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40 撤退(白)

「がぁあああ!!…ん?あれ?ここは一体…」


 女によって外に出されたヴァルスは正気に戻っていた。


「あの女の能力で外に出されたのか…にしても、俺はあの時どうなってしまったんだ?あの女の人の目を見た瞬間、目の前が真っ赤に染まって、彼女を殺す事以外何も考えられなくなった…まさか、これが皆が言ってた白と黒の呪いか。にしても、あの衝動でまともに理性を保っていられるなんて皆、凄い精神力だな。俺も見習わないと…」


 ヴァルスが皆に関心していると、こちらに向かってくる人影があった。


「ヴァルスくん!無事でしたか。」


「やっほー!生きてるー?」


「セルタスさんにンレナさん!お二人とも無事だったんですね。それに…レムナさんは無事?ですか?あの男にやられてしまったんですね。」


 話しかけてきたのは仲間であるセルタスとンレナだった。そして、ンレナが隣で肩を貸しているのがレムナだった。

 ぱっと見でもレムナは全身ボロボロで、血塗れ、片目は潰れ、右腕と左足は明後日の方向に曲がっており、ヴァルスを遥かに超える重傷だった。


「…うぅ、負けた…でも今日は2回も攻撃を当たれた…次は勝つ…すごく痛い…けど大丈夫。」


 全く大丈夫では無さそうなレムナを心配するがセルタスが続ける。


「その左腕の怪我…岸龍司は倒したのですか?」


「…はい。殺してはいませんが、もうヤツが組長になる事は無いはずです。即座に撤退しましょう。」


「なるほど、流石です。良くやってくれました。ところでリシェルくんはどこですか?」


「まさかー!死んじゃってないよねー!ね!?」


「ンレナさん、大丈夫ですよ。リシェルは無事です。…この建物の中にいるはずですので俺が連れてきます…何があっても…だから少しだけ待っていてくれませんか?」


 ヴァルスはリシェルを無理矢理連れて行く決意を固めて中に戻ろうとするが、レムナが制止する。


「…中にリーシェがいるの?」


「はい。それと、怪しげな女2人もいました。1人はレムナさんによく似たオッドアイの女で、俺はもう1人の女に外に飛ばされてしまったんです。」


「…それはたぶん、おねえさまとおかあさま。よかった…ならここは私に任せて欲しい。」


「それは一体どういう…」


 困惑するヴァルスにセルタスが話しかける。


「ヴァルスくん、私たちはここで撤退します。中にいるリシェルくんはレムナ様にお任せします。3人で帝国まで撤退します。」


「リシェルを任せるって…ダメです!今は俺がアイツの側にいてやらないと…俺が約束したから…お願いです。急いで連れて来ますから、俺に行かせてください。」


「ダメです。これは隊長命令です。リシェルくんはレムナ様に任せて我々は撤退します。『憚』の連中が撤退を始めた事で、敵が集まってきています。もう貴方たち2人を待っている時間はありません。口答えは許しません。」


「そうだよー。リシェルちゃんはレムナ様に任せて行くよー。早くしないとみんなやられちゃうー。」


 そう言ってンレナがヴァルスの手を引く。それでもヴァルスは葛藤しながら抵抗する。


「でも…それでも今のアイツには俺が居ないとダメなんです!」


「ダメです。ンレナくん、行きますよ。」


「はーい。怪我人は大人しくしてようねー。」


 ンレナは動こうとしないヴァルスを無理矢理背負って歩き出す。


「ちょ!降ろしてください!俺は…俺は!」


「さぁー!逃げるぞー!!」


「ではレムナ様、リシェルくんをよろしくお願いします。」


「…任せて…」


 そう言ってレムナは足を引き摺りながら建物に入っていく。ンレナに担がれて撤退するヴァルスから見てどんどん建物が遠くなっていく。


「クソッ!リシェル…絶対帰ってこいよ…」


 そして、敵に見つからないような死角を通って3人は柏木組本部から脱出し、外に停めてあった車に乗車し、帝国を目指して走り出した。

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