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41 女(白)

「レム!やっぱり貴方も来てたのね!それにそんなにボロボロになって…早く治さなきゃ。」


 そう言って雷葉はレムナの元まで走って行き、懐から光る針状の物を取り出した。そしてそれを躊躇なくレムナの心臓に突き刺す。遠目に見ていたリシェルは驚きの声をあげる。


「ちょっと!雷葉!何やってんのよ!何でレムナを殺すのよ…って、ん?」


 胸を突き刺されたレムナは死ぬどころか、全身が波動に包まれ、よく見ると全身の傷が少しずつ治り始めていた。


「なんだ…何が起こっているんだ…あれほどの怪我を治せる能力なんて聞いた事がない…まさか、あれで私も…」


 立松は何かを悟ったが、約束を思い出して詮索するのをやめた。


「それにしても酷い怪我だったわね。また将士さんにやられたの?貴方も懲りないわね。」


「…今日は2回も攻撃当てたもん…」


「へぇ…それは凄いわね。いつか本当に勝てる日が来るかもしれないわね。でも、お母様がこの場にいなくて良かったわ。お母様が貴方の姿を見たら組員全員八つ当たりで殺されていたかもしれないしね。」


 突然の発言で立松に戦慄が走るが、そうならなかった事を安堵した。


「さて、ではさっさと仕事を済ませましょうかね。」


 そう言って雷葉は少し遠くで倒れている岸に向かって歩き出した。岸の目の前に立つと、再び針を心臓に突き刺す。少し経つと、岸が目覚めて立ち上がった。


「これは…切られた手が治っている。まさか貴方が噂に聞く何でも治せる医者か。感謝する。」


「まぁ、そう思って頂いて結構ですよ。それに感謝の代わりに私に付き合ってもらおうかしら。…隠れて見ている組長さんにもね。」


 そう言って雷葉は部屋の奥の本棚の方を指差した。


「やはりバレていたようだな。代理殿。」


 その声と同時に本棚が大きな音を出して動き出し、扉のように開いた。そこから出てきたのは、杖をついて歩く老人とその護衛と思われるガタイのいい男だった。


「オヤジ…」


「岸、すまねぇな。もう引退するワシなんかのために…」


「いえ、オヤジを守るのは組員として当たり前です。無事でよかった。」


「それに立松、オメェも任侠を貫き、その文字通り死ぬまで戦ってくれたな。あんなにジャジャ馬だったオメェがよくここまで立派な女になったもんだ。」


「面目ありません。私と岸、2人して帝国軍人に遅れを取りました。護衛としての役割を果たせず、オヤジを危険に晒してしまい申し訳ございません。」


 そう言って立松と岸は深く頭を下げた。


「2人とも顔を上げてくれ。アイツはただの若造じゃねぇ。田淵や神保にも勝った正真正銘の怪物だ。それに、オメェたちはこれからの柏木組を引っ張っていく存在なんだ。よろしく頼むぞ。」


《はい!》


 そう言って2人の肩に手を置く組長の顔は優しかった。ひと段落ついた所で、雷葉が話し始める。


「話は終わりましたか?では、私をこの人物の所まで案内してください。理由は………」


 そう言って雷葉は携帯の画面を組長に見せる。


「ふむ…了解した。岸、土井、護衛を頼む。…立松、せっかく娘と話せるんだ、満足するまで2人で過ごせ。後のことは俺たちがやっておく。…娘は大切にな、もう泣かすんじゃねぇぞ。」


「はい…ありがとうございます。」


 そう言って立松は再び頭を下げた。そうして組長が先導するようにして、岸と土井と雷葉、レムナも後ろについて建物を後にした。


「あの人が組長…すごい貫禄ね。それにしても、色々あって落ち着いたわね。これからどうするの…ってママ!?」


 立松は突然リシェルに抱きつく。


「リシェル…すまない…私はお前を置いていこうとしてしまった…母親失格だ…もう…もう二度と!絶対にお前を置いていくような事はしない!だから…私を…こんなダメな母さんを…許してくれないか?」


「うふふ…許すも何もママはママよ。それに置いていこうとしたのはお互い様でしょ。お互い生き残ったんだから、よかったじゃない。今度はいっぱいお話ししましょう。時間はたっぷりあるわ。」


 そう言ってリシェルは立松の背中をさする。


「ああ…そうだな。」




 とある人物のところを目指す5人は敷地内を歩いていた。そこで、雷葉が思い出したかのように話し出す。


「ああ!そうだ!岸さん、貴方に会ったら電話するように兄様に言われていたんだったわ。ちょっと待っててくださいね。」


 そう言って雷葉は携帯を取り出して電話をかける。


「あっ、兄様?私よ。…ええ、順調よ。岸さんに代わるわね。」


 岸は雷葉から電話を受け取る。


「もしもし?岸龍司だ。…あんたが噂の情報屋か。…ああそうだが。………何だと!?水瀬の姉貴が!!それは本当なのか!?…そうか…よかった………ん?……何!?まさかあの男が…………グスッ!…ああ…感謝する。」


 しばらく話した後、電話は切れた。そして岸はそのあまりの衝撃から、その場に立ち尽くしていた。それを見た柴田組長は岸に話しかける。


「岸、どうした?」


「…」


 組長の問いにも岸は俯いたまま何も答えない。


「いい話が聞けたかしら?」


「…あぁ。本当にな…そうか…グスッ!……姉貴…水瀬の姉貴ぃいい!!」


 岸の涙の慟哭は組内に響き渡った。




ーーー約20年前ーーー


 今年から入る新人の極道たちが、1ヶ所に集められ、挨拶をしていた。


「岸龍司です!今日からよろしくお願いします!」


「おう!威勢がいいのが今年もいるじゃねぇか!それじゃあ、お前は…水瀬!お前がコイツの面倒見てやれ!」


「はい、了解しました。」


 そう言って若頭の後ろから出てきたのは、長い髪に少し小さい体格の女だった。それを見て岸は反対の声を上げる。


「お、女!?若頭、何で俺がこんな弱そうな女の下に付かなきゃならないんですか!!」


「文句言うんじゃねぇよ。もう決めた事だ。コイツに極道のいろはを教えてもらえ。」


「しかし、若頭!…グヘッ!!」


 なおも食い下がる岸が話している最中に殴り飛ばされる。地面に膝をついた岸は殴った女に激昂する。


「な!何しやがる!!このアマ!!グッ!」


 岸は胸ぐらを掴まれ、体が宙に浮く。そして、女は凄まじい表情と低い声で、岸に忠告する。


「おい…私を二度と女扱いするな。次は無いぞ、新人。」


「ひぃ!」


 女の凄まじい圧に恐怖した岸は、その場で漏らしてしまった。


「この程度で漏らすとは…私がしっかりと教育してやる。おい小便漏らし、これからは私の言う事が全てだ。逆らったら、私がその汚いモノを蹴り潰す。いいな?」


「は、はい!わわわ、分かりまましたた!」


 これが2人の出会いだった。



ーー1年後ーー


「水瀬の姉貴!南地区の半グレどもが、管轄のおでん屋で暴れてるそうです!」


「了解、私も行くわ。貴方もついて来て。」


「はい!」



「おらおら!どうした!柏木組がなんばのもんじゃい!!」


「へっ!俺たちを止めたきゃ、幹部クラスじゃなきゃ無理ってもんよ!」


「貴様ら如き雑兵には、私1人で十分だ。」


「ああ?何だと、女!殺されてぇのか!?グハッ!」


 水瀬は、近づいてきた半グレの股間を躊躇なく蹴り潰した。


「女だろうが関係ない。貴様らクズに慈悲はない。柏木組を舐めるなよ!」


 水瀬はそのまま1人で半グレを全員倒してしまった。全てが終わり、それを眺めていた岸は水瀬に近づいて、タオルを手渡す。


「お疲れ様です、水瀬の姉貴。どうぞ。」


「ふぅ…ありがと、龍司。…ねぇ、貴方も私の事をか弱い女だと思ってる?」


 水瀬はタオルで返り血を拭きながら岸に話しかける。


「そんなわけないじゃないですか、俺も初めて会った時は思わなくも無かったですが、今では俺の憧れの姉貴分ですよ。」


「うふふ。そう…よかったわ。私は昔から身体が小さくて、力も弱かった。でも、私も憧れてしまったのよ、あの人みたいなカッコいい極道に。…女だって、立派な極道になれるって私が証明するわ。」


「姉貴は既に立派な極道ですよ。俺は姉貴の事を本気で尊敬してるんですから。これからも、一生ついて行きます。」


「ありがとう。でも私もまだまだよ。もっともっと頑張って、いつか私は組長になりたいの。そしたら、帝国の人たちとたくさん話し合って、最終的には戦争を終わらせたい。それが私の夢。素敵でしょ?」


「はい。姉貴らしい素晴らしい夢だと思います。是非、俺も協力させてください。一緒に戦争を終わらせましょう!」




ーー約1年後ーー


「いよいよですね、姉貴。」


「ええ、ようやくここまで話が進んだわ。後は、彼らと正式な書面を交わすだけ。それが終わったら、とりあえず30年の停戦協定が結ばれるわ。」


「この一年、姉貴は本当に頑張ってこられました。この停戦は姉貴のおかげですよ。カシラや兄貴たちもとても喜んでおられました。」


「舎弟や兄貴たちにも、かなり無茶を言って手伝ってもらったからね。これは皆んなで手に入れた成果よ。…そろそろ時間ね。龍司、留守は頼んだわよ。」


「はい。姉貴がいない間に、姉貴より強くなって見せますよ。帰ってきたら、手合わせお願いします。」


「分かったわ、私も楽しみにしてる。それじゃあ。」


「水瀬の姉貴!…一応、敵の懐ですので何があるか分かりません。…お気をつけて。」


「ええ、じゃあ行ってきます。」


 そう言って車に乗り込んだ水瀬と2人の舎弟が走っていくのを岸は見届けた。


「…水瀬の姉貴、行ったな。よし!ようやく姉貴の悲願が叶うんだ。帰ってきたら、盛大に祝ってあげたい。そうだ!カシラに相談してサプライズでもしよう!きっと喜ぶだろうな。そうと決まれば、早くカシラのところに行かないと!」


 岸は止まらぬニヤケ顔を手で隠しながら、若頭室へ走って行った。

これにて第三章完結です…と言いたいところですが、番外編があと2話だけありますので、是非ご覧ください。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。



 本編の第三章は終わりなので、恒例の雑感を述べさせていただきます。


 本章も、黒をメインにすると言っておきながら、結局最後はリシェルと立松に頼ってしまいました。

 本章は少し途中で間延びしてしまったかな、と若干後悔しております。情報量も非常に多かったので、また見直していただけるとありがたいです。次の章では、テンポ良くを心がけます。

 第三章は、某大学の○羅戦争をモチーフにしております。『憚』のキャラなど正にそうです。

 また、香夜が気絶を耐えるシーンは、私がどうしても書きたかった某兄貴との戦闘をモチーフにしております。自分がやられても後輩の為に、能力だけは解除しない。少しキツイシーンでしたが、書けてよかったです。

 最後のヴァルスと立松の戦いですが、立松が無くなった左腕で喉に攻撃を当てたのは、左手があれば喉を潰せていたという示唆です。満身創痍でなければ、ヴァルスももっと苦戦を強いられたでしょう。

 最後に組長らが向かった場所については第四章ですぐに答えが出ます。それによって、組長選挙が…

 何度か出てきた『上院』の人たちについては、第四章で再び出す予定です。現状で明確となっているのは第三席、第四席、第六席です。残りのメンバーも既に設定は決めてあるので、第四章で出します。その関係で、何度か出てきた『お母様』についてもいずれ明らかになるでしょう。

 キャラも増えてきたので、私の体感での強さランキングをしておきます。ある程度のメインキャラに絞りました。

<<<何があっても絶対に勝てない

<<よっぽどの条件でなければ勝てない

<基本格上だが、条件次第で勝ち目がある

=ほぼ互角(相性次第)

鈴木<<<神保<<田沼<レムナ<アンドレ<ヴァルス<岸=リミエル=田淵<道草<立松(両手有)<香夜<モルモン<シュリス(両腕有)<堂島<南<勝谷<ンレナ<セルタス<リシェル

 適当に作ったので、また左右する可能性もあります。

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