1.アラサーの結婚式事情
初めての投稿です。読んで頂けたら嬉しいです。宜しくお願いします。
土曜日の夕方の地下鉄はさほど混んではいない。
私は目的の駅まで開くことのないドアに寄りかかりながら、ボーっと真っ暗なトンネルに等間隔に設置されたライトの微かな光を目で追っていた。
今の私の格好は、編み込みアップの髪型にシンプルなネイビーのドレス。首にはピアスとお揃いの存在感のあるビジューのネックレスがチープな輝きを放っている。手には有名ホテルのロゴが入った紙袋。
誰がどう見ても結婚式帰りとわかるような出で立ちだ。
シューズクローゼットの奥から引っ張り出してきた、華奢なヒールのパンプスの所為でさっきから足先が痛い。足を出し入れしたり指を握ったりして痛みを紛らわしてみる。
もうこの歳になると、結婚式は慣れたもので、時間とお金をかけずに適当に見える術を身につけている。もちろん、大人として服装のタブーや礼儀はきちんと配慮したという意味での適当ね。
二十代前半の頃は、友人の結婚式は出会いの場だ! なんて戯言を鵜呑みにして、気合いをいれて美容室で髪を盛りメイクやネイルも隙なく完璧にして出陣していた。
でも、数回経験すると気付いてしまう。
あぁ、結婚式に良い出会いなんてないんだ……。と、
タイトなスケジュールで進行していく式や披露宴。卓ごとにコミュニティが形成されて出歩く必要がない席。新郎新婦の友人の席は遠く離れている。この状況でどうやって異性と出会えるというのか。
最近では二次会をしないカップルも増えているので、一目惚れぐらいしか機会はないと思う。
だから、私にとって結婚式はご祝儀を出して、幸せそうな友人を見ながらコース料理を食べる行事になってしまっている。引き出物のお土産付きで。
そもそも親しい友人が少ない私が出席する結婚式は、高校や大学を卒業以来、連絡をとることもなく別の結婚式で数回しか会っていないような疎遠な友人の結婚式が多い。
招待してくれるのは嬉しいが、そんな友人の幸せを心から祝うことができる人なんているのだろうか……? 難しいと思うのよね。
いや、私だって友人の結婚は嬉しいし、演出に感動もする。新婦の両親への感謝の手紙は毎回ハンカチが必須な程だ!
でもそれは場の雰囲気も加味されたものなわけで……。
帰路に付く時には現実に引き戻されてる。私の貴重な休みが半日なくなったなー。疲れたなー。なんて思いながら。
ふうと吐息を漏らした所で景色が変わり、自宅の最寄駅に到着した。
なんか私、ブルー入ってます。