第四話 次なる食材、匂いを辿って
「次は中身だな」
『クルッ』
卵の入った袋を肩にかけ直して、俺は森の奥を見た。
オムライスの主役は卵。
でも、うまいオムライスを作るなら――
「具材が命だ」
肉があれば理想。
だが今は無理だろう。
「なら、代わりになる”旨味”を探す」
俺は静かに息を吸い込み、意識を広げる。
「《調理魔法〈クッキング・アルケミア>》」
視界が少しだけ変わる。
森の中に漂う”味の流れ”。
甘味、苦味、酸味、旨味。
その中で――
「......いた」
濃い色の流れが、地面近くに固まっていた。
『クル?』
「あっち。キノコ系だ」
♦
根元の草をかき分ける。
そこにあったのは、丸くて肉厚な茶色のキノコだった。
「見た目は普通だな」
指先で触れて、スキルを通す。
情報が流れてくる。
|加熱で旨味増幅
|油と相性良
|穀物と相性良
「っ!勝ち格素材だ!」
『クルッ!』
ソラがぴょんと跳ねる。
「まだだ。毒判定も見ないと」
意識を深く通す。
――毒性無し。
「うん、安全だ」
ナイフで根元を切ると、ぷつん、といい音がした。
「いい手応えだな」
袋に入れた瞬間、ほのかに香りが立つ。
(これは絶対うまいやつ)
「よし、キノコ完了。次は野菜だな」
オムライスの中身はバランスが大事だ。
旨味だけじゃ足りない。
「香りと食感かな」
森を見渡す。
すると、少し離れた場所に――
やわらかい緑色の流れが見えた。
「......あれだ」
近づく。
そこに生えていたのは、細長い草の束。
「草?」
一本ちぎってスキルを通す。
|刻むと香り増幅
|油で風味上昇
――毒性無し
「......万能野菜じゃん」
『クル?』
「刻んで炒めるだけでうまいやつ」
葉をもう一本ちぎって、匂いを確かめる。
青臭さはない。むしろ――
(ほんのり甘い?)
火を通した時の味の広がりまで、はっきり想像できる。
「当たりだな」
『クルッ!』
ソラが小さく跳ねる。
(こいつ、俺が”当たり”って言った時だけ妙にテンションが上がるんだよな)
「よし、必要な分だけ貰うぞ」
根こそぎは取らない。
料理人として、素材の取り方は大事だ。
外側の葉だけ丁寧に摘み取る。
すると――
すうっ。
葉の切り口から、透明な雫がにじんだ。
「......汁?」
指先につけてスキルを通してみる。
|旨味補助
|塩味代替
|加熱耐性あり
「......は?」
『クル?』
俺は固まった。
「これ、塩の代わりになる」
『クルッ⁉』
ソラが目を丸くする。
「つまりだな――」
雫を舐める。
「......うま!」
優しい塩味。
しかも角がない。
「神素材だろこれ」
♦
袋に野菜を入れながら、俺は森を見渡した。
「この島、絶対”料理向け”にできている}
偶然じゃない。
火に強い卵。
旨味の強いキノコ。
調味料にもなる野菜。
「......やっぱりこれを狙って送ったのか」
『クル?」
「いや、こっちの話」
残りの材料もこの森にありそうだな。




