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48 帰還(白)

「はぁ…疲れた…」


 桜田の遣いの者に自宅まで送ってもらったヴァルスはため息をつきながらベッドに入る。そのまま寝そべりながら、机の上に置いてあるリミエルとの写真に目を向ける。


「何だか大変な事になってきたな…リミ姉の夢の為に頑張って来たけど、俺がやれるのかなぁ…あんなバケモノ達を相手に…」


 ヴァルスは議会にいた人間たちを思い出していた。現時点でヴァルスよりも遥かに強い者たちが何人も存在しており、ヴァルスの夢の為には彼らと闘う必要がある事を察していた。


「でも、やるしかない…リミ姉のように…」


 そう言ってリミエルの写真を眺めていると、とある場所に目線が移る。


「ん?あれって…」


 ヴァルスが見たのは、写真に映るリミエルの左耳につけられたピアスだ。それは真珠のような白い球体のピアスだった。

 

「このピアス…昔はいつも着けてたのに、ここ1.2年は着けてなかったな…確かリミ姉がとある人から貰った大切な物だって言ってたけど…まぁいいか。」


 ヴァルスは胸のモヤモヤを抱えたまま眠りについた。



ーー翌朝ーー


「…うぅ…今何時だ………ん!?」


 目覚めたヴァルスの意識がハッキリとしたタイミングでいつもとの違和感に気付く。ヴァルスは寝ている間に何かにしがみついていたのだ。その感触は明らかに人間に近いものであり、ヴァルスは飛び起きる。


「な、なんだ!?……おいおい、何でお前が…」


「zzz」


 ヴァルスが布団を投げ捨てて確認すると、そこにいたのは幸せそうに眠るリシェルだった。少し怖くなったヴァルスは恐る恐る近づき、身体を指で触ってみる。


「うん、多分リシェルに間違いない…それにしても何でこんなところに?あのまま東側にいたんじゃ…まぁ本人に聞くか。…おい!起きろ!!」


 そう言ってヴァルスはリシェルの身体を揺さぶる。しかしリシェルは寝息を立てたまま起きる気配が全くない。


「zzz」


「コイツ…マジで起きないな…こうなったら…よっと!」


 ヴァルスはベッドの片側を傾けた。



ゴーン!



「イッタァ!!…何すんのよ!!」


 ベッドから転がり落ちて頭を打ったリシェルが目覚めた。


「ちょっと聞いてるの!?……って、ふぇえ?ヴァ、ヴァルス!?何で貴方が!?」


「お前、その格好……いや…それはこっちのセリフだ。他人のベッドに勝手に潜り込みやがって。寝ぼけすぎだ。」


「貴方のベッドって……っ!!まさか私、貴方と一緒のベッドで…」


 状況を見て、自分がヴァルスと共に眠っていた事に気付いたリシェルは顔が真っ赤になる。


「この変態!!ケダモノ!!私が寝ている隙にベッドに連れ込むなんて、最低よ!」


 しかし全く身に覚えのないヴァルスはそれを必死に否定する。


「待て待て、冤罪にも程があるぞ。大体、東にいるはずのお前をどうやって俺がベッドに連れ込むって言うんだ。潜り込んできたのはお前だろう。」


「確かにそうね…でも私がそんな事するわけが!!……いや…まさか!…あの()()()め!!」


 リシェルは昨日の女子会を思い出した。



ーー女子会中ーー


「ところで2人とも、好きな人っている?」


「ブフゥ!!ゴホッ!ゴホッ!…いきなり何言ってんの!?」


 ねるのいきなりの質問にリシェルは飲み物を吐き出して盛大にむせた。


「だってぇ…女子会と言えば恋バナでしょ?だから聞かせてよ、2人の恋バナ。」


 ねるはそう言って香夜とリシェルの方を向いた。それを受けて香夜はワインを少し口に運んでから興味なさそうに話す。


「いきなりね、でも残念ながら私はいないわよ。…でも強いて言えば、死んじゃったおじちゃんかな…リーシェはどう?」


 香夜がリシェルに視線を向けると、リシェルは目を逸らす。


「わ、私はそんな人いません!!」


「えぇー?そうなのー?残念。」


 それを聞いた香夜はいやらしい笑みを浮かべる。


「リーシェ、嘘ついても無駄よ。私は知ってるのよ、貴方を守ってくれた人の事を。名前は確かヴァ」


「あぁああ!!アイツはそんなんじゃないから!!確かにアイツの夢を応援するって決めたけど…でも!私は全然好きなんかじゃ!」


 リシェルは顔を赤くして咄嗟に否定した。しかし香夜も続ける。


「あれぇ?確か立松姐さん(母親)公認で将来は結婚するって聞いてたけど?」


 香夜はニヤニヤしながら更に顔が赤くなっていくリシェルを見ていた。


「な!何でその事を!!」


「え!リシェルちゃん、その歳でもう結婚相手がいるの!?凄いね!やっぱり最近の子は()()()ね。」


 墓穴を掘ったリシェルに、ねるが追撃した。


「ち、違うから〜!!」


「ヴァルス…あぁ、さっきお母様に襲いかかって来た男の事ね。おめでとう、リーシェ。私も応援するわ。」


 味方だと思っていた雷葉にも裏切られ、リシェルは1人孤立する。


「うぅ…誰も話を聞いてくれない…私はそんなんじゃ…」


「よーし!ツンデレなリシェルちゃんの為に、私たちも協力してあげちゃうよ!先ずは既成事実を作る事から…」


「そうねお母様。男なんていくら紳士でも所詮はケダモノ、目の前に下着姿の美少女がいれば自ずと手を出して…」


「いいね、立松姐さん(この子の母親)も好きな男のベッドに無理矢理潜り込んで、この子が産まれたって言ってたわ。リーシェもそうしたら…」


 勝手に計画を立てる3人を見てリシェルは、勢いよく立ち上がる。


「3人ともいい加減にして!!そんな勝手な事したら許さないからね!!絶対にしないでね!!」


 数時間後、リシェルはこの3人の目の前で眠ってしまった事を激しく後悔する事になる。



ーー現在ーー


 リシェルは我に帰って自分の格好を見ると、顔を更に赤らめる。


「な、何よこれ!!」


 今のリシェルの格好はいつもの地味な下着ではなく、派手な色で際どい下着だった。


「…」


 ヴァルスは先ほどから、一応見えないように明後日の方を向いている。


「…きゃああ!!」


 そしてリシェルは急いで落ちている布団に全身包まった。


「もう…最悪…こんな派手な下着、持ってないのに…あの3人の悪ノリで…うぅ…」


 あまりにも恥ずかしかったリシェルはそのまま布団の中で静かになってしまった。それを見て色々と察したヴァルスは部屋を出ようとする。


「リミ姉のお下がりだが、女性物の服は沢山ある。いくつか持ってくるからそのまま待ってろ。着替え終わったら色々と話を聞かせてもらうからな。」


「………うん……」


 それを聞いてヴァルスは部屋を出る。


(うん、流石に可愛いな。)


 ヴァルスは先ほどの光景を脳裏に焼き付けた。

以前にも書きましたが、リシェルは幼少期のストレスなどで満足に食事を摂れなかった為、18歳にしては少し幼児体型です。イメージとしてはリシェルは中学3年生ぐらい、香夜は高校生ぐらいです。

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