表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TOHO FANTASY Ⅰ  作者: PHIOW BJIJ LHJIJ LJIJ
東方近未来 ~Aliquando mundi~ -いつかの世界- 
5/40

5章 少女

警察はクルルァに乗るのがほんと好き


今回は仲間が1人増えます。やったねたえちゃん!


パッチェ冷えてますよ!

「今私たちは何処へ向かうべきなのよ!?」


霊夢はバイクを高速で運転しながら後方の仲間に聞いた。

メーターは既に120を示しており、彼女の疾走を多くの街の人々が目撃する。

そんな彼女を執拗に追いかけるのは―――マスコミであった。

情報を届けるため、ヘリコプターを巧みに操ってバイクを追いかける。


「今現在、B区域に突入しました!」


ヘリコプターの中から身を半分出した女性リポーターは説明していた。

B区に突入すると、周りのビル街が商業施設に変わり、店員や客が猛スピードで疾走する彼女を話しのネタにしていた。


「・・・B区を超えた先に街を離れて農村に行きます!ひとまずはそこへ向かいましょう!

・・・そこの人たちはいつも奴隷反対デモをやっていたので、きっと助けてくれるはずです!」


仲間はそう彼女にアドバイスをすると、霊夢は「OK!」と風の音と共に叫んだ。


バイクはそのまま疾走し、信号も無視して、車との接触を避けながら進んでいく。

が、次の交差点はパトカーで塞がれていたのだ。

パトカーが彼女の運転するバイクの進路を拒んでいる。中に乗っている警察官たちは万事OKであった。


「・・・ぶ、ブレーキをかけてくださいっ!」


仲間はそう焦って霊夢に伝えるが、霊夢はそのまま斜め右に直進し、商業施設の立体駐車場に突入する。

警察たちもこの行動は予測しておらず、何人かの白バイが彼女を追いかける。


「い、今!商業施設の駐車場に入っていきました!」


カメラは駐車場に入ったバイクの姿を捉えられなかった。


霊夢は料金所のバーをそのまま突っ込んで壊し、上へ、上へと上がっていく。


「ど、どうするつもりですか!?」


仲間は訳の分からない行動をとる霊夢に対して聞くが、彼女には危ない作戦があった。


「・・・しっかりと掴まっておきなさいよ!」


仲間にそう忠告した彼女は立体駐車場の屋上、5Fに到着する。


「え!?」

「だから言ったじゃない!行くわよ!」


後ろから追いかけてくる警察をよそにバイクは―――屋上から舞う。


タイヤの空回りの音が空中で響き渡る。


霊夢たちは飛んだ影響でそのままパトカーの壁を乗り越え、振動が大きながらも着地する。

バイクは何度かバウンドしたが、そのまま道路を走っていく。


駐車場まで追いかけてきた警察たちは霊夢たちの咄嗟の行動に手も足も出なかった。

そのまま5Fから飛ぶが不時着し、下にいたパトカーと衝突、炎が舞い上がった。


「・・・臨機応変、よ」


霊夢はそう仲間に言うと、落ちたスピードを上げるためにスロットルを握る。


「・・・この先、よね?」

「はい、この先です!」


仲間の指示通り、彼女たちは警察を潜り抜けた。


             δ


「・・・只今、郊外の農村地帯へ突入しました!」


病院内のテレビは農村部へと逃走する霊夢たちをしっかりと映していた。

パチュリーとにとり、そして社長は霊夢との戦いで怪我をし、入院した神子のお見舞いに来ていた。


「・・・み、皆さん・・・、来て下さったんですね・・・」


神子は来てくれた3人に礼を述べた。


「・・・あなたが手古摺るのは仕方ないわ、彼女は博麗の巫女よ。

・・・幻想郷でトップの力を誇っていると言われるぐらいだもの、伊達じゃないわ」

「・・・まあ安心しろ、足の骨折と全身火傷は時期に治る。ここの技術も大幅に進化したものでな。

だからそれまでは安心してゆっくりしていな。

・・・後は私たちがアイツを何とかする」


にとりは神子に頼りがいのある言葉を投げると、神子はその言葉に甘える。


「あ、ありがとうございます・・・」


「・・・それにしても―――神子、お前も哀れなものだぜ」


社長は神子の傷ついた体を見乍ら、残念そうに呟いた。


「・・・これでPDM担当課は暫く1人減ってしまったようなものだぜ。

・・・だからパチュリー、1人で頼む」


「・・・はい、分かりました。社長」


パチュリーは社長に頭を下げる。


「・・・流石、立派なPYTの社員だ。・・・そう言えばにとり、研究は進んでいるのか?」

「今現在、GENESIS細胞を1人の奴隷に移植させ、その事を教えずに密室で様子を見ています」

「・・・そうか、分かったぜ。

・・・後は神子がいない間、しっかりとGENESISの管理を頼むぜ」

「その件についてはご安心下さい」


にとりは社長に頭を下げ乍ら了承する。


「・・・結構自信満々なんだな」

「はい。今現在、4台のGENESISの前にはPYT兵を1人ずつ派遣しています」

「PYT兵?またお前の新作か?」

「はい。PYT兵は幻想郷から連れてきた奴隷を4人選出して選ばれたものです。

それぞれにPDMの力を返還させた上でPDMに彼女たちの記憶を消す「erasure.exe」を入れたことで役目を果たす兵士になりました」

「・・・そうか、なら安心だぜ」


社長は満足そうな表情を浮かべる。


すると体を横になっていた神子が口を開いた。


「・・・私がいなくて申し訳ないのですが・・・―――社長。

首相と会談して、PDMの生産費を補う補助金を貰って欲しいのです」


神子はそう頼むと、社長は頷いた。


「任せるんだぜ。首相は董子だ、お互いが握手をするのは目に見えている」


社長は帽子の被り具合を調整した。


「・・・お願いします」


神子はそう別れを告げると、3人もそのまま別れを告げて病室を出て行った。


               δ


森の中を搔い潜り、バイクで疾走する霊夢たちは田舎の田園風景の中を通り、デモで有名な農村に到着する。

仲間が彼女に止めるよう告げると、霊夢はブレーキをかけて停車する。

砂利道に2人は降り経つと、農村特有の新鮮な空気が鼻から伝わる。

追いかけてきたヘリコプターは既に2人を見失っており、ヘリのプロペラ音は聞こえなかった。。


ぽちぽちと建っている一軒家。

流石に合掌造りというわけではないが、家と合わせて畑や水田、ビニールハウスがあった。


「・・・ここが噂の・・・」


霊夢が呟くと、近くのビニールハウスの中で作業をしていた1人の老婆がそんな2人に気づき、記憶と照らし合わせた。

そして、中継で映っていた巫女と姿が一致した。


「き、来たのかい遂に!」


老婆はすぐにそんな2人を歓迎した。


「あなたたちが・・・最近テレビに映ってる・・・奴隷反対派の人かい!?」


老婆はそう彼女たちに問うと、頷いた。


「・・・そうかいそうかい、なら全員を集めなきゃのう!爺さんや!爺さんや!」


老婆はすぐに家へと戻っていった。


「・・・この世界にも奴隷反対派の人間は存在するのね」

「都会部の人間は賛成派が大多数ですが、急な発展に少し抵抗を持った農村部の方々は私たちを助けようとしてくれるんです」


仲間はそう言うと、さっきの老婆が手招きしていた。


                 δ


老婆は農村に住む近所の人たちを集会所に集め、今ここにやってきた「有名人」を紹介する。


「・・・ほほう・・・この方が・・・」

「あの警察から逃げてこれたとは・・・相当な力の持ち主じゃ・・・」


全員はテレビの中で観た2人が目の前にいることを信じられなかった。

―――自分たちには到底出来ない、「国家を敵に回す」行為を彼女は平気で成し遂げているのだ。

それが犯罪なのか・・・。・・・国家の法律なら犯罪かもしれないが、幻想郷に法律などない。

彼女に法律のことなど頭にないのだ。


「・・・助けてくれたことは感謝するわ。・・・ありがとう」

「はい・・・ありがとうございます!」


2人は自分たちを匿ってくれた農民たちに感謝する。


「・・・いいえ・・・そんな気にせんでもええ。ゆっくりしていきなさい。

・・・そういや私たちが以前にお金を集めて、奴隷を助ける為に1人連れてきたのじゃが・・・その子とも気が合うかもしれないのう」


老婆はそう霊夢に語ると、霊夢は過敏に反応する。


「え!?・・・待って、今何処にいるかしら!?」

「・・・そ、そうだったな・・・。・・・ならわしが呼んでこようか?」


老爺はそんな彼女の期待に応えて、集会所から出ていった。


「引き取った時はもの凄い暴行をくらっていたのう・・・。

・・・顔は痣だらけじゃった・・・。・・・都会の人間たちはこんなことを平気でやりおるかのう。

・・・仕方ないのう、あの子は誰とも口を利けなかった・・・」


老婆は悲しそうな表情で話した。


「・・・すみません、暫く私もここにいていいでしょうか?」


仲間がそう聞くと、全員は頷いた。


「当たり前じゃ。その姿だとお疲れさんじゃろう」

「ゆっくり休んでいくとええ」


全員は仲間を歓迎した。霊夢はそんな仲間を見て言った。


「・・・あんたも疲れたのね。・・・まぁ普通の人間にしてはよく頑張った方よ。・・・ありがとう」

「いいえ、どういたしまして。・・・というよりも、私の方が足を引っ張っていましたけど」


すると老爺は1人の少女の右手を握って連れてきた。

痣は治っていたが、その跡が少しだけ残っている。


「・・・れ、霊夢」


少女は小さな声で呟いた。・・・口を利いたのだ。

それは信頼と希望が今までの中で最高に達し、眼の中に先の見える夢を込めて呟いた言葉であった。


「・・・フラン」


霊夢もそんな少女を見据えて言った。


「・・・霊夢・・・怖かったよう・・・」


フランはすぐに霊夢に抱きついた。奴隷としての恐怖感が和らぎ、甘えられたのだ。


「・・・あんたも怖かったのね・・・。・・・いいわ、私の膝元で泣いても」


霊夢は甘えて泣いている少女の頭を優しく撫でる。


「・・・知り合いかのう?」

「・・・かつて同じ世界で暮らしていた仲間よ。・・・それにしても」


霊夢は気になった。


「・・・あんた、その傷・・・誰から受けたのよ?」


フランは鼻水の音を響かせながら、再び小さな声で答えた。


「・・・パチュリー」


少女は怖かった。今まで一緒に暮らしていた仲間に殴られ蹴られ、どうして自分がこんな目に会わなければいけなかったのか。


「・・・アイツね・・・!・・・パチュリー・・・!」


彼女はPYT研究所で働く魔法使いに怒りと憎悪を覚えた。

人はそこまで恨みを持てるのだろうか、彼女は初めてそんな感情を持った。


「・・・奴隷はこんな目に遭わされてしまうんです・・・。・・・奴らは最低です」


仲間も霊夢同様、PYT研究所に恨みを持っていた。


すると集会所に遅れて白衣を纏った、髪がぼうぼうな姿の人がやってきた。


「・・・遅かったのう」

「・・・そうだ、あんた。・・・この人を知ってるじゃろう?」


その人は霊夢の姿とテレビの中の彼女を一致させた。


「・・・あんたは誰よ?」

「・・・私はかつてPYT研究所でGENESISの研究と制作に携わったが人員調整でクビにされた哀れな研究者ですよ・・・」


絶望を込めた声で言ったが、彼女は「GENESIS」という言葉に興味を持った。


「・・・あんた、GENESIS作成者!?」

「携わった。それだけですよ。・・・あなたの知りたいことはあれだろう?GENESISの場所だろう?」

「―――大正解よ」


かつての研究者は予想を的中する。


「GENESISって何・・・?・・・フラン、何にも分からないよ・・・グスン」


フランは涙腺の跡を顔に描きながら、霊夢に問う。


「・・・あんたたちの力を回収している機械よ。・・・それを壊せばあんたたちに力が戻ってくる」

「・・・本当!?」

「本当よ。・・・ただ全部で5個ある上に、最後に中央のGENESISを破壊しないといけないみたいね。

・・・めんどくさいシステムでしょ」


彼女はぶっきらぼうに言うと、かつての研究者は語りだした。


「・・・そうだな、私が携わったGENESISでも語るとしよう。

・・・そのGENESISは「GENESIS:IDOLA」・・・。・・・場所はC区駅の地下だ。

・・・C区駅はとてつもなく大きいが、その最深部・・・一般客は勿論、従業員も立ち入れない場所にある。

・・・ちょっと待ってな」


かつての研究者は集会所のPCを起動させ、C区駅のフロアマップを印刷する。

そして持っていた赤ペンで記入を加えると、彼女に渡す。


「・・・この赤ペンで示された場所がGENESIS:IDOLAのある場所だ。

・・・あとこれを」


かつての研究者はハンドガンを彼女に渡した。


「・・・銃ね、感謝するわ」

「・・・俺はあの会社に裏切られた。・・・頼む、俺の仇をとってくれ」


そう言うと、周りの農民たちも頭を下げる。


「そうじゃ・・・!・・・あの残虐非道な人間たちを・・・やっつけてくれ・・・!」


その答えは―――YES。


彼女は頷くと、かつての研究者から貰ったフロアマップと拳銃を懐に入れ、集会所を後にしようとする。


「・・・もういいのかい?」

「・・・私はいいわ。善は急げ、悪い奴の退治はもっと急げ、よ」

「・・・今までありがとうございました!」


仲間はそう言うと、霊夢は近くに止めてあるバイクに跨ろうとした。


―――その時。


「待ってよ!」


少女は大声で彼女を制止した。


「私も・・・私も行く!みんなを助けに行く!

・・・お姉さまも、咲夜も、こあも、美鈴も・・・全員を助けたい!」


フランはそう訴えると、霊夢は頷いた。それは少女にとって意外な答えであった。


「当たり前じゃない。・・・早く助けに行くわよ。・・・少し道順は難しいけどね」


「・・・うん!」


フランも彼女の後ろに跨ると、霊夢から拳銃を渡される。


「今のあんたは力を吸収されて無いのよ。・・・だからこれで攻撃するのよ」

「・・・霊夢、ありがとう」


お姉さん的存在になっていた霊夢は農民たちと研究者の見送りを受けて、そのままバイクを走らせる。


「・・・ちょっと待ちなさい」


老婆は2人に着替えを渡す。


「これで分からないじゃろう。・・・これを着てから行きなさい」

「・・・何から何まで、感謝するわ」


霊夢は感謝がしきれなかった。


・・・全ては奴隷の全員の為に、彼女は国と戦うのだ。

・・・そう考えると、彼女は自分に仲間がいて嬉しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ