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薬剤師の四方山話  作者: 座久間 真眼
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医薬品の名前

 思い立ったが吉日と言う事で、薬剤師としての思い出話を書き綴っていこうかと。

 薬剤師免許取り立ての頃、薬の名前を知らなくて怒鳴りつけられたことが何度もあります。

 薬には基本的に3種類の名前があるのですが、通常使うのは2種類。

 滅多に使わない国際名、たまに使う一般名、1番使う商品名、の3つ。


 例えば、(R)-3,4-ジヒドロキシ-5-((S)-1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5H)-オン、とか、2-アセトキシ安息香酸、とか、2-エタノイルオキシベンゼンカルボン酸、とか。

 2番目と3番目は同じ物だったりしますけど、これが国際名。

 有機物の分子構造を元に、国際的に定められた規則に従って命名されます。

 この規則をキッチリと理解している人なら、この名前を見て分子の構造式を書くことが出来ます。

 私は・・・、そう言うことを習った、と言うことしか憶えていません。


 そして一般名、先に示した物ですと、最初の分がアスコルビン酸、とか、ビタミンCとか。

 2つ目と3つ目が、アセチルサリチル酸、とか、アスピリン、とか。

 国際名が、あまりにも長過ぎるので、簡潔に特徴を表す名前が付けられています。

 まあ、「アスピリン」に関しては、元々商品名でしたけど、第一次世界大戦でドイツが負けたため、商標権を手放して一般名になったそうですが。


 商品名は、普通に売られている名前です。

 ビタミンCだと、「何とかシー」言う感じの商品名が多いですし、アセチルサリチル酸で有名なのはコマーシャルで「頭痛にラララ~♫」とやっているあれです。

 ラララ、に商品名が入ります。


 さて、免許取り立て当時、手書きの処方せんに「ルミナール」という薬が書かれていました。

 薬の棚をどれだけ探してみても、「ルミナール」と書かれた物はありません。

 仕方がないので副薬剤部長的な立場の大先輩薬剤師に聞いてみました。


 「ルミナールは、フェノバルビタールの一般名だろうが!

 何故そんなことも知らないのか!」


 と、ものすごい剣幕で怒鳴りつけられました。

 とりあえずは謝罪し、あとで「フェノバルビタール」の添付文書を確認したのですが・・・、どこにも「ルミナール」なんて書かれていません。

 しかし、大先輩が一般名と言いきった以上、どこかにあるはず。

 と言うことで、仕事を終えて寮の部屋に戻り、家から持ってきていた当時の最新版日本薬局方や学生時代に使っていた薬理学の教科書などをひっくり返して調べてみました。


 今ならキーワードを入れてググればOKですが、当時はスマフォは存在しないし、パソコンも今では鼻で笑っちゃうような性能のものでも30万から50万していた時代。

 通信も、通話用の受話器をカプラーの上に置いて「ピーガガガ」とやっていた時代です。

 そんなわけで、紙の資料を漁るしかありませんでした。


 薬局方、薬理学の教科書、添付文書、どこを見ても「ルミナール」なんて言葉は出てきません。

 これを見て見つからなかったら諦めよう、と最後の資料をめくったら・・・、ありました。


 「フェノバルビタールは、アメリカでの商品名として「ルミナール」と呼ばれている。」


 一般名じゃないじゃないか!

 小心者のの私は、副長格の大先輩に抗議することが出来ませんでした。


 さて最近は一般名処方という物が出てきているのですが、これがまたやっかいで。

 同じ系統の薬だと、一般名がよく似ていたりするのです。

 特に抗生物質なんて最悪。

 薬剤師だって憶えられません。

 一般名処方だと、どの商品名の薬を患者さんに渡すのかは薬剤師の裁量次第なのですが、医者も患者さんも拘りがあるから、なかなか・・・。

 まあ、この話はまた別の機会に。

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