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揚げ物

特に予定の無い日は何もする事が無くて暇になってしまう。


そうなるとサチと何かするか、もはや趣味と化してる料理をするかになる。


うーん、もう少し暇つぶしを考えた方がいいのかもしれないな。


ひとまず今日は料理をする。


アストからまた新しい調理器具が届いたのでそれの試用も兼ねてだ。


届いたものの中で嬉しかったものがピーラーだ。


作ってもらったのは見慣れた手のひらサイズのとその数倍大きいものの二つ。


何故このような大きなものが必要になるかというと、今日の食材の一つである自分の頭と同じぐらいの大きさのジャガイモ。こいつのためだ。


以前包丁で皮むきをしてみたが、二度とやりたくないと思えるほど大変だった。


大きいので一度剥いてしまえばしばらくの間は作り置きしておけるが、この前使った付け合せで最後だったのでまた新たにやらなくてはならなくなっていた。


そんな時にこのピーラーの登場は非常に助かる。


ピーラーを当てて引くとズバッと皮が剥ける。


「お、おう・・・」


「どうしました?」


フライパンに油を絞ってもらっているサチがこっちの様子を気にしてくる。


「いや、ちょっと怖いなと」


確かにピーラーの切れ味は凄い。


正直凄すぎて怖い。


手のひらサイズのものならまだしも、この大きさだとジャガイモが不安定で滑った時に事故が起きそうで怖い。


ジャガイモを何かで固定した方がいいな。どうするか。


ちょっと念でどうにかできないか確認してみる。


・・・うん、いけるね。


「サチ、ちょっと頼みたいんだが、これを下から刺すように氷の柱を出してくれないか?」


「わかりました」


「こんな感じ」


手ごろな作物の実を串で刺してイメージし易いようにしてみせる。


「了解です。少し離れていてください」


俺が少し離れたのを確認するとジャガイモの周りに冷気が集まって氷の柱にジャガイモが突き上げられる。


「お、いいね。あんがと」


「はい。ところでいつもより多く油を絞ってますがいいのですか?」


「あぁ、うん、今日はちょっと多く使うから」


「へー、それは楽しみですね」


「うん。期待しててくれ」


さて、それじゃ固定したジャガイモを剥くか。これなら安全にやれそうだ。




フライパンに結構な量の油が入った状態でコンロに火を入れて熱する。


「何をするのですか?」


気になるようでサチが横に来てフライパンの中を覗き込む。


「熱いから離れてた方がいいぞ」


「そうなんですか?」


あのな、なんで俺を盾にしながら覗き込むんだよ。いいけどさ。


程よく油が温まったところで細切りにしたジャガイモを入れる。


ジュワーっといい音がして泡が出る。


興味があるのかサチが身を乗り出してその様子を覗き込んでる。


「熱っ!?」


サチがあわてて飛び退く。だから言っただろうに。


「大丈夫か?」


「あ、はい、大丈夫です」


飛んだのは手の甲か。顔じゃなくてよかった。


よしよし、いい色に揚がってきたな。


「あの、ソウは熱くないのですか?」


「ん?熱いよ」


さっきからはねた油が手に飛んで熱い。


「大丈夫なのですか?」


「慣れたから平気」


油ははねるものと頭の中で認識していれば多少はねても平気になる。


たまに大粒がはねたときはさすがに辛いが。


「はー、凄いですね。私はちょっと・・・」


怖いか。無理もない。


「揚げ物は油がはねるからな。他の調理法と比べるとちょっと難易度が高いかもしれないな」


きつね色になったジャガイモを油を切って皿に置き、塩を軽く振りかける。


「ほれ。揚げ物は難易度が高い分揚げたては美味いぞ」


皿ごとサチに渡して次のジャガイモを投入する。


俺も揚げ芋が食べたいので今回のジャガイモは全部揚げるつもりだ。


「ソウ、あの・・・」


揚げていると背中を指でつつかれる。


「ん?」


振り向くと空になった皿をこちらに差し出された。


「その、おかわりください」


・・・お気に召したようでなによりだ。




今日の夕飯は揚げ物尽くしになった。


ジャガイモ、かぼちゃ、なすの素揚げ。


小麦粉をまぶした鶏の実を揚げたもの。


そしてサツマイモをはじめとした天ぷら。


どれも塩やふりかけで食べられる具材にした。


天つゆが作れればもっと色々なものが揚げられるのだが、まだ作れないからなぁ。


味はどれもいい出来。


サチがニコニコしながらあれこれ頬張ってるのを見ると安心する。


「揚げ物、うーん・・・」


一通り平らげた後に空になった皿を眺めながら悩んでいる。


「どうした?」


「いえ、将来的に私も作れた方がいいのかと思案していました」


「怖いなら無理して作らなくてもいいと思うが、一応今度アストに揚げ物用の鍋を作ってもらうよう頼んでみようとは思ってる」


「揚げ物用があるのですか?」


俺の知っている揚げ物用の鍋は口が少し狭まっている形状で、はねる範囲が狭くなっているものだ。


「うん。はね難くなってる。それでもはねるけど」


「う・・・」


一度油で火傷をしてしまうとしばらくの間恐怖になるからな。


「無理なら俺が作るからいいぞ?」


「・・・いずれは料理教室でこの揚げる調理法も教えるのですよね?」


「うん、そのつもりだが」


そう答えるとサチの目に火が宿る。


「わかりました、出来るようになります。ルミナテースに遅れは取りません」


確かにルミナならはねる油なんて気にしなさそうだな。


下手すりゃ油に手突っ込みそうでそれはそれで心配だが。


「教えるのは当分先だから、順を追ってやっていこうな」


「はい、がんばります」


この様子だと近々リクエストがありそうだ。


次は何を揚げるか考えておいた方がよさそうだな。

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