事件勃発
これは、肝が冷める物語である。
200X年――
蝉がジージーと鳴く季節に巻き起こった事件である。
「今夜、学校を貸し切ってこのクラスだけで肝試しをやる」担任の八田真二は、今年三六歳の自称ベテラン教師である。クラスは騒然とし、あのお堅い先生がこんな発言をするなんて誰が思っていたか?
何も気にしない一人の男子がそれに賛成する。
「俺、やりたい!」馬鹿げた男子もいるもんだと、女子はその生徒を見るて「やっぱり」と言わんばかりため息をつく。的矢幹治。一六歳。クラス一のイケメンなのだがバカ。怖いもの知らずで勝気な性格。
「俺はパスかな。彼女との約束あるし」反対す一人の男子生徒。顔はまずまずの眼鏡男子で、頭がさえる秀才少しお調子者。名は、琴山尚樹。一七歳、怖がりなのだが幹治のライバルでもあるため、あえてこういう。
「お前は怖がりだもんな」幹治は尚樹に指をさして大笑いする。
「俺、怖くねえし」眼鏡をクイっとあげて強がりを言う。
誰もが思うが口には出さない。口を挟むとますます調子に乗るからだ。
「あたしたちの思い出作りだからさ、みんなで参加しようよ。ね?」賛成をする女子が一人いた。野間盟子。一七歳で、幹治の彼女。
「あたしは反対よ!」そこへ反対を押し通してきたのは霊能者の家系に生まれ普段口数が少ない女子。花園潤。一六歳。愛称は「うるちゃん」で通っている。
男子は肯定派で、女子の大半は否定派だ。やるかやらないかの論争になってクラスは騒がしくなってきた。
ドンと机を叩く八田先生が口を開く。
「お前ら、悲しいぞ……ここは君たちの一致団結が見てみたいんだ」黒板に『団結』と書く。
「先生、俺らやるよ」一人沸き立つ幹治。
半強制的に肝試しをやることとなった二年二組の生徒たち。
「ワクワクするぜ」幹治と一部の生徒だけは乗り気でいた。
下校後、グランドに夜七時に集合して八田は一名一名の名前を呼び全員が来ていることを確かめる。
「よし、約束通りきたな。遅刻者もいない」八田はルールを説明した。
四人一組のパーティで校舎内を探索して各所のスタンプを押してくるというものだ。
「僕は、お前たちの団結力が見たいんだ。パーティは仲良し組でもいいし、この場で決めてもいい。だが仲間外れや、半端は作るなよ」八田は拳を握りしめて強く言う。
「先生、一人半端になるんですが?」幹治が意義を唱えた。
「何? うちのクラスは32人だ。半端なやつが出るはずがない」八田は慌てて人数確認をする。
32人しかいない。
「何を言ってんだ? 茶番ならよせ」幹治に怒鳴り声をあげる。
「おかしいな……確かに一人知らない女の子が盟子の横にいたような」首を傾げる幹治。
ピーと開始の笛が鳴り最初のパーティが校内に入っていく。地図を見ながら夜の校舎内を懐中電灯一つの明かりで進んでいく。
「さあ、二年二組の皆さん最高のエンターテイメントをお楽しみください」ものすごく低い不気味な声が校内放送が流れる。
「やだ、何?」
「怖いんですけど」
その声におびえる女子生徒二人が男子二名を置き去りに走って逃げようとしたとき事件は起こった。
いきなり苦しみながら倒れてこみ意識を失う。
「二人脱落しました。チームワークを乱したものは意識を失います」校内放送でその旨を伝えられる。
「え? 何? きいてないし」当然のごとく生徒たちはパニックになる。
「中止だ、中止」八田が中止を促すが校内放送が流れて逃げようとした二人が意識を失った。
「どうなってんだよ先生?」幹治は八田の胸ぐらをつかみ状況の説明を要求するも、八田は「知らぬ存ぜぬ」の繰り返しだった。
倒れこんでいる生徒二人の手を取る潤は危険と判断した。
「これは危険よ。あたしたちは迷い込んでしまったわ。あの世の入り口に」すぐさまお祓をしようとあらかじめ持ってきていたお祓いの道具を広げようとしたときそれは何者かの力で壊された。
「うるちゃん……」不安がる女子生徒たち。