手長の章の解説と後書き
★盗賊の隠語やネットワークについて
ヴェルニアは、古代や中世の日本より遥かに貧しくて残酷な大地です
民が困窮しているからと云って六年も無税にしてくれる帝はいません
階級の流動性の低さも一因ですが、主に生産力の乏しさなどから、
貧しい者が懸命に働いても大抵は報われずにより貧しくなり、
やがて十中八九が飢えと貧困に押し潰されて消えていく救いのない世界です。
さらに飢饉や凶作、異民族や異種族の侵攻が起これば、人心の荒廃もより顕著となります。
そんな中で、一部の賊徒や悪漢、性悪な乞食などは、生き延びる為に相互補助の組織を構築しました
彼等は互いを兄弟や姉妹と呼び、構成員は全土に点在していますが、
ネットワークとしての繋がりと纏まりは弱く、各地で勝手に小規模な犯罪を行っています
★戦闘時の罵倒、挑発、雄叫びや名乗りについて。
人一人を簡単に仕留められる銃火器が大量に運用されるようになった中世後半から近世以降の戦場においては、戦闘時に声を張り上げるのは、一見、己の位置を敵に教えるだけの無意味な行為にも思えますが、それ以前の弓や投石の達者も少なく、近接戦が戦場で一定の役割を担っていた時代や場所においては、自己の闘争心を鼓舞し、敵の頭に血を昇らせる、或いは威圧する為の技術として有効な手段の一つでした。
現代からの視点では一見、愚の骨頂に思えても、当時としては理に適った行動の一例でしょう。
故郷の名前を叫ぶのも、味方の一体感を強め、士気を高めるのに有効な手法でした
ウィンターフェル!シャイア!キャリスターロック!ゴンドール!
★手長03の後書き
一般的に社会に優しさの成分が少なく、統治が公正から遠ざかるほど
アウトサイダーや無法者が反社会的な性格を帯びる傾向が在ります
ゴロン夫妻のアンジェリクなどでは、近世フランスを舞台にしていますが、(夫妻は執筆に当たって、当時の資料に当たりながら歴史考証を行っています)無法者がパリの一角に根城を形成し、強い勢力を保っていた様子が描かれており、乞食や無宿者が裏社会の一部を形成しています。
乞食の組合などは日本でも存在しましたが、欧州では古来より遥かに裏社会に近い存在だったようです。
オデュッセウスの時代には、放浪者や外国人が人攫いや盗みをするのではないかと、警戒されていたようですし、それが今ほど道徳的に悪とも見做されてなかったようです




