第五話 赤い宝、料理人失格?
森を少し歩いたその時だった。
『クル!』
ソラが急に鳴いた。
「ん?」
視線の先を見ると、少し離れた岩の影をじっと見ている。
「何かあるのか?」
『クルッ』
ソラに呼ばれ、岩の裏を覗くと――
「......赤い実?」
手のひらサイズの丸い実がいくつも転がっていた。
拾ってスキルを通してみる
|甘味強
|加熱で酸味発生
|ソース適正:極
「............」
『クル?』
「......はっ!ケチャップ枠だこれ」
『クルッ⁉』
「勝った」
思わず呟いた。
「オムライス完成する」
ソラが羽をばたつかせる。
完全に理解している反応だ。
♦
袋の中身を確認する。
・ふわふわ卵
・旨味キノコ
・万能野菜
・赤い実
俺はゆっくり息を吐いた。
「――全部そろった」
『クルッ!』
ソラが嬉しそうに羽を揺らす。
俺は頷いた。
「帰るぞ、ソラ。空島初のオムライスだ!」
一歩踏み出して――止まった。
「............」
『クル?』
もう一度、袋の中身を見る。
卵・キノコ・野菜・実。
「......….」
『クル?』
もう一回確認する。
・卵
・キノコ
・野菜
・実
「….ソラ」
『クルゥ?』
「….穀物がない!!!!!!!!」
『クル?』
「米枠がないんだよ!!!!」
ソラが首を掲げる。
「そうだよな、お前は知らないよな。オムライスってのはな」
俺は真顔で言う。
「米が主役だ」
『クルッ⁉』
俺は額を押さえた。
「何やってんだ俺….」
料理人が主役を忘れるとか、致命的にもほどがある。
「卵に気を取られすぎた….」
『クルゥ』
ソラが慰めるように肩に乗る。
「いや、優しくすんな。これは普通に俺が悪い」
深呼吸する。
気持ちを切り替える。
「….よし!探すぞ」
『クルッ!』
目を閉じ、スキルを広げる。
甘未、旨味、香り――
森の中の流れを読み取る。
その中で、探すのは一つ。
「炭水化物系の流れ......」
腹にたまる素材特有の、重くて穏やかな気配。
数秒。
――見つけた。
「......あった」
『クル?』
俺はゆっくり瞼を開ける。
視線の先。
森の奥。
「主役は奥にあるらしい」
『クルッ!』
「行くぞ。次こそ本当に揃える」
俺は歩き出した。
料理人としての誇りを取り戻すために。




