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親子の成長

「ソウ様、ご無沙汰しております」


「うん、久しぶり」


ビシッと背筋を正して挨拶するルシエナに挨拶を返す。


そしてその横にいる知らない女性がこちらに深々とお辞儀をしてくる。


「ソウ様、お初にお目に掛かります。この度は大変ご迷惑をおかけしました」


この人がアンの母親か。


なんとなくアンと似ている部分があるな。


「お母さん・・・」


「アン!貴女!」


アンは俺の後ろに少し怯えたように隠れる。


それを見て直前までのしおらしい女性から一気に母親に変わる。


「まあまあ、落ち着いて。アン、ちょっとお母さんと話してきてもいいか?」


「う、うん」


「サチ、頼む」


「はい」


サチにアンを任せ、アンの母親だけを連れて見えないところまで行く。


「ソウ様、本当にこの度はご迷惑を」


「うん、それはいいよ。それよりアンの事だが」


「はい。それはもちろん帰ったら厳しく言いつけますので」


「それはダメだ」


声のトーンを少し落として言う。


「どういう事ですか?」


「子供というのは日々成長するものだ。大人が思っている以上に早い。それなのに大人がそれについていけないでどうする」


「そんな事は」


「そうかな?貴女がアンに対して今まで通りの接し方をしていれば再びアンは家出するだろう」


「・・・」


「ま、アンが次また家出をしたら間違いなくうちに来るだろうな。それを止めたいのであれば親も成長しないと」


そこそこな期間下界を観察していて気付いた事だが、良い親というのは子供と共に成長して行っている人が多い。


アンを見れば悪い育て方をしているわけではないのは分かる。


ただ、どう親として変わればいいのかが分からないだけなんだろう。


「急に変われというのは難しいかもしれないが、自分の娘ではなく一人の人として接してみてはくれないだろうか」


「娘ではなく人として、ですか」


「あぁ。子供というのは背伸びしたくなる時期があるもんだ。それを上から抑え付けたら伸びるものも伸びなくなってしまうぞ」


「そうかもしれませんね。少し考えて見ます」


「そうしてくれると嬉しい。それにアンはいい子だよ。ちゃんと親の貴女を好きっていえる子だ。そこは自信を持っていい」


「っ!!」


最後に俺が思った事をそのまま伝えると母親は息を呑むように口を押さえ、深々と礼をしてきた。


後はこの人次第だな。


はぁ、神という立場というのを利用して偉そうな事を言ってしまった気がする。


しょうがない、言ってしまった手前そのうち様子でも見に行かせてもらおうかな。




戻るとアンがサチの手を掴んで左右にブンブンと振っている。


アンの機嫌もすっかり良くなったようだな。


「待たせたね」


「ねえねえ、ソウ様、また遊びに来てもいい?」


それを聞いて何か言おうとする母親を手で制止して答える。


「いいぞ。ただ来るならちゃんと前もって連絡してからな」


「うん。わかった!」


後ろ盾が出来て安心したからなのか母親の元に戻っていく。


「それではソウ様、お世話になりました」


「またねー」


しっかりと手を繋いで飛んでいく二人を見送った後、連れてきたルシエナに声をかける。


「ルシエナもご苦労様」


「いえいえ、これも警備隊の仕事ですから。それよりありがとうございました。おかげで一人の子供を助ける事ができました」


「礼を言うならサチに言ってくれ。最初に見つけたのはサチだから」


「そうでしたか。サチナリア様ありがとうございました」


「いえ、大した事はしていません」


深く礼をされ、少し照れてるサチが可愛い。


「それでも感謝しております。では、私もこれで失礼します」


「あぁ、気をつけてな」


「ありがとうございます。では!」


バサっと羽を広げると颯爽と飛び去っていくルシエナを見送る。


ふぅ、これで一件落着かな。




一つ気になった事があった。


「そういえばアンはなんでサチを知ってたんだ?」


「あの、ソウ、忘れているかもしれませんが、私これでも主神補佐官ですよ?」


久しぶりにサチの訝しげな視線を向けられた。


「うん、知ってる」


「自分で言うのも何ですが、主神補佐官と言えば上位天使の中でもかなり上位に入るのですからね」


「うん、わかってるわかってる」


「そうなれば子供の教材にも顔や名前が載ります」


「え?そうなの?」


これはさすがに初耳だった。


「そうなのです。だからアンが私を知っていてもおかしくありませんし、初対面の方でも私の事を一方的に知っていてもおかしくはないのですよ」


「そうだったのか。サチは有名人だったのか」


「有名人といわれると途端に尊厳が失われる気がするのですが」


肩の力が抜けたようにがっくりしている。


「じゃあ今日の事で更にサチの名を上げたわけだな」


「そうなるのでしょうか」


「なろうがなるまいが良い事したのは間違いないだろ。そこは俺が保障する」


「ありがとう、ございます」


照れてる照れてる。


「で、ご褒美はなにがいい?」


「え?どういうことですか?」


「いいことしたんだから、ほら、今ならリクエスト聞くぞ」


「えっと・・・じゃあ頭撫でてください」


予想外のリクエストだったが仕事終わりの時と同じように優しく撫でてやる。


「こんなんでいいのか?なんでまた」


「先ほどして貰ったのが予想以上に良かったので」


「そ、そうか」


はっきりそう言われてしまったら満足するまでやるしかないな。


その後結構な時間撫でる事になった。




余談。


撫ですぎたからなのか何なのか今晩のサチは妙に積極的だった気がする。


気のせいかなぁ。

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