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アウトオブあーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 88話 カミングアウト

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図(いけず)女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図(いけず)女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。






池図女学院部室棟、あーかい部部室。


……ではなく宿直室。




「いよっし!おわったあぁぁ……。」




お日様がとうの昔に西の空に沈み、残業してた先生方も帰る頃。


あさぎは畳の上に胡座をいてちゃぶ台に向かう昔ながらのスタイルで宿題を片付けた。




「あら、お邪魔だったかしら?」




教頭先生、入室。




「い〜や、たった今宿題終わって死んでたとこです……。」


「あさぎちゃんが、数学の宿題を……!?」




教頭先生がちゃぶ台の上に目を下ろすと、そこには高校一年生の宿題に混ざって、ちゃぶ台に負けず劣らず年季を感じる中学の数学の教科書が乱雑に広げられていた。




「熱は……、」




慌てて教頭先生があさぎの額に手を当てる。




「ない……わね。」


「失礼ですね。」


「いやだって、『あの』理数分野万年補修のあさぎちゃんが、宿題を最後まで1人でやりきるなんて……!?」


「『あの』ってなんなんですか……。いや、確かに理数分野は学力ミジンコですけど。」




あさぎの学力は科目だけなら学年トップな程に文芸科目に振りきられているため、理数分野の成績はお察しの通りである。




「私だって……色々変わらないとって、これでも思ってるんですよ?」




あさぎはちょっぴり怒った。




「そうね。人の努力を笑うようなことをしたのは悪かったわ。」


「ぼ、牡丹(ぼたん)さんが……しゃしゃしゃっ、謝罪ぃ!?」


「おい。」




あさぎはプライベートでは教頭先生、改め赤井牡丹(あかいぼたん)のことを、牡丹さんと呼び慕っている。




「……で、どういう風の吹き回し?」




教頭先生がちゃぶ台の向かいに腰を下ろして頬杖をつくと、あさぎも座り直した。




「そりゃまあ……色々、良くしてもらってますし。」


「へえ……♪確かに、半分住み込みかってくらい宿直室を貸してるのは破格の待遇よね?」


「白ちゃん先生が宿直室の存在すら知らなかったのは驚きましたけど。」


「そりゃそうよ、ここのこと知ってるのは、かーなーり古株の先生か、雪ちゃんかあさぎちゃんくらいだもの。……なんなら旧校舎の宿直室の方が知名度あるわね♪」


「へえ〜……って、良くしてもらってるってのはそういうことじゃなくて……、」


「あら、違ったのねえ……。」


「……ほら、マッサージとかおにぎりとか、色々教わりましたし。」


「ひいちゃんの越えるべき好敵手としてね。」


「ひいろは……私のこと、超えられますかね?」


「それはひいちゃん次第ね♪」


「……って、それもそうなんですけど……ほら、お母さ……母が


「『お母さん』が?」


「もう良いです……!///」




あさぎはふてくされて畳の上で横になった。




「ああ、ごめんなさい?謝るから機嫌直して、ね?」


「…………、はあ。」




あさぎはクソデカため息をつくと再び座り直した。




「そう来なくっちゃ!……さ、もっと私に愉悦させてちょうだい?」


「考え直して良いですか?」


「良いとでも?」


「えぇぇ……。」




2人きりで駄弁っていると、パタパタと真っ直ぐこちらに向かって駆けてくる足音が一つ。




「ん?」


「ようやくお出ましね♪」




教頭先生がドアに振り向くのとほぼ同時に、そっとドアが開け放たれた。




「遅れました……っ。」




(ゆき)、入室。




「急がなくてもいいのに……。」


「すみません、少しでもあさぎちゃんと居たくて……っ。」


「私は?」


「はて……?」


「明日全校集会で不審者の注意喚起でもしましょうかねえ……。」


「すみませんでした……ッ!」


「えぇぇ……。」




今日も雪の土下座は美しかった。




「とりあえず雪さん、お水。」




あさぎは冷蔵庫で冷やしておいたペットボトルの水を手渡した。




「ありがとうございます……っ。はあぁ……///」


「なんて声出してんのよ。」


「う、生まれつきこんな声です……っ!///」




雪がそっぽを向きながら器用に水をラッパ飲みする後ろで、あさぎは一つ結びにされていた雪の髪を解いて櫛を通した。




「……ぷはっ///」


「声。」


「うるさい……!///」


「あはは……。」


「ありがとうね、あさぎちゃん♪」




雪はあさぎにペットボトルを返すと、おもむろに着替え出した。




「未成年になんてもん見せてんのよ。」


「まあまあ、雪さん見た目はほぼ高校生ですから。」


「やだ///あさぎちゃんったら……。」


「違うわよあさぎちゃん、この子は脱皮に失敗したザリガニみたいなもんだから。」


「ひどぉい!?」




軽口をたたいてはいるものの、雪の容姿は言われなければ脱いでもアラフィフとは到底気付けない、20代そのものであった。


白ちゃん先生やモーラ姉と並んで誰が母親でしょうと問われれば票が分散するくらいには若々しい。




「よし、あとは髪を……、」


「あ、私やりますよ。」


「ありがとうございます……っ。」




雪があさぎのとはデザインがちょっと違う昔の池図女学院の制服姿に着替えると、あさぎの前に腰を下ろした。




「ええっと、まずは……っと。」




雪さんの白くて無機質な髪を一束掴んで包帯のように片目を隠す。




「あー……今日はどっち隠します?」


「じゃあ右で……っ。」


「はーい。」




片目を隠したら、残った髪で高めにサイドテールを作ってクルンクルンでフワンフワンにセットする。




「あさぎちゃんもすっかり手慣れちゃったわねえ。」


「雪さんにやらせるとなかなか妥協しないので……。」


「言われてるぞ?」


「こ、凝り性なのは生まれつきです……っ///」


「こちとら毎年その凝り性に付き合わされて年末が憂鬱なんだけど……。」


「嫌ならあさぎちゃんにお願いするから良いもん……っ。」


「え、良いんですか……!?」


「やめときなさい。体重計の夢しか見られなくなるわよ。」


「あ〜……それはちょっと。」




そんな雑談に興じているうちに、雪さんの髪がバッチバチにキマったので鏡を見せて仕上がりを確認してもらう。




「おお……!すごい、すごいです……っ。私がやるより3倍は早いです……っ!」


「何回もやり直してるからでは……。」


「そんな、あさぎちゃんまで……っ。」


「はいはい、とりあえずヤングスタイル完成〜っと。さっさと部室行くわよ?」




推定アラフィフの雪が深夜の部室に訪れる時はいつも、かつて池図女学院の生徒であった頃の様相を再現している。


……通称、ヤングスタイル (命名、教頭先生)。




「ま、待ってください2人とも……っ!?」




雪のヤングスタイルを知るものは教頭先生とあさぎの2人だけである。




「とても娘さん達には見せられないなあ……。」




苦笑いして宿直室の鍵を閉めたあさぎは、真っ暗な廊下を早歩きで進む大人2人を追いかけて部室へと向かった。






「…………で、今日は何話すんですか?」




3人であーかい部……かつてのオカルト研究部室に着くと、蝋燭の火を囲んでいつものパイプ椅子に腰を下ろした。




「そりゃあもう、」


「決まっています……っ。」


「え?」


「このごに及んで瑠璃(るり)ちゃんのこと話さないわけ?」




瑠璃はあさぎの母であり、小さかった頃に此処、当時のオカルト研究部室に足を運んでは教頭先生と雪と(あい)のお世話になっていた。




「あ〜そっか。PINEでは話しましたけど……藍はまだ知りませんでしたね。」




あさぎの左右の襟足が指で小突かれたように少し揺れた。




「『早く話せ』だって♪」


「藍ちゃんはせっかちさんですから……っ。」




あさぎの左の襟足がさっきより少し大きく揺れた。




藍、改め天川藍(あまかわあい)は故人であり、現在はその霊がこのオカルト研究部室に居着いている。


このことを知っているのは今ここにいる3人だけである。


なお、藍はあさぎの襟足に干渉できるのでYESなら右、NOなら左の襟足を揺らすことでコミニュケーションをとっている。




「ええっと……、」




あさぎは虚空に語りかけた。




「あのさ、藍……。隠してたってわけじゃないんだけど……私、瑠璃ちゃんの娘なんだよ…………、うおおっ!?」




あさぎの襟足が両方とも、誰がが摘んでブンブン振り回しているかのように荒ぶった。




「えぇぇ……、どうしましょうこれ。」


「そのままで良いんじゃない?藍ちゃん嬉しそうだし。」


「しばらくこのままですかぁ!?」


「……っ!」




助けを求めて雪のいる方を見ると、派手派手な髪型をした白髪の女子高生もどきが目を輝かせて無言でサムズアップしていた。




「そんなぁ〜……。」




荒ぶる襟足が収まる気配がなかったので、4人はは空がうすら明るくなるまで蝋燭の火を囲んで思い出話という建前の雑談に興じた。








襟足を愛でる会(3)




雪:夜はお楽しみでしたね♪


あさぎ:私は愉しまれていた側ですけどね……


牡丹:藍ちゃん喜んでたわね


あさぎ:襟足取れるかと思いました……


雪:取れたらかたっぽちょうだい?

牡丹:もう片方は私が貰い受けるわ


あさぎ:バナナみたいにもげたりしませんから


牡丹:でも待てばまた生えてくるんでしょう?


あさぎ:何がそこまで2人を駆り立てるんですか


雪:それ

牡丹:それ


あさぎ:『それ』がなんだかわかるのやだなあ……


雪:これがわからせっていうやつね……!?

雪:キャー///


牡丹:あさぎちゃんはこんな大人になっちゃダメよ?


あさぎ:はいっ!よくわかりました!


雪:あさぎちゃん……!?


牡丹:フッ

牡丹:これが『わからせ』よ……!


雪:くっ


あさぎ:すみませんどっちも違います……


牡丹:なんですって


雪:やーい


牡丹:お黙らっしゃい


あさぎ:それはそうと

あさぎ:今日、藍に全部話せてなんだかスッキリしました


雪:それは良かった


牡丹:隠し事は1つでも少ない方が良いわよね♪


あさぎ:牡丹さん、なんだか言葉に棘が


牡丹:ね?


雪:私はまだ何か隠していた……?


あさぎ:あ〜、たぶん私に言ってるんで大丈夫だと思いますよ


雪:ええ!?あさぎちゃんまだ何か私たちにカミングアウトしてないことがあるのぉ!?


あさぎ:誰だって秘密の一つや二つあるでしょう……


牡丹:段ボール箱の中身とか……


あさぎ:何もないですからね!?


雪:段ボール?


あさぎ:私、蚊がめっちゃくちゃ寄ってくる体質なので蚊取り線香たくさん置いてるんですよ


雪:た、確かに秘密です……!?


牡丹:雪ちゃんがピュアで良かったわね


あさぎ:誰のせいだと


あさぎ:それはそうと、後でちゃんと来てくださいね?


雪:はーい♪♪


牡丹:大きな子どものおもりは任せてちょうだい


雪:ひどぉい!?


あさぎ:因みにですけど、雪さんはヤングスタイルですか?


雪:まってそれは恥ずかしすぎて死んじゃう


牡丹:良いじゃない、瑠璃ちゃんにも一目で気づいてもらえて……♪


雪:ぼたんちゃんの鬼!悪魔!悪代官!


あさぎ:本当にあの格好だったんですね……


雪:あ、待ってあさぎちゃん幻滅しないで!?


牡丹:これが普通の反応よ


雪:瑠璃ちゃんはカッコいいって言ってくれたもん!


あさぎ:うわ〜確かに言いそう……


牡丹:良かった、瑠璃ちゃんは今でも瑠璃ちゃんのままなのね♪


雪:そんなとこで確認しないで〜!?

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