プロローグ:お兄ちゃんは妹が大好きな夢を見るか?
2011年5月~7月にかけて書いた投稿用の長編小説。あえて投稿時のまま掲載しました。週1~2回ペースで掲載していきたいと思います。
ネット小説としては少し長いかと思われますが、読んでくれるととても嬉しいです。
諸君、オレは妹が好きだ。
諸君、オレは妹が大好きだ。
未成熟な体躯が好きだ。
お兄ちゃんと呼ばれるのが好きだ。
上目づかいに見つめてくるのが好きだ。
つぶらで大きな瞳が好きだ。
うなじが好きだ。
どこもかしこも好きだ。
学校で、
教室で、
体育館裏で、
プールサイドで、
公園で、
自宅で、
風呂場で、
自室で、
そして布団の中で――。
「よろしい、ならば妹だ!」
その時、周囲360度全方向から冷ややかな視線が飛んで来るのを、オレは感じ取った。
男子からも女子からも、その視線は平等に。
オレが妹と色々していたこと……それは誰にも見られてないはずだぞ?
何がなんだか、訳がわからない。
そう思うが早いか、後ろの方でガタンと何か固い物が倒れる音がした。
すかさず後ろを振り向く。物は床下にあった。椅子だ。それが横倒しになっている。
その椅子を凝視し、そして正面へと向き直る。
そうしてやっと、オレはすべてを理解することが出来た。
「こら、改発龍太。寝ているかと思いきや突然立ち上がり、妹がどうのこうのと何を言っているのだ。ここは家じゃない。学校の教室で、今は英語の授業中だ」
オレは寝ぼけて立ちあがった上に、夢の中の内容を叫んでしまっていた。
授業中喋る人間は一人しかいない。なので、その声は教室中に響き渡り、クラス全員の脳内に深く刻まれたことだろう。
「す……すみません、三出先生。寝ぼけていた……ようです。今後は叫ばないよう注意します」
「学生の本分としては、それが当然だ。授業を再開したいから、さっさと座りたまえ」
うつむき加減のままオレは倒れていた椅子を立てて、何事もなかったかのように座る。
そして授業は再開。
この時、オレがうつむいていた理由を第三者が考えるとすると、「恥ずかしかった」という解答が一番得られるかと思う。
クラスメイト全員に、「ならば妹だ!」と聞かれていたのだから、恥ずかしがることが自然かもしれない。
でも、オレは違う。
好きなものを「好きだ」と言って何が悪いんだ?
好きなことを恥ずかしがる理由なんてない。むしろ、誇るべきだ――というのがオレの持論。
オレがうつむいていた本当の理由とは何か。
それは、妹と色々していたことが夢だったという現実。
さっきまで現実だと思っていた出来事が夢だった。そう考えると、俺は現実に打ちひしがれた。
恥ずかしいからじゃない。
落ち込んでいるのだ。
しかしながらクラス全員はそのオレの落胆ぶりを、日が東から出て西へ沈むのと同じように当然のものとして見ているし、それが落胆であるとも理解してくれていた。
オレもそう思って、次の瞬間からは平然と黒板の内容をノートに写しはじめた。
ここで周知の事実であることを、二つ言おう。
一つは、オレが一人っ子であること。
もう一つはオレ、改発龍太は妹が大好きであること。
つまり妹願望が強いだけの、普通の健康優良善良高校生としてクラスからは見られているのである。
少し変わっているとは思う。
でも、常識の範疇だろうとも思う。
みんな何かしら、好きなものはあるから、問題なんてないはずだ。