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TOHO FANTASY Ⅰ  作者: PHIOW BJIJ LHJIJ LJIJ
東方近未来 ~Aliquando mundi~ -いつかの世界- 
18/40

最終章 英雄

舞い降りたのは・・・世界の夢。


1000年後の夢。


英雄となった夢は、混乱の世に姿を現した。


―――果たして霊夢は勝てるのか。


瓦礫の山の頂上で、彼女たちを見下すように立つ「英雄」は、スイカを象った剣を左手で構えていた。

右目を赤く光らせ、青いサラサラの髪を風に靡かせていた。

世界の中心に立つような彼女は渦の真下に立ち、まるで世界を支配しているかのようであった。


「世界を遍く魔障・・・これは私たちGENESISの象徴。

・・・無残にも弄ばれたGENESISは夢を世界に託し、私がここに立つ・・・。

・・・この私が愚弄したこの世界に仇をなす為に、夢をここに作りだす・・・!」


「ち、チルノ・・・あんた・・・」


霊夢は瓦礫の上に立つ英雄を見て驚いていた。


「あんた・・・どうなっちゃったのよ・・・」

「どうなった?・・・霊夢、私たちGENESISは哀れ無残にも世界に喰らい尽されたの。

その生き残りであるこの私が、世界という私たちGENESISを追い詰めた敵に仇をなすの」


チルノはそう高々と言い放った。


「私は!1000年後の未来の英雄となった!

それは5人のGENESISの夢そのものを受けて成り上がった真実!

・・・まだあんたたちを幻想郷に帰らせる訳にはいかないんだ・・・」

「チルノちゃん!目を覚まして!」


反射的の大声を上げたのは、彼女の親友である大妖精であった。


「みんなで帰ろうよ!幻想郷に!」

「そんな愚かな考えなんて持っていない、この私には。

・・・全員、ここで死ぬ運命なの。私たちGENESISを翻弄した生き物どもに、生きる価値など存在しないのだから!」


チルノは怒りの形相を込めて見下しながら言い放った。


「あんたはGENESISの仲間?あんたは一体何がしたいのよ!?」


霊夢のそんな質問に、チルノは嘲笑いながら答えた。


「・・・そう、私はGENESISの英雄。世界に仇をなし、世界を喰らい尽くすことだ!」

「妖精の癖に随分と立派な口を叩くわね・・・!」

「妖精?そんな身分、何処へ捨てたか・・・」


チルノは笑いながら言い放った。


「私はもう非力な妖精なんかではない!私はGENESIS、そして英雄!1000年後の夢を背負った英雄だ!」

「勝手な妄想もいいところね・・・!」


霊夢はお祓い棒を構えた。


「そして私は夢、この世界における「夢」そのものなの。

・・・私の心には1000年後の世界を望む夢が刻まれているんだ・・・。

・・・お前ら「作られた生き物たち」は科学によりすがり、生きてきた。

・・・その踏み台が私たちGENESISなんだ。

愚弄された夢を壊し、1000年後の世界が望む夢を作りだす英雄がこの私、チルノ様だ!

・・・だから、楽になれ。・・・全員、楽になるんだ。

・・・私たちを受け入れ、世界と一体化するんだ。

・・・そして1000年後、私たちは繁栄する・・・。

・・・霊夢!この私に敵うのは・・・お前だけだ。

・・・だから、私に跪く姿を見せてくれ。そして私たちGENESISに跪く姿を見せてくれ」


チルノは瓦礫の上で演説のように霊夢に言い放った。

彼女特有の馬鹿っぽさは消え、そこにあったのは英雄が誇るカリスマ性であった。


「誰があんたなんかに跪くのよ!私たちは帰りたいだけなのよ!

・・・もしや、あんたが全員の力を!?」


するとチルノは心の奥で溜めていたであろう笑いを―――外に出した。


「クックック・・・フハハハハハハ!!!!!

・・・そうだよ!私たちGENESISは倒されたが、その夢の証として最後に私に残してくれた!

・・・見ろ!」


チルノは右手に小さな銀の箱を乗せていた。


「あれは・・・緊急用最終処理GENESIS・・・」


にとりは小さく呟いた。


「ど、どういうことよにとり!」

「中央のGENESISを破壊しても・・・要するに私を倒しても、緊急事態用に最後に力はあそこへ送られる・・・。

・・・あれが私たちの力の行く最後の砦・・・」

「めんどくさいものを用意してくれるわね・・・!」


霊夢は舌打ちすると、チルノに問うた。


「てかあんた、何処でそんな知識を得たのよ?」

「私は知ったんだ・・・にとりが私にGENESIS細胞を植え付けた際、置いてあった資料を読んだんだ・・・。

・・・その時初めて、私は妖精ではなく「GENESIS」になったと分かったんだ。

・・・だから私はGENESISにおける、最後の希望・・・1000後の世界の夢、英雄となる」

「そこまで賢かったなんてね・・・驚きよ」

「あんたに言われても何も嬉しくない」


彼女は左手で構える剣の先を下にいる霊夢に向ける。


「いいか、よく聞け。

―――この私は・・・―――英雄なんだ―――――ッ!」


              δ


チルノは剣を構え、一気に瓦礫の山から舞い降りる。

彼女の視野に入っていたのは・・・唯一戦える敵、霊夢であった。


「その体に―――刻み込んでやるッ!」


チルノは一気に霊夢に向かって剣で襲い掛かるが、彼女はそんなチルノの攻撃をお祓い棒で受け止める。

その瞬間、青い閃光が放たれたのだ。


「もう・・・止めましょうよ・・・」


妖夢はそんなチルノに小さく言うが、彼女は聞く耳を持たなかった。


「あんたの自由にはさせないわ・・・チルノ!」


霊夢はお祓い棒で何とか彼女を跳ね返し、チルノはそのまま飛翔して瓦礫の山の上に立つ。


「そうか・・・。・・・私に抗うことがどれだけ愚かなのか、愚民どもは分からないのか」

「分かる訳ないじゃない」


霊夢は飛び立ち、彼女と同じ高さの空中を浮遊する。


「・・・考えも愚かだ。・・・そんな者共に夢など勿体ないんだよ!」


チルノは剣を構え、俊足で彼女に斬りかかる。


「なっ・・・」


霊夢はその気迫に押され、何も動けなかった。

そのままチルノに剣で斬られ、彼女は近くの建設中のビルへ吹っ飛ばされる。


「れ、霊夢ッ!」


フランたちからそんな声が上がる。

彼女が飛ばされたビルからは煙が立ち昇り、負傷していた霊夢がコンクリートを背に座っていた。


「これで終わると思うなよ」


そのまま追い打ちをかけるが如く、彼女はそのままそんな霊夢に再び斬りかかる。

霊夢はすぐさまお祓い棒を構え、ぶつかった瞬間に青い閃光がビルから溢れる。


「悪夢は・・・私が終わらせるわ!」

「―――笑わせるな」


2人は剥きだしのコンクリートの中でお互い身体を避けながら剣とお祓い棒を交えあった。

触れる瞬間に青い閃光が解き放たれ、空中回避をしながらお祓い棒で剣を受け止めた彼女は疲れていく。


「―――おもちゃの棒は片付けろ」


チルノは剣に力を込め、一気に霊夢に斬りかかる。


「ぐっ・・・うわあああああああ!!!」


彼女は強い剣の1撃をまともに食らい、再び近くのビルに突っ込む。

かなりの速さで彼女はガラスを突き破って突っ込んだ。

中にいた人たちはそんな出来事に恐れを為していた。


「―――世界は夢。―――こんな力で変えられるとでも思ったか」


チルノは再び剣の刃の部分を前にして倒れこむ彼女に向かって猛スピードで斬りつけた。

彼女はそんなチルノに対してお祓い棒で受け止めようとするが、ボロボロのコンクリートにお祓い棒は挟まっていた。


「きゃああああああ!!!」


霊夢は再び斬られ、そのままビルの壁に打ち付けられる。

彼女は壁を背に倒れこんでいた。

そして自分の腹部に入り込んでくる冷たい何かが、彼女を覚めさせる。


「・・・電源でも切れよ。リセットでも何でもしろよ。

―――でもこれはゲームじゃない、本当の物語・・・。

・・・そう、これは私たちの物語なんだ」


チルノは彼女の腹部に剣を刺して、力を込めていた。

彼女の腹部からは血が流れる。


「ふざけるな」


彼女は自身に残っていた力を振り絞り、そんな彼女の剣を自分の力で抜く。

彼女は剣を構え、後ろに少し飛翔して彼女に言い放つ。


「そうか・・・。・・・でも、世界は私たちの戦いの場を用意した。

・・・GENESISと哀れなる生物たちとの、最後の戦いなんだ」

「なら・・・全力で勝って見せるまでよ」


彼女は血を流しながらも、必死にお祓い棒を構えた。


「―――霊符、夢想封印」


叫ぶ気力も無い彼女はカードを掲げると、ビル内を灯す光弾が一気にチルノに向かって飛んで行く。


「それがお前の力か、受け入れよう」


チルノは剣で迫りくる光弾を両断し、かき消していく。

そして放たれた光弾は全て彼女の手に寄って斬られてしまったのだ。


「今よ!」


斬り終えた霊夢はそんなチルノに向かってお祓い棒で殴りにいったのだ。

反動で瞬間的に動けなかった彼女はそのまま霊夢の攻撃を受け、ビルの外へ放り出される。


「何故・・・何故だ・・・」


チルノはそう言いながら、空中を舞っていた。

地面に背を向け、自身で作りだした真っ暗な空を見ていたのだ。


「―――終わらせるわ」


放り出されたチルノに決着をつける為、彼女は最後に自身に込められた最強の力を現す。


「夢で作りだせるのは世界と英雄だけでは無いわ、また別の夢も作られるのよ」


霊夢は自身の力でお祓い棒を8本作りだし、チルノの周りに浮かせる。

そして一気にお祓い棒でそんな彼女を滅多切りにしたのだ。

浮く8本のお祓い棒を1本ずつ回収しながら、8回無抵抗な彼女を斬りつけ、9回目・・・。

彼女の真上に立って―――渦の真下で彼女に、そして世界に言い放った。


「生き物は・・・それでも必死に生きてるのよ」


最後に真上から通り抜けるように斬りつけ、彼女の周りを浮いていた8本のお祓い棒は地面に刺さる。

そして彼女はお祓い棒を持って降り立ち、その後ろで負けた英雄が落ちた。


「ま、負けた・・・何故だ、何故だ―――」


すると霊夢はにとりに言い放った。


「帰るわよ。・・・早く幻想郷に帰りたいわ」


傷だらけの彼女は戦いの後も尚、普通そうな身振りでにとりに告げた。


「わ、分かった」


にとりは彼女の前に大きなゲートを幾つも作りだし、奴隷を連れてきた元の世界に接続する。

幻想郷と繋がっているゲートは真ん中であった。


そして彼女は、倒れこむチルノを右手で持ち上げ、立たせたのだ。


「あんたもそこで何時までグチグチ言ってるのよ。・・・あんたも本当は幻想郷が恋しかったんじゃないの?」

「・・・私に、そんな・・・」

「もう格好つけなくていいわよ、いつものあんたを振舞いなさい」


霊夢は1人、チルノやフランたちに背を向けて、ゲートへ入ろうとする。

ここで最後に、チルノは霊夢に聞いた。


「霊夢・・・なんでいつもそんな力を持ってるの?なんで世界を変えられる力を持ってるの?」


純粋な眼を取り戻した彼女が不意に思った疑問であった。

すると彼女は歩みを止め、少し振り返りながら―――そんな彼女たちに告げた。


             δ


「あんたたちを正しい道に戻す為よ。だって、平和が一番だもの」


終わりました、東方近未来。

最初はあったホモ要素も、最後は完全に抜けました。本当にありがとうございました。

「科学に触れた生き物たちの失敗」を描いたつもりですが・・・何処にもそんな要素無かったっすね。

感動出来る訳でもないけど、書き終えた時は何処か寂しい気持ちに浸りました。

最後のラスボスはチルノです。

最初に話しかけた人物がラスボス、そんな役って感じです。


あくまでこれはRPG風小説なので、自分で敵の戦闘曲を考えたりもしました(暇)


パチュリー、神子、董子、神綺戦・・・FF7「更に闘う者たち」

魔理沙戦・・・東方永夜抄「恋色マスタースパーク」

5体のGENESIS戦・・・FF7「J-E-N-O-V-A」

河城にとり(第1形態)戦・・・FF6「決戦」

河城にとり(GENESIS:NITORI)戦・・・FF4「最後の闘い」

チルノ戦・・・CCFF7「世に仇なす者」ACCFF7「再臨:片翼の天使」(迷ったが選びきれなかった)

※あくまで著者の想像であり、実際は読者様に任せます

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