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AN 責任(黒)

「うぅ…おはようございます。立松姐さん。」


「…香夜、起きたか。気分はどうだ?」


「最悪ですよ。多分熱もありそう。」


 病室で目覚めた香夜の前には立松が座っていた。しかし、以前と違うのはもう1人の人間がいた事である。


「…ふぁああ…いけない。すっかり寝ちゃってたわ。」


 立松に膝枕されて熟睡していたリシェルは、2人の声で目覚めた。


「おはよう、リシェル。ちょうど香夜が起きたところだ。挨拶しろ。」


 リシェルは寝たままの香夜と目が合うように立ち上がった。


「…初めまして。私はリシェル・カルヌーイよ。事情は聞いてるわ。よろしく。」


 緊張するリシェルは少し恥ずかしがりながら挨拶する。それを見て香夜はにっこり笑いながら話す。


「私は山下香夜よ。よろしくね。それに私たち初めましてじゃ無いわよ。リスペルの帰りの車の中で会ってるわ。」


「それはもちろん覚えているけど、貴女確か寝て…って!貴女、あの時起きていたのね!?」


「もちろんよ。2人の感動の再会の瞬間を見逃すわけ無いじゃない。あれは、とても感動したわ。特に最後の行ってらっしゃいなんかは…」


 それを聞いたリシェルは顔を真っ赤にする。


「ちょ!ちょっと待って!それは過去の話だから!!ねっ、ママ!」


「あ、ああ…そうだな。」


 立松も少し顔を赤くして、ぎこちなく答える。


「やっぱり2人は親子ね。幸せそうで私も嬉しいわ。」


「香夜、お前も私の娘だと言っただろう。私たち3人で親子だ。」


 そして立松はリシェルに何かの合図を送る。


「…ちょ!ママ!本当に言うの!?……分かったわよ…か、かか、香夜お姉ちゃん!!」


 香夜の時間が止まった。


「………わ、私が…お、おねぇ…ち、ちゃん……」


 あまりの嬉しさで、香夜は気を失ってしまった。


「ちょっと!!どうしたのよ!ねぇママ!大丈夫なの!?」


「うーん…サプライズで言ってみたが、ここまで衝撃を受けるとは…ひとりっ子だった香夜にとって、同姓の姉妹は新鮮で嬉しかったのだろう。」


 立松が冷静に分析している時、病室の扉が開く。扉の前には、新米の組員がいた。


「立松の姉貴、オヤジとカシラがお呼びです。今すぐに組長室まで来てください。」


「分かった。すぐに向かう。…リシェル、しばらくここで香夜を見ててくれるか?」


「ええ、分かったわ。」


 そう言って立松はリシェルに香夜を任せて、組長室まで急いだ。




 残されたリシェルは香夜の顔を眺める。そして、傷つけないように顔を指でつつく。


「香夜さーん、大丈夫?起きてる?」


「…お姉ちゃんって呼んで。」


 目を瞑ったまま、香夜は小さく呟く。


「やっぱり起きてたのね。もう呼ばないわよ。」


「…妹が反抗期になった…姐さん…いや、ママに言いつけちゃおーっと。」


「ふんっ!その手にはもう乗らないわよ。()()()()。」


「ああ…あの時は本当に感動したなぁ。2人で抱き合いながら、最期にどうしても会いたい人がいるって。なんて名前だっけ?…確かヴァ…」


「ちょっと!何でそんな事まで覚えてるの!?」


「姐さんから聞いたよ、『私が絶対に助けるんだぁ!」って言って瀕死の彼を庇ったって。やっぱり愛の力ってすごいねぇ。私もそんな甘酸っぱい恋したーい。」


 香夜のわざとらしい演技にリシェルは顔を赤くする。


「私と彼はそんなんじゃ無いわよ!!まぁ、確かに彼は私の恩人ではあるけど…あんな優柔不断でデリカシーのない男はお断りよ!!」


「それじゃあ、その人に言っちゃおっかな。脈なしだって。あぁ、可哀想なヴァルスくん。命をかけてボロボロになるまで頑張ったのに、大好きなリシェルちゃんに振られてしまいましたとさ。」


 香夜の煽りは更にエスカレートする。


「もう!そんなに言って欲しいなら言えばいいんでしょ!お・ね・え・ちゃ・ん!!」


 それに耐えかねたリシェルは顔を更に赤くしながら、諦めた様子でそう言い放った。


「うんうん、よろしくね(リシェル)ちゃん。早速、お姉ちゃんのほっぺたにキスしてー。」


「調子に乗らないで。後でママに虐められたって言いつけてやるんだから。」


「酷いよー!許して、リシェルちゃーん!」


 血の繋がらない2人だったが、この日紛れもなく姉妹になった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 立松は組長室の前に到着し、呼吸を整えてから扉をノックする。


「オヤジ、立松です。」


「入れ。」


「失礼します。」


 立松が部屋に入ると、組長である柴田と、若頭の松林、そして岸と護衛の土井がいた。


 立松が残った1席に座ると、柴田が話し始める。


「全員揃ったな。それじゃあ、今後についての話をする。先ずは、先日の襲撃、皆よく戦ってくれた。死んでいった舎弟たち、今も入院中の組員も大勢いる。組員全員の奮闘によって、何とか組の崩壊は防げた。…だがなぁ…ハッキリ言って相当な被害が出た。組が始まって以来の大打撃だ。」


「オヤジ…すみません。俺が判断を間違ったせいです。奴らの罠を見抜けませんでした。」


 そう言って松林は柴田に頭を下げる。それを見ても柴田は怒る事は無く、笑顔で答えた。


「オメェの判断は間違ってなかった。ワシもあれが最善と判断している。…それに、すべての責任は親であるワシにある。だから、オメェは謝る必要も、責任を感じる必要もねぇ。」


「…グゥ!オヤジ…すみません!!その一言だけで、救われた気持ちになります。」


 松林はそう言って一筋の涙を流す。


「はっはっは!オメェはいつも気負いすぎなんだ。後はワシに全て任せろ。…と言う事で、前回の帝国襲撃と含めて、ワシが全ての責任を取って引退する。」


「…オヤジ…」


「…すみません…私たちが不甲斐ないせいで…」


「オメェらのせいじゃねえ。ワシももう歳だ。そろそろ引退する時期だとは思ってたから、丁度いいタイミングだっただけだ。」


 全ての責任を背負った柴田に、その場の全員が涙を流す。そして、柴田は優しい顔をしながら続ける。


「さて、そう言うわけで今日話したいのは後継の話だ。この前までは、選挙によって組長と若頭を決める事となっていた。それは、松林が片腕を失った事で組長になれなくなった事が発端だった。だが、もうその憂いは無くなった。」


 部屋にいる松林の腕は既に元通りに治っていた。部屋に入った時から気付いていた立松は、あの日のことを思い出していた。


「…あの時ですね?」


「ああ…あの人からの要請で、他言無用で頼む。そう言うワケで、松林が組長を継ぐ事ができる。知っての通りコイツはワシの下で組を支えた功労者だ、部下からの信頼も厚い。客観的に見ても、今の柏木組で組長に相応しいのは松林、お前しかおらんと思っておる。だからワシは組長での最後の役目として、松林に次期組長を継がせる。異論があるヤツはいるか?」


 柴田はそう言ってその場の全員に目配せをする。


「異論など一切ありません。俺はカシラについていくだけと言う話です。」


 岸は一切の不満を言う事なく了承した。


「私もありません。私も松林のカシラこそが次の組長に相応しいと思っております。」


 立松もその判断に同意した。


「…」


 そして土井も無言で頭を下げ、了承の意を示した。


「お前ら…グスッ!!柴田のオヤジ!この松林淳二、精一杯やらせていただきます!柏木組の組長を俺に継がせてください!!お願いします!!」


 そう言って松林は柴田に深々と頭を下げる。それをみて柴田は笑顔で答える。


「ああ、頼むぞ。可愛い息子たちを任せる。」


 そう言って柴田は松林の背中を叩いた。そしてそのまま続ける。


「…さて、それに伴って次の若頭も決めねばならん。だが、ワシが口を出すのはここまで、次のカシラは次期組長である松林、お前が決めろ。」


 それを聞いて松林は涙を拭って立ち上がる。


「ありがとうございます、オヤジ。この2人を呼んだのはそれが目的という事ですね。」



 松林は顎に手を当てて少し考えた後、答えを出す。


「立松、お前に次のカシラを任せたい。頼めるか?」


 それを聞いた立松は驚く事なく冷静に返事をする。


「はい。お任せください。全身全霊で務めさせていただきます。」


 それを聞いていた岸も全く表情を崩さなかった。そこで柴田が話しかける。


「松林、理由ぐらい2人に教えてやれ。舎弟たちも不満に思うヤツがいるかもしれねぇからな。」


「はい。先ず、根本的な保守的な思想が私と立松は似ている。革新派の岸を若頭に据えれば、組が二分される恐れがあると考えました。それと、岸は神保に次ぐウチの最強戦力の1人です。若頭として、調整や会合ばかりやらせるには惜しい人材であると考えました。立松は、女ではありますが部下からの信頼も厚い。的確な指示を下せる頭脳もあって、腕っぷしも強い。次のカシラは彼女しかないかと。」


「うむ…大方ワシと同じ評価だな。岸、お前は何かあるか?」


「いえ、カシラの言う通りです。ハッキリ言って、俺は人望や頭脳では立松には及ばない。それに俺はまだ武闘派として前線で戦える。武闘派の代表として、これからは2人を支えていきます。」


 岸はそう言って決意を示した。


「俺たち極道は結局強くなきゃ存在価値はねぇ。武闘派の育成こそが最も大切な仕事だ。これからもよろしく頼むぞ、岸。」


 岸の決意を聞いて、松林が岸の肩を叩く。


「よし!これからの方針は決まったな。それじゃあ、今日は皆で飲みに行くぞ!オメェら全員ワシが奢ってやる。死ぬほど飲め!」


「オヤジ…是非よろしくお願いします!!」


「今日は辛い事は忘れて、楽しむだけの話!」


「娘は少し心配ですが、是非お供させてください!」


「土井、せっかくだからオメェも来るか?」


「オヤジ…良いのですか?護衛の俺がついていっても。」


「もちろんだ、はっはっは!!」

簡単な説明


松林(柏木組No.2)がリミエルに片腕を切断される

片腕が無い者に組長は務まらない

組長の息子or武闘派のトップである岸or穏健派のトップである立松or鈴木(極道のトップ)から推薦された香夜の4人が次期組長候補

組長の息子は人身売買がバレて破門に

立松はリシェルに腕を切られて候補から離脱

岸と香夜で選挙(予定)

松林と立松がとある人物に腕を直してもらう

従来通り松林が組長に、若頭が立松になった

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