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FAINT SUNSET  作者: 長村 八
日が暮れたら気をつけて
14/22

 次の日の放課後は夜人が先生役だった。

 結えと心也は調査で外へ出ている。

「いやー何か照れるね、先生役って」

「よろしくお願いします先生」

「あはは、やめてよ」

 ちょっとふざけて言ってやると、夜人は笑いながら頭を掻いた。白い髪がさらりと揺れる。……私もそれくらいさらさらの髪に生まれたかったものですよ。

 今日は前に一角さんからもらったマニュアルを持って来いという指示があったため、持参している。

「じゃあ早速だけど、そのマニュアルの三三ページ開いてもらえるかな」

 言われた通りにそこを開くと、見出しにはこう書かれていた。

 『怪異について』……ざっくりしたタイトルだな。

「その片方、三三ページの方にはよくある怪異、つまりあまり珍しくないものが載ってる。で、その隣が珍しいもの」

 夜人が指差したところを見る。

「この魔族っていうのは? 魔女とか魔法使いとかのこと?」

「そう。この魔族には、もう純血はいない。大分昔に純粋な魔女や魔法使いは消えたらしいよ。まぁ、血が濃いとか薄いとかで力の大きさにに影響があるみたいだけどね」

 へぇ。

「ちなみにこの下の、ヴァンパイアの混血っていうのはわかる?」

「うん、夜人みたいに純血じゃない人ってことでしょ? 結が話してくれたの」

「結が? 僕のことを?」

 あ、目つきが恋する乙女の目になってしまった。いや、乙女というのは言葉の綾ですよ?

 でも今恋愛モードに入られては先に進まない。

「あー、夜人、私前から聞きたいことがあったんだけど……」

 無理矢理意識をこちら側に戻ってこさせると、夜人は首を傾けて何? と訊いてきた。

「その、怪異の珍しい珍しくないっていうのは、どういう基準で決まってるの?」

 彼は少し考え込むと、口を開いた。

「正直そういうのって、もうこの世界の常識として浸透してるからはっきりと線引きはできないんだけど。

 そうだなぁ、固有名詞のものは珍しいと思う。だって、この世に一つしかないんだからね。だから結の『メデューサの』目っていうのは珍しいよ。本人は絶対そんなこと言わないだろうけど。

 あと……天使かな、やっぱり」

「あの、勉強不足で申し訳ないのですが」

 どうもピンとこない部分が一つ。

「天使と悪魔って、何が違うの? あ、いや……天使の方が害はないんだろうけど」

 そりゃそうだ、悪魔は私を攫って売り飛ばそうとしたんだ。

 天使はまだ見たことないけど、イメージ的に優しい気がする。

 夜人は難しそうな顔をして話し始めた。

「そうだなぁ、天使っていうのは普通、人間とは全く無縁の関係にあるんだ。なんていうのかな、空から見守ってるんだよって感じ。わかる?」

「なんとなく」

「彼らの仕事は、人間の望みを叶えること。しかも絶対に自分の存在を明かしてはならない。望みを叶えるときは必ず間接的に人間に接触するんだ。だから、人間が天使の存在を知ることはない」

「でも、それならなんで天使の能力があるの?」

 そんなに完璧に自分たちを隠そうとしてるのに。

「失敗しちゃったり、相手の人間に情が移っちゃうとどうしても接触しちゃうみたいだね。それでも悪魔みたいに人間と交わることはしないみたいだけど。そんなことしたら完全に堕天だからね」

 あれ、そしたら悪魔はそんなことしちゃうんだ?

「悪魔は、寧ろ積極的に人間に関わろうとしてくるんだよ。心の底の暗いところとか、本当に欲しているものをちらつかせて人を……自分に取り込んじゃうっていうのが一番適切なのかな?」

「ふぅん」

 ……なんか頭が痛くなってくる話だ。

「その七和(なお)を攫おうとした悪魔は、ア……なんとかって言ってたんでしょ? そしたら、アのつく名前の物の怪異なのか、それとも天使でアがつく名前のものなのか、ってところかな」

 ふむふむ、結構しぼれてきたじゃん。

 この調子でもっと色々なことを知っていけば、きっと能力もわかる筈だ。

 話も一段落ついたところで気が緩んだのか、夜人がポケットから飴玉を取り出した。

「食べる?」

「うん、欲しい」

 ……そんなの物欲しそうな目で見てたんだろうか。

 夜人はポケットからもう一つ飴を取り出し、私に向かって放った。

 包装紙には『チョコレート味』。もしかしてこれって、

「これ、心也がくれたの?」

「そうだよ。ほんと、なんであいつあんなにチョコレート食べてんだろうね」

 苦笑しながら夜人が答える。

 このとき、なんだか二人の関係がぽろっと見えた気がした。少なくとも、『あいつ』と呼べるくらいには仲良くなっているということだ。……一体いつの間に。

 私の顔を見て気付いたのか、夜人は飴玉をモゴモゴさせながら言った。

「シンとはちょっと約束してることがあってね。それでよく話すようになったというか……」

 心也のことを『シン』と呼ぶところにも親しさを感じる。

 ……そういえば、私って心也のこと何も知らないかも。

 考えてみるけど、チョコレートをいっつも食べている背が高い男の子で、狼男に取り憑かれていることくらいしか知らない。

 仲間になったんだし、もっといろんなこと知りたいな。

 なんて、出会って一週間も経たないうちに図々しい?

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