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TOHO FANTASY Ⅰ  作者: PHIOW BJIJ LHJIJ LJIJ
ACC 東方近未来 -The cruel Nativity TOHO FANTASY ⅠAnthology Complete Edition-
33/40

[Aix Trine=11 あの日…]

穏やかな、春麗らかな日の時であったのであろうか。

花畑の中で、親友の大妖精と共に花を摘んでは花の冠を作って遊んでいた英雄―――いや、氷精の姿があった。

頬を温かな色に染めて、笑顔で大妖精と冠を交換したのだ。


「えへへ・・・大ちゃんの輪っかはやっぱり上手だな~」


「そ、そんなこと無いよ!それよりもチルノちゃんの輪っかも上手だよ!」


「そ、そう・・・?」


お互いに交換し合った輪っかを被り、蝶が舞う中笑顔で花を摘み合った2人。

綺麗な空と共に描かれた2人の表情は、お互いが嬉しそうにしていた。


「可愛いよ、チルノちゃん!」


「そ、そんなこと言わないでよ大ちゃん・・・照れちゃうよ・・・」


真っ赤な頬が、彼女の恥ずかしさをしっかりと示唆していた。

綺麗な翡翠のような眼で、少し嬉しそうに大妖精を見乍ら。


「あ、あんたたちここで遊んでたのね」


そこへやって来たのは、博麗の巫女であった。

花畑の真ん中で遊ぶ2人に惹きつけられ、好奇心でやってきたのだ。


「あ、霊夢さん。こんにちは」


「今あたいたちね、お花で輪っかを作って遊んでるの!」


「それは良かったわね。あんたたちにその輪っかは―――お似合いね」


霊夢もまた、そんな2人を褒めたのだ。

そんな巫女に「そ、そうかな?」と2人は照れていた。

そして笑顔で約束しあったのだ。花畑の真ん中で―――


「また遊ぼうね!大ちゃん!」


「うん!チルノちゃんもね!私、この輪っか、ずっと大事に持ってるよ!」


―――私、この輪っか、ずっと大事に持ってるよ!


・・・そんな過去が全て世界が作り上げた幻で出来ていたのであれば――

―――残酷極まりないことであった。

コンコルディアが話すように、もしチルノが幻影なのならば・・・あの思い出は・・・偽りであるのだから。


GENESISであるパチュリーと対峙していた霊夢は、ふとそんな懐かしい出来事を脳裏に浮かべていた。

あの春麗らかな日々は―――もう帰ってこない。それは分かっていた。

悲しくとも―――それが運命であったから。


「・・・来たか。我らが宿敵―――『博麗霊夢』」


「あんたたちを止めるわ。・・・この世界を好きにはさせない為にも、ね」


霊夢はすぐにお祓い棒を右手でしっかりと握った。

そんな彼女にショットガンの銃口を向け、余裕を醸していたパチュリー。


「我々を妨げるのならば―――許してはおけない」


「それはこっちの台詞よ!」


「我々は希望を与える存在・・・。・・・何故希望を拒絶する?」


「それはあんたたちが未来しか考えていないからよ・・・!

・・・悪いけど、私たちは今を生きてるのよ!邪魔して貰っては困るのは・・・こっちなのよ!」


「・・・そんな鑿みたいなどうでもいい生を生きて楽しいか?」


「あんたには分からないわ・・・!・・・あんたがどうでもいい存在だからよ!」


「・・・黙れ」


                δ


パチュリーはすぐさまショットガンの引き金を引いた。

誰もいなくなった新地獄で響き渡る銃声。

身を華麗に動かしてかわした巫女は銃の雨の中を搔い潜り、パチュリーに殴りかかった、が彼女はショットガンを剣代わりに受け止めていた。


「我々がどうでもいい存在?・・・ふざけた事を言うものだな。

・・・我々は執行人、この世界に於いて有益なる存在」


「世界はそう思っていようとも、私は邪魔としか思わないわ」


霊夢はすぐさまカードを構えたが、そのカードは一発の銃声と共に木っ端微塵になった。

哀れ無常にも吹き飛んでいったカード。その出来事は、僅か数秒の出来事であった。


「・・・か、カードが・・・!」


夢想封印が刻まれたスペルカードは―――一瞬で微塵となり、地獄を舞った。


「・・・私にとってはお前が邪魔としか思わないがな」


彼女はすぐさま引き金を引いた―――。

一発の銃声は、戸惑った彼女の身体を貫こうとしたが、咄嗟な彼女の動きが銃弾を右腕だけで済まさせた。

右腕を負傷し、煙が起こる。

右腕の筋肉に刺さり込んだ銃弾によって血が溢れていく。


「・・・クッ・・・!」


「終焉だ」


パチュリーは負傷して痛がる霊夢に容赦なく撃ちこんだ彼女。

しかし銃弾の間を見切って身体を反らしながら霊夢はパチュリーに近づいた―――


「これで・・・!」


「―――そうはさせるか」


青い閃光が解き放たれた―――

銃とお祓い棒が勢いよくぶつかった衝撃が、新地獄に渡る。

静かな空間に、右腕から零れる鮮烈な紅。


「・・・終わりだ。・・・『アルテマ』」


至近距離で放たれた青白いエネルギー。

幻想郷を新たなる世界へ変わるきっかけを作った攻撃が―――彼女の逃れられぬ範囲で放たれたのであった。


しかし彼女もまだ、対策手段は存在した。


「・・・悪いわね、二重結界!」


もう1つのカードを掲げ、自身の周りに地面を直径とした半球状の結界を作り出す。

その結界は博麗結界そのものであり、そんな結界を破壊せんとアルテマは牙を剥いた。


青白いエネルギーは悍ましい爆発と共に解き放たれ、新地獄はその地の輝きを失った。

結界にそんな悍ましい爆発が地を捲りあげながら襲い掛かるが、結界は表面の1枚を失っただけで、2枚目が彼女を守り切った。

しかし自身の防衛に霊力を使った彼女も疲弊していた。


「な、何故だ―――何故死なない!?」


「悪いが私は力は無くとも霊力だけはあるのよ―――」


霊夢は疲労を隠せずにいたものの、彼女の持つ力全てを込めてパチュリーに殴りかかった。

刹那、お祓い棒に霊力が籠り、パチュリーの身体を―――貫いた。


「うわああああああああああああああああああああああああ!!!」


彼女は貫かれた後、血すら流さずそのまま消え去った。

思念体である彼女は霊夢の持つ霊力に負け、この世界から消え去った。


後に残ったのは、果てしない疲弊と敗れたカード、そして元の形を失った新地獄であった。


「・・・チルノ、あんたは・・・」


何かを呟こうとしたが、言葉が続かなかった。

そこには、悔恨に囚われた彼女の心―――悲壮に覆われた世界と共に果てしなき懺悔が存在した。

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