AQ 高木組(黒)
「それじゃあ、私たちは帰るね。」
「ええ、今日は楽しかったわ。またやりましょう、女子会。」
小さな騒動がありつつも4人の女子会は朝まで続いた。会も終わり、帰ろうとする ねると雷葉に対して香夜も別れの挨拶をした。
「香夜、今日はありがとうね。また来るわ。」
そう言って別れを告げる雷葉は背中にリシェルを背負っている。
「zzz」
徹夜だった事で、リシェルは既に眠っていた。それを見て香夜は笑顔で話しかける。
「うふふ…何かあったら、私を頼るんだぞ。いつでも力になるからね。」
香夜はそう言って、寝ているリシェルの頭を優しく撫でた。
その背後では、ねるが目を瞑って片手を前に出しながら、何かを探すように唸っていた。
「……ここ…かな?…いや、もうちょい……あった!コイツね!!…ほい!」
ねるはそう言って手元に白い楕円を出現させた。ねるはぬいぐるみを抱えてその中に入っていく。
「行くよ、らいちゃん。」
「分かったわ。それじゃあね、香夜。」
「zzz」
「えぇ、また。」
そうして3人は楕円の中に消えていった。
それを眺めていた香夜は楕円が消えたのを確認すると、悲しい目でため息をついた。
「はぁ…次会う時は3人とも敵になるんだろうな……嫌だなぁ…でも…私は…」
ーー後日ーー
香夜は立松と共に敷地内を歩いていた。
「ああ、そこは任せた、あの件は私が明日やっておく…よろしく頼む、では。」
立松は歩きながらもずっとどこかと電話をしている。
「立松姐さん、最近ずっと忙しそうだね。顔も相当やつれてる、全然寝てないんじゃないの?」
香夜は立松の事を心配していた。最近の立松は若頭として戦後の処理やこれからの事に追われ、ほとんど眠れぬほどの多忙な日々を過ごしていた。
「そうだな…一昨日から一睡もしていない。風呂にすら入る余裕がないほどだ…だが、私も若頭になったからには全力でやり切らねばな。」
「でも、いくら若頭になったからってここまで忙しいのはおかしいよ。やっぱり人手不足なの?」
香夜が言う通り、柏木組は短期間の度重なる抗争によって人材が不足していた。特に、『憚』との抗争によって武闘派だけでなく事務員や家屋にも相当な被害が出た事によって組が回らなくなって来ていたのだ。そこに組長の交代が重なって、更に大変な事態になっていた。
「ああ。私を含め、多くの組員たちが無理をして働いてくれている。このままでは、いつか組自体が崩壊しかねん。」
「そっか…やっぱり戦争のせいで…。」
戦争によって大切な人間の殆どを失った香夜は、最後の居場所である柏木組の危機に絶望していた。しかし、それを見た立松が香夜に話しかける。
「安心しろ、そうならない為の対策は打ってある。それが今から行われる会談だ。」
「そう…一体誰との会談なの?」
立松は少し間を置いて答える。
「…相手は『高木組』の若頭だ。」
立松の言葉に香夜は驚愕する。
「えっ!『五木』最強の軍事力を持つと言われているあの『高木組』!?」
高木組とは『五木』の中でも最大規模の組織である。大陸東部の西側(中央の緩衝地帯に近い場所)に位置する柏木組の東側をシマとしている。構成員の数は柏木組の約3倍、基本的には積極的に戦争に介入する事はしないがその武力は『五木』全ての半分以上を占める。しかしその武力が振るわれる事は稀で、主に『五木』同士でのいざこざの調整や、他の組への支援を行なっている。
「そうだ。私たちが代替わりしたタイミングでアチラから接触して来てな。ちょうど予定が合った私が、組長の代理として会談に参加する。いい機会だからお前も来い。アチラも何人か構成員を連れてくるはずだ。彼らと交流を深めておけ。将来、必ず役に立つ。」
「了解。『高木組』か…楽しみだなぁ。どんな人がいるんだろう。」
「頭の良いお前なら大丈夫だと思うが、余計な事は言わないように…それと、そろそろ…」
立松が時間を確認すると、少し遠くから気配がした。その気配の元が分かると、香夜は顔を顰める。
「げっ!」
「女神よぉー!貴女の聖騎士、道草ですぞぉ!!」
道草は香夜を見つけると、凄まじい速さで走って来た。
「道草の兄貴、何の用ですか?私はこれから姐さんと大切な会合が…」
「香夜、道草は私が呼んだのだ。流石にお前だけでは相手に失礼だし、新たに幹部となったコイツにも色々と経験させておきたいからな。」
「まさか、女神ともご一緒出来るとは!立松のカシラ!!貴女の事は、女として毛ほども興味ありませんが、本当に感謝していますぞ!!」
それを聞いて立松はとある事を思いつく。
「そうだ。香夜、この機会だ。いっその事コイツと結婚するのはどうだ?」
それを聞いて香夜は少し顔を赤くしながら反応する。
「はぁ?姐さんまで何ふざけてるの!?せっかく極道になったばかりなのに結婚なんかするわけないでしょ!しかも、道草の兄貴が相手なんてありえないから!!私が好きなのは、私より強くて…一途で…仁義に厚くて…一緒に命を賭けてくれるような…そんな人が…」
「うむ、大体コイツが当てはまってるな。さっさと結婚しろ。」
「何と!?女神も私の事をそこまで好いてくださっているとは…感動で涙が…」
「い、今のは嘘!!私が好きなのは…そう!おじちゃんみたいに優しい人!!私はおじちゃんとしか結婚しないって決めてるの!!だからこの話は無し!!いいね!」
顔を赤らめた香夜は大声で2人を制止した。それを見て立松は困った顔で話す。
「うーむ…恋愛は若者の特権だと言うのに…しかもこの世界、いつ死んでもおかしくない。後悔する前にやりたい事はやっておけ。」
「はい!立松のカシラ!!女神は必ず幸せにします!!」
「幸せにしてくれなくて結構です。私は自分の力で幸せになるから。」
「では行こうか、先方を待たせるわけにはいかないからな。」
《はい。》
3人は会合の場所へ向かった。
香夜とリシェルと ねると雷葉の女子会ですが、物語において重要な話をいくつかしています。ここのシーンは今後何度か回想で出てくる予定です。
ここからしばらくは(黒)が続きます。




