小児薬用量
子供の薬を調剤するのは、面倒ですけどやりがいがあります。
子供に薬を飲ませる時には、大人が飲む量よりも少なめに飲ませねばなりません。
でも、どうやって計算するのか。
過去にいろいろな計算方法が考え出されてきました。
Young 式
小児量 = (年齢)÷(12+年齢)×(大人量)
この計算式だと、無機物の薬には良いのですが、他の薬には少なすぎて現在はほとんど使われていません。
1番正確だと言われているのが、体表面積に基づいての算出。
Crawford 式
小児量 = (大人量)×(体表面積:[㎡])÷ 1.73
体表面積=体重(Kg)の0.425乗×身長(cm)の0.725乗×0.007184
大人の体表面積がおおよそ1.73㎡と言われているので、子供の体表面積を1.73で割った数字を大人量に掛ければ、ほぼ正確な小児薬用量が算出されます。
ただまあ、昭和の最後頃から平成一桁くらいならポケコン(BASIC言語で組んだプログラムを走らせることが出来る関数電卓)に計算式を組む、今ならスマフォかタブレットに小児薬用量計算アプリを入れるか表計算ソフトに計算式を組んでおけば簡単に計算できますが、体表面積の計算式を暗算や四則演算だけの電卓で処理するのは不可能です。
と言うことで、近似値の簡単な計算式を考え出した人がいました。
Augsberger 式
小児量 = (年齢×4+20)÷100 ×(大人量)
子供の年齢ごとの平均体重と平均身長を調べてCrawford 式とAugsberger 式に代入して計算し、双方の結果を比較してみたことがあるのですが、実用上問題ない程度の誤差しかありませんでした。
Augsberger さん、エライっ!
ただまあ、これでもまだ多少面倒なので、更に簡単な近似値の表を作った方までいたりします。
それぞれの年齢なら大人量のこれだけ、と言う代物。
Von Harnack 表
未熟児 1/10
新生児 1/8
6ヶ月 1/5
1歳 1/4
3歳 1/3
7歳半 1/2
12歳 2/3
Augsberger 式の更に近似値の表なのです。
実用上、これでも十分。
表にない年齢の子供が来た時は、近い年齢に当てはめるか、Augsberger 式で計算するか、ケースバイケース。
小児用として売られている薬は、体重1Kgあたりの量を設定しているので、年齢から体重を推定して計算する方法もあります。
産まれた時は3Kg、半年で倍、1歳の誕生日で10Kg、あとは1歳ごとに2Kg、と言うのが標準体重の大まかな計算。
この計算で6~7歳くらいまでなら大きく外れることはありません。
まあ、ギリギリ10歳くらいまでなら標準体重の計算式としてどうにか。
でも・・・、体重1Kgあたりの量に当てはめると、20Kg前後で大人量に追いついてしまうのです。
薬によっては18Kgで大人量になる薬もありますし、30Kgでもまだ大丈夫な薬もあります。
と言うことで、この方法で計算するのは、小学校に上がるまでにした方が無難。
小学生になったら、まあ1年生くらいまでなら何とかなりますが、2~3年生はグレーゾーン、4年生はアウトと思って間違いない。
最初に勤務した離島の病院で、体重30Kgの子供にそのまま計算して大人量を軽く超えた量を処方した医者がいました。
大人量を超えているから減らさないとダメだと言っても、計算は合っているから問題ない、と話を聞きゃしない。
当時私は薬剤師免許取り立てのペーペーだったのでそれ以上説得できず、頑固職人タイプの副長格の先輩に説得を変わって貰いました。
週2回、本土の大学から派遣されてきていた医者だったので、今はどこかの医学部の教授になってふんぞり返っているかも?
このほかに、体重をポンドに換算して計算する計算式もありますが、日本国内で体重をポンドで表記することがないので省略。
とまあ、細々とした計算をして薬の量を小数点以下3桁以上まで正確に処方したとしても、粉薬を1回飲ませる量に分ける機械の精度は0.1gまでなので、あんまり細かい処方をされても困ってしまいます。
液状のシロップ剤に至っては、家で親が正確に1回量を量りとるのは至難の業。
患児の症状を見て、細かいところは切り上げ切り捨てを判断できる医者こそ、小児科の名医と言うべきでしょうねぇ。
また思い付いたら。