表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TOHO FANTASY Ⅰ  作者: PHIOW BJIJ LHJIJ LJIJ
東方近未来 ~Aliquando mundi~ -いつかの世界- 
12/40

12章 籲天

…もうラスボスが分かった人もいるはず

業務用の大きなエレベーターにバイク2台と4人を乗せて、最深部へと向かっていく。

扉の下から上に吹き抜ける風が自分たちが下に降りているという感覚を呼び起こしてくれる。


「あんたがこんなに素直だったとは思ってもなかったわ」

「あそこで反対したら貴方たちは他の社員までに手を出して脅しをかけるつもりだったでしょう」

「大正解、ね」

「流石は外道巫女・・・」


神綺は下っていく質素な業務用エレベーターの中でため息をついた。


「でも負けは負けだからね!」

「・・・はぁ・・・」


フランのご機嫌な言葉に彼女はため息を漏らすことしか出来なかった。

やがてエレベーターのチャイムの音が中に響くと、扉は4人を最深部に招待する。

―――『地下3階』と小さく書かれた看板。

目の前に続く暗黒の一本道に唯一灯る薄暗い蛍光灯。

4人は足を踏み入れる。


「・・・この先なのね、神綺」

「はい、そうです」


戦っていた時の威勢は何処かへ消えた彼女はそのまま真直ぐ進んでいく。

弱々しそうに進む彼女の背中の後を追う3人。

後ろでは業務用エレベーターの点灯ランプが寂しく光っていた。


一本道を進むだけ進んだ彼女は頑丈な鋼鉄の扉の前で立ち止まる。

横の壁にある暗証番号入力装置のブルーライトが空しく灯っている。


「・・・霊夢」


神綺は立ち止まったまま、彼女に問うた。


「・・・何よ」

「・・・本当にGENESISを倒すのですね?」

「当たり前です!」


お空は隙も開けずに即答すると、神綺は何かを考えた後、ゆっくりと喋り出した。


「・・・ならば、倒してみてください。・・・約束通り、ここはロック解除を致しましょう。

・・・だが私は貴方たちの敵、分かりあえない存在なのです。

・・・ここのGENESISを倒されれば残りは1つ、本気で私たちも相手させてもらいましょう」


「要するに・・・まだ抗うつもりなのかしら?」


霊夢は暗証番号をうち終えた彼女の胸倉を掴む。

が、神綺は自身の闇の力を身体に投影させると、闇の中で消えていった。瞬間移動である。

彼女を掴んでいる感覚が透き抜け、虚しさが出てくる。


「・・・消えやがったわ・・・」

「まあいいですよ、今は目の前のGENESISを倒しましょう!」

「うん!」

「・・・そうね」


お空とフランの元気のいい声に勇気づけられた彼女は解除された鋼鉄の扉を開ける。

巨大な空間に3人が足を踏み入れるとセンサーが反応して頭上の電灯が激しく3人を照らす。

そこには赤と白で構成された茎からコードの根を地面に生やす機械。

CONCORDIAとは真逆の単子葉類を彷彿とさせる藝術。

葉の部分は指のようにくねくねさせており、それが中心から外に向けて円状に生えている。


「・・・相変わらずの気持ち悪さね」


彼女は思ったままの感想を口で言った。


AMITTIMUSはそんな3人を敵と認識する。


「グギュイイイイイイン!」


モーター音を空間内に響かせ、AMITTIMUSは自身に貯められた力をEXGENESIS.exeファイルで変換していた。


「そうはさせないわ、霊夢!」


そこに立ち塞がるかのように現れたのは・・・レミリアであった。


「あんた・・・レミリアじゃない!」

「お姉さま!まさかその目は・・・」


異常な程赤い目。彼女の背中にも特殊PDMはつけられていた。


「あんたとチルノを助けようとして私の旅が始まったのに・・・戦わなきゃいけないのね、レミリア」

「我がGENESIS:AMITTIMUSに背く反逆者は抹殺せよ、との指令なので」


レミリアはスピア・ザ・グングニルを作り出し、右手で紅い槍を構える。

GENESIS:AMITTIMUSは力の変換を終え、レミリアの後ろで聳え立つ。


「・・・なら目を覚ましてやるわ、レミリア!」

「お姉さま、今すぐ元に戻してあげるからね!」

「うにゅ!」


3人は巨大な空間で対峙した。


                δ


「・・・完了」


神子はバイクに跨った状態で、炎の海と化した農村を見て達成感を得た。


「ま・・・て・・・!」


あらゆる場所から血を流す妖夢は剣を構えて神子の元へ行こうとするが、彼女はフラフラであった。


「村を・・・みんなを・・・返せ・・・!」


炎のように深紅に輝く彼女の眼は本気であった。


「・・・悪いですが、私には他にもやるべきことがありますので」


神子はバイクのエンジン音を唸らせ、そのまま妖夢の視界の隅へ消えてしまった。


唯一の生存者である彼女。


たまたま外にいた彼女はやってきた1台のバイクに違和感を感じたが、それはすぐに本物となった。


投げられた何発もの爆弾が家々を焼き、中にいた、霊夢たちを匿ってくれた人々の苦痛な叫び声が上がる。


平和な農村が僅か10分で地獄と化したのだ。


彼女は許せなかった。


「・・・神子・・・!」


妖夢は血と涙を剣にこぼしながらも、そこに突っ立っていた。


              δ


レミリアは早速持っていたグングニルを3人に向けて投げるが、3人は悉く避ける。

するとAMITTIMUSは変換した力を基に避けられたグングニルを自身に引き寄せ、力を込めて再び撃ったのだ。

グングニルの再利用である。


「な・・・!?」


まさかの連携に困惑するが、悩んでいる暇もない。

3人はすぐに攻撃を避ける姿勢をとると、彼女が投げた時より数倍もの速さで飛んで行く。

紅い槍はそのままコンクリートの壁を穿ち、罅を作って自身を止める。


「・・・危ない奴だわ・・・!・・・霊符、夢想封印っ!」


彼女はカードを無機質な天井に向けて掲げると、虹色の光弾が一気にレミリアとAMITTIMUSに向けて飛んで行く。


「そんなの私の闇に飲み込んであげるわ!魔符、全世界ナイトメアっ!」


レミリアもカードを掲げると、彼女から溢れた闇が鮮やかな光弾を飲みこんでいく。


「あんた、いつの間にそういう手を・・・」

「GENESISに逆らうからこうなるのよ、霊夢、フラン、空!」


彼女はそう言い放つと、再びグングニルを作りだしては3人に向けて投げる。


「相殺を狙いますッ!」


お空はグングニルに向けてバズーカを放つと相殺して空中で爆発する。

その間にフランは拳銃でレミリアの背中のPDMを狙って撃つが、彼女は隙を見せずに避け続けた。


「こんな程度かしら!フラン!」


レミリアは銃弾の雨をアクロバティックな動きで避け続けた。

フランは撃つのを一旦止めると、レミリアは3人に問いかけた。


「霊夢、フラン、お空。・・・どうして貴方たちはそこまで世界を変えたがるのかしら?」

「世界を変えないとあんたが助からないからじゃない・・・!」


霊夢はすぐにカードを掲げた。


「博麗アミュレットっ!」


大きな御札がレミリアの元に飛んで行くが、AMITTIMUSはそれに向けて抹殺光線を放ち、アミュレットをかき消す。

そしてその抹殺光線はそのまま3人に向けて飛ばされる。


「夢符、二重結界っ!」


彼女は抹殺光線から身を守るために結界を張り、抹殺光線は結界を壊そうと抗っていた。


「隙ありね!」


レミリアは作りだしたグングニルを持って、そのまま攻撃を耐えている霊夢に襲い掛かる。


「お姉さま・・・ごめんなさい!」


フランはそんな彼女の右腕を拳銃で撃ち抜くと、彼女は力を失ったかのように膝を地面に落とす。


「これで戦いも終わりですよ~!」


お空はバズーカでAMITTIMUSを砲撃すると、見事炸裂して呻き声が上がる。


「ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォォ・・・」


抹殺光線を撃つのを止めたAMITTIMUS。霊夢はすぐに結界を解き、最後の仕上げにかかる。


「霊符・夢想封印っ!」


終わりを告げる光弾がAMITTIMUSに着弾し、そのままAMITTIMUSは大爆発を起こした。

黒煙が空間内を包み、フランは姉の背中につけられた特殊PDMを撃って壊す。


「・・・ゲホンゲホン・・・ここは何処・・・?」

「いいから早く出るわよ!」


霊夢に手を引っ張られたレミリア。

バイクごとそのまま業務用エレベーターに乗り、地上へ脱出した。


             δ


彼女たちが業務用エレベーターで地上階に脱出したのはいいが、地下で響いた轟音で騒ぎになっていた。

そして指名手配犯である顔の3人。・・・社員たちはPDMを持って一斉に襲い掛かってきた。


「早速乗るわよ!レミリアはお空のバイクに乗りなさい!」

「う、うん・・・」


訳が分からないまま、彼女はお空の後ろに乗るとエレベーターから2台のバイクが疾走を始める。

波打つ人々をバズーカや拳銃で薙ぎ倒し、血の海になろうとも気にしなかった。


「只今、指名手配犯が立ちはだかる人々に攻撃することで強制的に道を作っています!

これが人のやることでしょうか!」


ヘリの中継リポーターはその光景を鮮明に語っていた。


国営放送局から出てきた2台のバイクはそのまま郊外の農村へ向かっていった。

農村が炎の海になっているとも知らずに・・・。


            δ


「・・・残り1つ、ですか。・・・パチュリーも倒され、入院。

・・・残るは私と社長の2人。・・・PDM公布に至っても何の報告もなし。

・・・どうするべきですか、社長」

「GENESIS:INSANIAの前に沢山のPYT兵を派遣するとしか・・・」

「やっぱりそうですよね・・・」


2人は悩んでいた。

目の前に淡々と迫りつつある霊夢たち。


にとりは社長に対して困ったような目で話していた。

だが、にとりの目は裏で闇のように真っ暗であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ