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AL 勝利(黒)

前回まで

堂島と田沼を2人同時に相手していた香夜は、瀕死の重傷を受けるが、田沼の動きを止める事に成功する。しかし、堂島はまだ動くことができ、トドメを刺されそうになった所で、太田を倒した南が参戦する。

「姉貴!!」


「…」


 堂島を蹴り飛ばした南は香夜の様子を伺う。顔色は真っ白で、目もほとんど開いていなかった。先ほど何度も殴られたせいで、意識が朦朧とし、全身が痙攣していて、もはや声が聞き取れないほどに弱っていた。


「テメェら!!許さねぇ!!」


「誰かと思えばさっき逃げた雑魚か。太田を殺したのは褒めてやるが、そのまま逃げれば良いものを。今逃げるなら見逃してやってもいいが?」


「黙れ!尊敬する姉貴分を見捨てるわけないだろ!」


 そう言って南は田沼の方に向かって突進する。しかし、堂島が間に入って南にカウンターを繰り出す。南は腕を入れてその一刀を受けるが、筋肉を少し貫通し、骨を切られる前に止まる。南はそのまま堂島に対して全力のパンチを放った。

 堂島は振り終わりの体勢だが、もう片方の腕でそれを受けた。そして、腕で止まった刀を突きとして南に突き出す。ギリギリで見えていた南はバックステップで下がって回避した。

 そして、腕を簡易的に止血してから再び拳を構えて深呼吸をする。


「ふぅ…」


 先程の連戦で疲労が溜まっており、波動も相当に消費している。それを見かねた田沼が笑いながら話す。


「はっはっは!そんなに悠長に構えてていいのか?お前には時間がないぞ。」


「何?どう言う事だ?」


「お前は今もこの女に生かされてるって事だ。俺はこの女の能力のせいでここから動けないが、コイツが気を失った瞬間、その能力は解除されお前は2体1になるってワケだ。これだけ血を流して、あれだけ殴られたのによくも意識を保っていられるモノだ。」


「能力…どういう…」


 そう言って南が香夜を見ると、床には大量の血が流れており、身体の大きくない香夜が意識を失うと思われる基準量よりも多くの血が流れていた。


「……ぁ…ぅ」


 香夜の声は小さすぎて聞き取れなかったが、2人は一瞬だけ目が合う。そして、香夜の感情を理解した南は激昂する。


「うぉおお!!」


 再び堂島に突っ込み、今度は激しい斬り合いになる。しかし、自力の差もあり、既に太田との戦いで消耗し切った南は徐々に押されていき、身体から血飛沫が舞う。更には時間という枷を与えられた南は攻撃に焦りが見え、それを堂島は見逃さなかった。


「甘い!」


「グゥ!」


 堂島の放った突きが南の左腕を貫通する。しかし南は貫通した腕に力を入れて捻る事で、堂島の刀を奪い取った。

 そしてその勢いで側頭部に回し蹴りを放つが、堂島に受けられる。その致命的な隙を堂島か逃すはずもなく、凄まじい踏み込みで地面を震脚させる。


「はぁああ!」


「ぐぅうぉおお!!」


 堂島は南の腹部に発勁を放った。南はギリギリで能力を最大限に使って防御するも、威力を殺しきれずに後ろに吹き飛ばされ、壁に激突する。


「ガハァ!」


「上手くガードしたようだが、肋5.6本は逝ったな。もう諦めろ、お前に勝ち目はない。」


 壁の下で膝をついた南に堂島が近づきながら話しかける。そして、南は時間が無いとばかりに息も絶え絶えのまま、突っ込もうとする。


「はぁはぁ…早くしなきゃ、姉貴が保たねえ!!うおぉお!」


「…純平!落ち着け!!…ゴフッ」


 しかし、南が走り出そうと踏み出した瞬間、香夜が大声で叫ぶ。それによって南は急停止する。


「姉貴!!」


「私の事はいい…落ち着いて戦いなさい!…はぁはぁ…私を舐めないでよね!!」


 その瞬間、周囲に何かが折れたような音が響き渡る。南が香夜を見ると、なんと意識が落ちそうになった香夜は自らの右手の人差し指を地面に押し付けてへし折ってしまった。その瞬間、香夜の顔は苦悶に歪むが、一本では足りなかったのか、今度は左手の人差し指も折ってしまった。


「グゥアアア!!!」


 あまりの痛みに香夜は叫び声を上げる。そして、自らの痛みを顧みず、少しでも時間を生み出そうとする香夜を見た南は涙を流す。


「グゥ!!姉貴…すみません!!分かりました、絶対コイツら殺しますから、ちょっとだけ耐えてください!」


 そう言って南は立ち止まって、深呼吸をする。一度、頭を冷やして冷静になる。


(落ち着け!姉貴が時間を作ってくれてんだ!俺が焦って負けたら全てが終わる!闇雲に突っ込んで勝てる相手じゃない。次で確実に仕留める!)


「ふぅ…」


 そして次の瞬間、南は雄叫びを上げながら、凄まじい踏み込みで突っ込む。


「うぉらぁああ!」


「来い!」


 堂島は刀を失って丸腰だが、両手を前に出して構える。そして2人の激しい殴り合いが始まる。堂島はパワー型で南はディフェンス型、疲弊しきった南の防御を堂島の攻撃が貫通するが、南の攻撃もまた堂島にダメージを与える。堂島は先ほど香夜に撃たれた傷があり、既に大量に出血している事と、先日の爆発のダメージから、動きは少し鈍い。それによって両者の打ち合いはほぼ互角。互いに顔面は血塗れで、殴り続ける。

 殴り合いの最中、堂島が南の腕を掴んだ。そして合気道の要領で南を地面に叩きつける。

 しかし南も完璧に受け身を取ったが、地面に倒れた事で、堂島は顔面を踏み潰そうとする。

 南はそれをギリギリで回避し、体勢が低くなったことで繰り出せる回し蹴りで堂島の足を刈りにいく。


「はぁ!」


 攻撃の直後で余裕がない堂島は大きくジャンプする事で南の蹴りを回避したが、空に逃げた事で隙が生じる。

 南は懐からナイフを抜き、凄まじい横薙ぎを放つ。


「そこだぁ!!」


「はぁああ!グッ!」


 回避できない堂島は片腕一本を犠牲にしてその攻撃を止めた。ナイフは堂島の腕の半分程で止まった。それによって堂島は先ほどの南と同じ原理で腕を巻き込んでナイフを奪う。ナイフを手放すのが遅れた南は腕ごと引っ張られ、胴体に致命的な隙を晒す。

 着地した堂島は地面を震脚する。隙だらけの南に対して再びの発勁を放った。


「これで終わりだぁあ!!」


 堂島の発勁が南の鳩尾を直撃する瞬間、南が口角を上げながら叫ぶ。


「それを待ってたんだよ!!」


「何!?」


 南はこの攻撃を予測しており、最後まで隠していた能力を発動させる。

 南の隠していたその能力とは打撃攻撃の反射である。この能力は完璧なタイミングで発動させると敵の攻撃のダメージをそのまま相手に返す事が出来る。それによって南の腹を打ち抜いた発勁の威力がそのまま堂島の腹に返される。


「グハァ!!」


 凄まじい勢いで後ろに吹き飛ばされる堂島は壁に激突した後、地面に倒れる。パワー型の堂島が放つ渾身の発勁は自分で受ける事が出来ず、堂島の内臓が潰れてしまった。堂島は口から血を吐きながら、最期を悟る。


「…ゴフ!まだ能力を隠していたとはな…完敗だ。最期にお前のような男と戦えてよかった…」


 そう言い残してやがて堂島はその場で死亡した。

 南もそれを見届けた後、地面に膝をつく。先ほどの反射で全ての波動を使い切った事で、身体機能が著しく低下し、呼吸が荒くなる。


「カハァ!はぁはぁはぁ…あね…き。はぁはぁ…今助けます。」


 立ち上がれない南は膝をつきながら少しずつ香夜に近づく。


「はぁ…こんな雑魚にやられるとは本当に無能なヤツだ。最後まで俺をイラつかせる。」


 田沼はそう言って堂島を嘲る。

 南はそれを見て、田沼を殺す為に進むが途中で衝撃の光景を見る。動けなかった田沼が急に動き出したのだ。


「はっはっは!やっとくたばったか。にしても自分の指をほとんど折っちまうなんて、やはりイカれた女だ。だが、もう終わりだ。俺が貴様を殺すからな!」


 香夜は何度も何度も自分の指を折って何とか意識を保っていたが、南の勝利をみた瞬間、ほんの少しだけ心が安心してしまい、緊張の糸が切れてしまった。


「そんな…やっと倒したのに…」


 満身創痍の南は新たな強敵に絶望する。そして田沼は懐から銃を抜いて構えた。


「まぁお前らはよく頑張った。それに安心しろ、今日で柏木組は全員あの世に送ってやる。あの世で極道やってろ。…っ!」


 田沼が引き鉄を引こうとした瞬間、地面に方陣が浮かび上がった。咄嗟に田沼が南に発砲するが、既に香夜と南は全身が氷で覆われていた。


「これは…兄貴!!」


「チッ!無能どもが。」


「貴様ぁ!!許さんぞ!!よくも我が女神をぉお!!」


 そう叫びながらガラスを割って入ってきたのは道草だった。

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