


「いやぁ、そういえばあの時精霊の話してただろ。それで精霊に好かれるような島になればいいなって思ってた」


「あー・・・ならば水の精の行動もおかしくは無くなるかもしれませんね」


「やっぱりか。すまん、今回の事は俺が原因のようだ」


「いえいえ!謝る必要はありません!おかげで水の精の新たな生態がわかったのですから!」


「そうですよ!」


「そうですね、今回の事が本当ならば今後新たに浮遊島を召喚する際、更に細かな指定が出来るかもしれませんね」


サチが浮遊島の設定パネルを見ながら何やら考えている。


「どういうこと?」


「今までは大きさや個数、寒暖有無などに留まってましたが、植物の方向性など召喚後の事もある程度決められるようになるかもしれません」


「ほー。つまり俺がこうなればいいなって思うと反映される感じか」


「えぇ、今回の仮説が正しければそうなると思います」


おぉ。こりゃ更に浮遊島作りが楽しくなりそうだな。




その後この島の扱いについて相談してから警備隊の二人は通常の仕事に戻っていった。


「さて、サチ」


「なんですか?」


「折角だから泳いで行こう。練習兼ねて」


「え?」


「さっき泳いでみたけどなかなか気持ちよかったからな」


「え、でも・・・」


「ま、サチが嫌なら少し岸で待っててくれ。俺はもう少し泳ぎたい」


「う・・・わ、わかりました。今回遅れを取った事もあります。ソウ、教授をお願いします」


「おう、任せてくれ」


こうして俺とサチは再び水の浮遊島に渡り、しばらくの間泳ぐ事にした。


泳いでる最中、水の精の子供達が出てきてあれこれ教えてくれた。


おかげでサチも泳ぎが大分上達したような気がする。

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