第七話 空島料理、スタート
小屋に戻って、袋から調理に必要な道具を出した。
それと、丁寧に家具もいくつか入れてくれている。
ソラはすぐにテーブル横に座った。
完全に”待機モード”だ。
「まだだ。料理は準備が八割だぞ」
袋の中から古代の穀物を取り出す。
手のひらに乗せると、わずかに温もりを感じた。
「….やっぱり普通の米じゃないな」
鍋に水を張り、穀物を入れる。
優しくかき混ぜると、水がほんのり金色に濁った。
その瞬間。
魔力が反応する。
「……あ?」
水の中で、粒が淡く光った。
頭の中に、知識が流れてくる。
――《天空穀物は魔力で目覚める》
――《魔力循環、弱火相当で安定》
「……説明書?親切すぎだろ」
思わず笑う。
ソラが不思議そうに覗き込む。
『クル?』
「見てろ」
鍋に蓋をして、俺は両手をかざした。
魔力をゆっくり流す。
強すぎない。
包むように。
水を温める感覚。
ぽこ、と小さな泡。
次の瞬間。
魔法陣が浮かび上がった。
「は?」
魔法人は淡い橙色の輝き、一定のリズムで脈打つ。
それに合わせて、火力が安定しているのが分かる。
熱流耐性のおかげで、温度変化が手に取るように伝わる。
「……自動制御?」
頭の奥に声が響く。
――《調理魔法:第二段階開放》
――《精密火加減制御 取得》
「……ははっ」
思わず笑いがこぼれた。
「料理でスキル進化する世界か」
『クルル!』
ソラが目を輝かせる。
湯気が立ち上がり、甘く、香ばしい匂い。
俺は確信した。
「これは.......絶対うまい」
魔法陣がふっと消える。
ちょうどいいタイミングだと、感覚で分かった。
蓋を開けると、ふわりと金色の湯気。
粒が立ち、艶がある。
「……成功だ」
ソラが翼をバサッと広げた。
『クルルルル!」
「まだだ」
炊きあがった穀物を一度皿に移した。
次に取り出したのは、森で取ったキノコと万能野菜。
穀物と混ざるようにしっかり切って、フライパンを温める。
まずはキノコ、少し遅れて野菜を入れ、炒める。
水分が飛び、旨味だけが残る。
「いい匂いだな」
ソラが机に顎を乗せた。
完全に待ちきれてない顔だ。
(塩味は野菜から出てるだろう)
赤い実の果汁を入れる。
じゅわっ。
香りが跳ねた。
そこへ穀物を戻し、混ぜながら炒める。
粒が油と旨味をまとい、艶が出る。
「……よし」
「主役完成!」
そして、俺は卵を手に取った。
「ここからが本番だぞ、ソラ」




