[Aix Trine=9 虚構の終焉]
チルノは最強の存在だけど、彼女が望む最強とはまだ別の最強なんだよね
地霊殿もまた、旧地獄のように悲惨であった―――いや、「悲惨」と言う言葉で表現してはいけないのかもしれなかった。
旧地獄で生きる妖怪や動物たちが一斉に避難した場所でもあり、彼女の姿はより残酷に見えた。
構えたショットガンが―――まるで彼女の残虐さを示唆しているかのようであった。
地霊殿に集まった生き物たちを眼下に、彼女は燃えた世界を背に見下していた。
劣等生物であるこの世界の生き物など触れたくも無かったが―――英雄の降誕の為には仕方なかった。
「・・・我々は夢を作り、この星に新たなる希望を授ける存在。・・・妨げは星の意思に反することとなる」
「だから、って・・・貴方は何をしてもいい訳じゃないわ!」
「そうだよ!みんな・・・平和に暮らしてたのに!」
この館に住まう姉妹は、そんな思念体に気持ちを曝した。
―――馬鹿げた話であった。無慈悲だの、もうやめろだの、嫌という程同じフレーズを聞いてきた彼女にとって、それらは常套句に過ぎなかった。
「それは下らない『今』の平和じゃないか。・・・我々は『未来』の平和を作り出す『執行人』だ」
「未来!?そんなの、私たちが築き上げるものじゃない!何で貴方が・・・!?」
「お前らは何も考えていない。・・・この世界は我々を必要とした。今までの英雄もこの世界が生み出した幻影のようにな」
彼女は嘲笑った―――劣等な思考にしかたどり着けない愚かな生物を。
そして何よりも、そんな生物を周りの妖怪や動物たちが慕っていることも―――。
「・・・遥かなる意思は遠くとも、いずれ訪れる・・・。・・・だがお前らがやってることは後先を考えない生き方だ。
―――自ずと世界を痛めつけている」
「そんなの・・・私たちの自由じゃない!」
「・・・ああ?やっぱり抹殺だ。・・・余りを実験台にしよう」
ショットガンの銃口を眼下の姉妹に向け、そして引き金を引いた―――。
一発の銃声が奏でた、悲しみのハーモニー。鮮やかな血と共に描かれる周囲の悲嘆と畏怖。
倒れた2人の姉妹を見ては、薄笑いを口元で浮かべ、蔑んだ眼で見据える彼女がいた。
「・・・残りの生き物を実験台としよう。・・・アミティムスがいるはずだからな」
δ
地霊殿は見事に陥落した―――いや、地底は陥落した。
―――全てが、消え去ったのだ。
それはまるで地上のように―――終わりなき更地が、彼女の訪れた跡となる足音を作る。
そして彼女は―――その力で多くの生き物たちをサイコキネシスで操り、アミティムスがいる実験場に運び、仕分けをした。
「・・・感謝する、パチュリー」
「お役に立てて光栄だ。・・・次は新地獄でも掃討して来よう」
「任せた」
驚異的なる力を誇った彼女もまた、単なる殺戮者であった。
その翳には、彼女が想う未来への思想がうっすらと投影されていたのかもしれない。