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TOHO FANTASY Ⅰ  作者: PHIOW BJIJ LHJIJ LJIJ
ACC 東方近未来 -The cruel Nativity TOHO FANTASY ⅠAnthology Complete Edition-
29/40

[Aix Trine=7 果つるなき悲劇]

霊夢もクラウディウルフのように悔恨に囚われた象徴です

霊夢は死の世界となった幻想郷に於いて、天界から落ちてきたと思われる瓦礫を見た。

地上とは建築方式が違うため、それは一瞬で見て判断出来るのだ。


「・・・天界も陥落、ね・・・」


科学が生み出した悲劇。3年前の異変を解決してから、彼女の生活は大きく変化した。

得たものも多く、彼女は大きな信頼を得た―――

―――しかし、失ったものも多かった。それは彼女自身の『心』であった。


燃え行く炎が彼女の悔恨の証のように見えた。


生きてゆく上での希望を―――失ったのだ。信じていた仲間も信用できなくなったのだ―――


「・・・所詮、皆は自分さえ良ければ何でもいいのよ・・・全て・・・全て!ああああああ!!!」


憂さ晴らしに彼女は炎の海と化した幻想郷で、今までに出したことの無い大声で叫んだ。

彼女は何処か信じられなくなっていた・・・。

・・・それは周りが上手いように自分を理由してるだけなのではないか?と言う疑問からであった。


「・・・どいつもこいつも自分勝手な存在・・・信じてきたものを欺かれて、再び信じろ、だなんて・・・不可能よ・・・」


そんな彼女の悔恨の中に身を埋もれて姿を現した男性―――この世界の敵であった。

水色の長髪で顔を隠し、髪と髪の間から目の前に存在する宿敵を見据えた。


「・・・我々のエクストラインを邪魔するのか」


「エクストライン?・・・あんたの言いたい意味は大体分かったわ」


「・・・既に知ってるのか。―――お前は何が目的で我々の邪魔をする?」


「この『世界』の為、そして失った私の生き甲斐を取り戻すためよ」


彼女の眼の奥には、何もかも信用できなくなった哀れな悲しみが込められていた。

炎の中の彼を映し出す水晶は、一つの輝きを失おうとしていたのだ―――。


「・・・英雄は未来を築き上げる。我らがGENESISの繁栄した未来を―――。

・・・お前たちは平和に暮らしたいと考えながらも未来の事象を考えぬ、齟齬した存在・・・」


「だから何よ。未来なんて誰も予測できない。・・・杞憂なんか御免だわ」


「未来は予測できなくとも、築き上げることは出来る。・・・それすらしないのだからな」


「あんたたちの下らない考えにこっちも乗ってはられないのよ」


「・・・そうか」


彼はそんな霊夢に憐れんだ笑みを浮かべた。口元が笑っている。

業火が盛る世界で、ビームサーベルを構えて剣先を霊夢に向ける。


「・・・我々はエクストラインを行い、5人を1つとして英雄を降臨させる―――。

・・・お前が何を想像しよう、所詮は邪魔に過ぎん。それに我らが英雄を唯一倒した『勇者』と言うお墨付きもな」


「・・・そうね、でも私はあんたが邪魔なのよ!」


霊夢はお祓い棒を構え、ビームサーベルを持つイドラに叩きかかった。

イドラもすぐさま攻撃を見切り、2つの武器がお互いにぶつかり合う。


霊夢はその間にカードを構え、至近距離で攻撃を狙う。


「―――霊符、夢想封印」


放たれた光弾に気づいたイドラはすぐさま身を退避させ、ホーミング弾のように追尾する光弾を華麗な身体能力でかわしていく。

次々と着弾する光弾。そして彼は彼女の後ろから背を狙って斬りかかった―――。


「知らないとでも思ったの?」


「その言葉、そのままと返そう」


霊夢が見切ったと思って後ろを振り返った瞬間―――そこにあったのは瓦礫。

そして背中に強い衝撃を受け、彼女はそのまま瓦礫の山に突っ込む。


彼女が瓦礫の山を背に凭れ掛かっていた時、元いた場所にイドラがその場で立っていた。


「な、何故・・・!?」


「我々は思念体、想像に過ぎない。・・・お前たちの次元を遥か遠くに超えた」


「瞬間移動もお手の物、って訳ね・・・!」


「・・・そういうことだ」


彼は瞬間移動をしてそんな霊夢の首元を絞める。

そして反対の手で構えたビームサーベルでそんな彼女を貫かんとした。


「そうは・・・させないわ」


霊夢はすぐに彼の手を離し、イドラから離れ、ビームサーベルが瓦礫の山に刺さる。

瓦礫をも砕く粒子の剣はそれ相応の威力であった。


「・・・目障りだ」


身を高速で移動させ、すぐに彼女の元に着いたイドラはその恐ろしき力を基にビームサーベルで斬りかかった。

しかし彼女もまたそんなイドラについていける程の能力を備えていた。


―――青い閃光が、武器と武器との衝突時に描かれる。

炎とは対照的な色合いが、その戦いの凄さを物語る。


瓦礫を踏み場にジャンプ攻撃を仕掛けるも、彼の瞬間移動は強かった。

すぐに攻撃を避けられ、後部からの不意打ちを受けたのだ。


再び彼女は瓦礫を背に倒れこんだ。


「・・・これで終わりだな」


イドラはそんな彼女に、ゆっくりと近づいていった。

まるで弱った獲物を眺めて楽しむ肉食獣のように―――。


そして彼はビームサーベルで一気に彼女を一刀両断しようとした。

しかしここで彼女はお祓い棒を構えたと同時にカードを掲げた。


「―――霊符、夢想封印」


刹那、ビームサーベルをお祓い棒で受け止め、青い閃光が解き放たれたと同時に色彩豊かな光弾が至近距離の彼を追撃していく。

避けられなかったイドラは瞬間移動も出来ないまま、断末魔の声を上げた。


「あああああああああああああああああああ!!!」


そしてイドラもまた、空気に身を溶かしたのであった。

幻影が歩む末路―――何処か悲しい気もせざるを得なかった。


彼女も、そんな炎を自分の気持ちとして比喩していたのであった。

そこには彼女の果つるなき悲劇と悔恨が描かれていた。

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