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第一話「何か、トリップした」

 ……ぁあ~。頭が痛い……。流石に昨日は飲みすぎたか……。たくっ、笹山先輩の奴、俺が酒が苦手なの知ってるくせに無理矢理進めて来るんだもんな……。

 アルハラは犯罪です、っていっつも言ってるのに無理矢理進めて来るんだもん。ホント、嫌になるわ……。とりあえず、とっとと起きて、大学行かないと……。

 ………あれ?磯の香り?いやいやいや、磯の香りなんてするはずねぇじゃん。ここ、東京のど真ん中だぞ?海なんて、車か電車を使わないとこれないって。

 ……目を開けてみた。すると、そこは立派な港でした。

 あれぇ~?可笑しいな、俺の目 可笑しくなったのかな?確か、昨日は笹山先輩の家で飲んでて、終電になっちまったから笹山先輩の家に泊まったんだよな?んで、笹山先輩の家は思いっきり都内だから、海と言うか港が近くにあるなんてありえない。そもそも俺が部屋を出ない限り、海とか港とかが見えるのはありえない。

 あぁ、そうか。コレは夢か。偉くリアルな夢だけど、まぁたまにそういう夢を見るとか言うしな。とりあえず、夢なら早く覚めないと……。


「おい、兄ちゃん!そんな所で寝てんじゃねぇ!」

「あ、はい。すみませ、オワッ!?」


 立ち上がろうとした瞬間、身体の重心が崩れる。そして、俺はそのまま冷たい冷たい海の中にトボンと落ちてしまった。

 ……そして、俺は気がついた。これは夢じゃない。この冷たさといい、身体を海水にぶつけた時の痛みといい、間違いなく現実だ。





 とりあえず、海から上がって、少し考えてみた。まず第一にココは何処か。周りを歩いてみてみたが、どう見てもココは日本じゃない。

 その証拠として幾つかあるが、第一に家だ。薄い木の板で作られた家らしきものとレンガで造られた家の二つがこの街にある家 (かもしれないもの)だ。でも、現代日本じゃこんな家ありえない。

 次に周りの人。周りの人は日本では見かけないような赤毛の人や綺麗な金髪の女性、浅黒い肌の男性等、明らかに日本人じゃない人ばかり。……俺はどっかの国に売り飛ばされでもしたのだろうか?

 いや、ありえないんだけどさ。マジでそうじゃないかと心配になる。

 ……最後に街というか国の名前。街の人(どうやら、言語は通じるみたいだ)に聞いてみた所、日本という国は聞いたこと無いらしい。それじゃあココは何処かと聞いてみると、ココはイルキスと言う国の港町、エタージャと言う街らしい。……割とマジで聴いたこと無い国だ。マジでココ、何処なんだよ。

 とりあえず、この街の一番偉い人に事情を説明して、日本に帰れないか聞いてみないと……。


「きゃあああああああああああああ!!!」

「い゛っ……!?な、なんだ!?」


 甲高い女性の声に振り向いてみると、船に積み込もうとしていた荷物が崩れたらしい。そして、背丈の高い男性が崩れた荷物に足を巻き込まれている。

 ……見た感じ、骨折したっぽいな。あんな重い物に身体ごと踏み潰されたら間違いなく死んでる。そう考えると、足一本で済んだのは幸運なのかもしれない。見た感じ、まだくっ付きそうだし……。


「おいおい……ダニィの奴、足を大砲に踏み潰されたみたいだな」

「ありゃ終わりだ……。おーい、誰かー!鋸持ってきてくれ!ダニィの足を切り落とす!」


 ……はい?今、切り落とすと?いやいやいや、ちょっと待て。せめて、医者を呼ぶとか。出来れば、応急処置をやった方がいいけど、せめて医者を呼ぼうよ。


「あの、すみません。お医者様とかを呼んだ方がいいんじゃ……」


 ツッコミ所がありすぎて思わず話しかけてしまった。

 まずは切り落とすことを止めさせて、医者を呼ばないと、流石に踏み潰された人が可愛そうすぎる。


「お医者様?んなの、うちの街にはいねぇよ。たまに本国からお医者様が来るけど、今はいねぇし」

「……いや、おい。うん、そうなんすか……」


 えぇー。なぁにそれぇ。もうツッコミ所、多すぎだよ。割とマジで。

 これで二回目だけど、とにかくまず切り落とすことを何とか止めないと。流石にダニィ?さんが不憫すぎるし。


「あの、応急処置なら俺……私ができますし、とりあえず患者を診させてくれませんか?」

「お?あんた、お医者様なのかい?」

「いや、医者というか……」


 ただちょっと医学知識があるだけの物知りな一般人というか……。まぁそれでも、この人達(足を切り落とそうとする人達)よりはマシかもしれないし。


「おう!分かった!それじゃあ俺達は何をすればいいんだ?」

「えっと、それじゃあ患者の足に乗っかっている荷物を運んでください。その後、綺麗な布と綺麗な真水、それとあの人の足くらいの大きさの棒を持ってきてくれるとありがたいです。あと出来れば傷に効く薬も」

「了解!それじゃあ待ってろ!ジョニィは薬と布と水をもってこい!いいな!」

「おうさ!任せときな!」


 綺麗な布に関しては、最悪俺のシャツを使えば問題ない。一日くらい着てるけど、まぁそれでも土まみれの布よりはマシなはずだ。

 真水に関しては、血が出ていた時や土砂がついていた場合 洗い流す為。薬に関してはまぁ何か効くだろうしないだけマシだろう。多分。

 ……と、どうやらもう荷物を運び終わったみたいだな。それじゃあ、とっとと応急処置を始めないと。


「ダニィさん、であってますよね?」

「あ、あぁ……。アンタ、お医者様なのか?」

「まぁ、そんな感じです」


 実際のことを言えば、ただの一般人だけどね。今はそんなことどうでもいいから、早く何とかしないと。手遅れになる前に。


「ちょっと痛いかもしれませんが、我慢してくださいね」


 ズボンの裾を破いて、傷口を確認する。……どうやら、ズボンは思いのほか脆くできていたようだ。俺が少し力を入れただけでびりびりと破けた。

 んで……傷口は……。っと、どうやら腫れているみたいだな。骨が飛び出してたりしてたら、流石にどうしよも無かったし、マシだと思っておこう。


「どんな風に痛いですか?」

「み、右足がズキンズキンとしていて……あと、右足がスゲェ熱いんだ……。おら、どうすれば……」

「とりあえず、まずは……「おーい!お医者様!布と真水と棒を持ってきたぜー!」あ、本当ですか!?」


 船員?さんから布とビンに入った真水と棒を受け取る。薬が無いのは残念だけど、まぁコレだけでもマシだと思っておこう。まずは右足を真水で消毒……。


「いっ!?あがぁ!?」

「我慢してください。大の男がコレくらいの痛みで泣き言を吐かないでくださいよね」


 ……俺だったら、泣く自信があるけど、それはアレだ。現状、俺の方が立場が上だから言えることであって、実際だったら間違いなく言えないな。

 よし、消毒完了。次は棒と布で右足を固定する……。っと、コレで応急処置は完了。


「よし、コレで応急処置は完了です。後は直ぐにお医者様の所に行って、本格的な治療を受けてください」

「あ、あぁ……ありがとな。お医者様、アンタの名前は?」

「え?俺の名前?えっと……」


 普通に名乗っていいのかな?この場合……。いや、それとも外国風に名前を直してから……。あぁ、めんどくさい。


「俺は戸田十字。ちょっと物知りな大学生です」

「ジュウジさんか……。ありがとな、この恩は一生忘れないぜ……」

「あはは、どうも……」


 別に恩を売るつもりなんて一切無かったけど、とりあえず売れるものは売っておこう。その方が色々と後から楽になるかもしれないからな。

 その後、ダニィさんは同じ船員仲間に連れられて、どっかに行った。多分、本国の医者に連れて行かれたのだろう。


「よっ!ジュウジさん、見事なお手前だったぜ」

「え?あ、どうも……」


 ……何だか、見た目が厳つい男の人に話しかけられた。

 えっと、この人は確か、ダニィさんの足を切ろうとした人だっけ?あと、上に乗ってた荷物を運んでくれた人、名前は……なんだっけ?覚えてないや。


「俺様はティジー。ザイレー号に乗ってた船乗りよ」

「あ、そうですか。よろしくお願いします、ティジーさん」


 そういい、ティジーさんと握手を交わす。……凄く、ごつごつした男らしい手だった。俺みたいな細腕とは大違いだな。流石は本職の船乗り。


「なぁ、ジュウジさん。今 暇かい?暇だったら、ダニィを救ってくれたお礼をしたいんだけどよ」

「え?まぁ暇っちゃあ暇ですが……」

「なら決まりよ!俺様が奢ってやるから、酒場で好きなだけ食って飲んでくれよ!」


 って、うわっ!?力強ッ!?てか、首絞まってるっ!?絞まってる!?

 ティジーさんの豪腕に首を絞められながら、俺はそのまま港から5分ほど歩いた場所にある普通の家より大き目の家……と言うか、酒場に連行された。

 酒場は何というか、その……酒臭くて男臭い。女っけなんて、全くない。いかにも港町の酒場と言う雰囲気であった。

 そして、そのままカウンター席に連行され、適当な所に座らせられる。……はぁ、やっと首が解放された。


「……ん。ティジー、帰ってきていたのか。1年ぶりくらいか。そっちのは?」

「おうよ、マスター。こっちのは、トダ・ジュウジっていうお医者様だよ。ダニィを救ってくれた恩人よぉ」

「あ、どもっす。戸田十字です」


 マスターらしき髭を生やした男の人は軽く頷き、戸棚からコップと酒を取り出し、酒を注ぐ。注ぎ終わったコップを俺の目の前に置く。

 ……これは酒を飲めということなのだろうか?


「……歓迎の一杯さ。コレは俺のおごりだ。飲みな」

「ありがとうございます」


 コップを手に取り、一口飲む。……うん、甘いいい香りがする。それにアルコールの度数もそれほど高くないみたいだし、うん 俺この酒好きかも知れない。


「……あんた、医者なんだってな。何処で学んだんだ?」

「いや、まぁ一時期医者を目指してた時がありまして……。その時、少し医学を学んだんです。ただもう諦めましたが」


 具体的に言えば、希望していた医大に落ちたからだ。浪人すればいいと思う人もいるかもしれないが、浪人するのも面倒だから、第二希望の大学に入ったからなんだけどさ。

 まぁそこでいい先生に出会えたし、よくアルハラしてくるけど、いい先輩もいるし。


「へぇ、てことはジュウジさんは医者じゃあねぇんかよ。それでも、あそこまで出来るなんて、すげぇよ」

「あははは、どうも。……えっと、マスター?とりあえず、お酒だけ飲んでもアレですし、何か料理をくれませんか?お代はティジーさんが持つらしいんで」

「……ん」


 その言葉と同時にマスターはてきぱきと作業を始める。ウェイターらしき人に倉庫からチーズを持ってくるように命じる。

 そして、カウンターの下からパンと干し肉を取り出し、それを乗っける。そして、ウェイターが持ってきたチーズをパンと干し肉を乗っけたものに乗っけて、俺の目の前に置いた。


「ありがとうございます」


 それを手に取り、一口食べる。……うん、パンはパサパサして食感が悪い。干し肉は生臭いけど、チーズの臭いに中和されて、まぁそこそこいける。

 酒で口の中の物を流し込み、もう一口食べる。……うん、パンがパサパサしている以外は普通にいけるな。あと、干し肉が少し硬いが、まぁ気にするようなことではない。


「ジュウジさんはつい最近、エタージャに着たんだよな?仕事でも探しにきたのかよ?」

「……ん?まぁそんなもの」


 ……まさか、気がついたらココにいましたーなんて言える筈ねぇもんな。とりあえず、適当に答えたけど……。

 うん、割とマジで日本に帰れる手段が無かったら、ここで仕事を探さないといけないかもしれない。勿論、日本に帰ることを諦めているわけじゃないけど、こんなよく分からない所にいて、仕事もせずに、ただのうのうと暮らしていたら、その内 餓死するか凍死するしかない。

 ……最悪、医者にでもなるか。この町、医者がいないみたいだし。適当に誤魔化していれば医者として活動できるかもしれない。まぁ冗談だけど。


「いいよなー。ジュウジさんは医学の知識があるんだからよ。なら、働き手が一杯あるじゃんかよ」

「ん?そうなんですか?」

「そりゃそうよ、例えば船の船医とか。一番儲かるのはアレだ、奴隷船の「あの」……あぁ?」


 ふと、後ろから声を掛けられた。

 振り向いてみると、そこには綺麗なドレスを着た大体150cmくらいの小さな女の子が一人。こんな男臭く酒臭い酒場には似合わない高貴な雰囲気を纏わせる不思議な少女だ。

 その隣には、皮の鎧……所謂レザーアーマーを纏った金髪の綺麗な女性がいる。どうやら、この少女の護衛っぽいな。


「あの、そこの黒髪の人。お医者様なんですよね?それで、仕事を探しているとか……」

「あ、うん。そんなもんだけど……」

「なら!」


 少女は満面の笑みを浮かべて。


「私の船で働きませんか?」


 俺にお仕事のお誘いをしてきた。

 ……え?マジで?

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