43 当日(白)
次回からの話を詳しく理解する為には、私のもう一つの作品である【侵攻と新婚旅行】を読む事を推奨します。アチラはまだ未完結ですが、ここからの登場キャラについてはある程度知る事ができると思います。是非ご覧ください。
「お待たせしました、ヴァルス様。どうぞコチラへ。」
『世界議会』当日、迎えの男がヴァルスの家の前まで来ていた。男は恭しく車の扉を開けて、お辞儀をする。
「ありがとうございます。」
ヴァルスもそのまま車の中に入った。そして、男も車を発進させ、車は目的地に向かって走り出した。
「改めて、本日はご参加ありがとうございます。我が主人も喜んでおられるでしょう。」
「いえ、俺みたいな見知らぬ男を招待してくれて、寧ろコチラが感謝すべきですよ。…それより、桜田さんはいらっしゃらないんですか?」
「我が主人は、会場で合流する予定でございます。お気になさらず。」
それを聞いたヴァルスは、気になっていたことを聞いてみた。
「あのー…つかぬことをお聞きしますが、リシェルは元気ですか?」
男は少し考えてから思い出したかのように反応する。
「リシェル?…ああ、あの女性の事ですね。元気ですよ、今は柏木組で保護されています。」
「柏木組…あの…大丈夫なんですか?一応彼女は帝国軍人であり、彼らの敵だと思うんですけど…嫌がらせや拷問などはされてないですよね?」
「はっはっは!!大丈夫ですよ。彼女は現在の柏木組の若頭、立松華織の娘です。無碍に扱われるワケがありません。そこは安心してください!!」
「若頭!?いや、アイツの母親は俺が…出鱈目言わないで下さい!!」
「おっと…これは少し口が滑ってしまいましたね。これ以上は何も言えません。ご了承下さい。」
「ちょっと待って下さい!!若頭ってどういう事なんですか!?教えて下さい!!」
「……」
男は、ヴァルスの問いには答えない。ヴァルスは何度も質問をするが、男の態度は一向に変わらなかった。
「まさか彼女があの状態で生きていたというのか…確かに息も心臓の鼓動も止まっていたはず…信じられない…そんな事が…」
ヴァルスにまた新たな謎が生まれてしまった。
そんな話をしながら暫く時間が経つと、目的地に到着する。一度ヴァルスも通った事のある巨大道路を通って、巨大なドーム状の建物の前に到着した。
「デ、デカい…これが、『世界議会』の会場…」
その建物の中心部には巨大なビルのような建物が立っている。目の前では、大きすぎて全容が見えない。ヴァルスが初めて見る大きさの建物に圧倒されていると、背後から突然声をかけられる。
「よっ!久しぶりだね、ヴァルスくん。」
「うぉっ!…桜田さん!!お久しぶりです!」
背後に立っていたのは桜田だった。
「うん、今日は来てくれてありがとう。俺もまた君に会えて嬉しいよ。」
「コチラこそありがとうございます。」
「それに作戦も無事に成功したようだしね。生きていてくれてよかったよ。」
「はい、何とか生き残れました。それよりも桜田さん!死んだハズの人に関して聞きたい事が!!」
「ああ…彼女の事だよね?それは俺の口からは言えないんだ、すまないね。」
「そうですか…分かりました。」
「ところで、柏木組で彼とは闘ったかい?顔に傷のある、巨漢の男なんだけど…」
「彼?…まさか、あの和服のメチャクチャ強かった極道の人ですか?」
「そうそう、彼にも今日会えるだろうから楽しみにしておくといい。」
「はい、分かりま…っ!!」
その瞬間、背後から強烈な殺気を感じる。ヴァルスが振り返ると、そこには2人の男女がいた。前に立つ女がコチラを睨みつけており、後ろの男は知らん顔と言った表情だった。
「どいていただけますか、上院第六席殿?」
前に立つ女が桜田の目の前に立ち、威圧するように言い放つ。
「君は相変わらずだね、右院のヒューラくん。」
「チッ!気安く、私の名前を呼ぶな!腰巾着が!!キサマの様な中立派が最も罪深い!!大体キサマらの主人が」
「おーっと!それぐらいにしましょうや団長。ここで上院と揉めるのは良くないですぜ。」
女が説教を始めようとしたタイミングで後ろの男が止めに入った。
「そうだね、俺としては君達の怒りには興味はあるんだけど…父上の事まで話に出されちゃ、俺も黙ってないよ?」
「ふん!それは脅しか?ここはキサマらが決めた犯罪禁止区域の『安全領域』ではないか。私に手を出す事など出来るはずもない。やれるモノならやってみろ。」
「はいはい団長、少しは落ち着いてください。俺たちの敵は皇帝です、色んな人にちょっかいを出すのはやめましょう。彼に喧嘩を売る必要は無いですから、無視してさっさと行きましょう。」
後ろの男は女の両肩を掴んで必死に説得する。とうとう女も諦めたのか、一つ息をついてから会場に向かって歩き出した。
「ふぅ…覚えておけ。戦争を仕掛ける帝国軍も、それを良しとする極道どもも、高みの見物決め込んでる周辺国の奴らも、我々革命派がぶっ潰してやる。」
「へぇ、それは楽しみだね。」
「まっ、そういう事。でも、今んとこアンタに関わる気はねえから、そっとしといてくれると助かるぜ。」
「イズカン!早く行くぞ!!」
「へいへい、んじゃ。」
そのまま2人はドームの入口の方へ行ってしまった。そしてヴァルスも口を開く。
「彼らは何者なんですか?革命派という言葉が聞こえましたが。」
「あの2人は革命派だよ。女の方がヒューラ、革命派の現在の団長で左院議員さ。男の方は付き添いのイズカン、彼は副団長。ヒューラはあんな性格だから、年長者のイズカンが目付け役として同行してるってワケ。この議会には1人だけ同行者を付けれるからね。君もその同行者って事ね。」
「なるほど、彼らが革命派ですか…ですが、ここには皇帝陛下も来るんですよね?彼らは皇帝の抹殺が狙いだったはず、皇帝陛下と顔を合わせれば戦闘が始まってしまうのでは?」
「いや、それはないね。そもそもここは『安全領域』内であり、一切の犯罪が許容されていない。いくら皇帝陛下でもね。だから、帝国にとって最大の敵である革命派の彼女たちも安心して議会に参加できるって事さ。」
「なるほど…この安全領域という地域の効力はそれほどに高いんですね。」
「だから君も何があっても剣を抜いちゃダメだよ?殺されちゃうからね。」
「抜きませんが、一体誰に殺されるというんです?」
「それはね…」
その瞬間、桜田の携帯電話が鳴る。桜田はそのメッセージだけを確認すると、すぐに動き出した。
「そろそろ時間が迫っている。話は後だ、会場へ行くよ。」
ヴァルスもその後を追った。いよいよ、『世界議会』が始まろうとしていた。




